はじめに-1:錐体外路症状とは
大脳基底核を中心とする大脳皮質との神経回路(大脳皮質―大脳基底核ループ)のことを錐体外路といいます。
錐体外路症状とは、大脳皮質―大脳基底核ループの障害に由来する症状です。
はじめに-2:中枢神経系の解剖生理学
(*)中枢神経系
中枢神経=脳+脊髄


(1)大脳皮質
@解剖
1:肉眼的構築
外套---前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉、辺縁葉、島、嗅脳
2:組織学的構築
全体の厚さは2-4mmで、6層の細胞層から為ります。
1. 叢状層
2. 小錘体細胞(外顆粒層)
3. 中錘体細胞層
4. 星状細胞層(内顆粒層)
5. 大錘体細胞層
6. 紡錘細胞層
A機能
記憶、思考などといった高次精神機能に関与する領域です。
(2)大脳基底核
@解剖

A機能
大脳皮質と視床、脳幹を結びつけている神経核の集まりです。
大脳基底核は運動調節、認知機能、感情、動機づけや学習など様々な機能を担っています。
錘体外路性の不随意運動の発現に関与しています。
大脳基底核に病変が生じると特有の不随意運動が発生します。
1:錐体路と錐体外路
(1)錐体路
延髄の錐体を経て、大脳皮質と、下位の運動中枢である脳幹および脊髄とを結ぶ経路です。
随意運動の指令を伝えます。
(2)錐体外路
錐体外路という神経路は解剖学的には実在しません。
錐体路以外の経路を錐体外路と言います。
基底核(尾状核,被殻,淡蒼球,視床下核,黒質)は錐体外路系を形成しています。
これらは前脳の深部に位置し、主に視床を経て大脳皮質へと、吻側に出力を向けます。
運動障害疾患の原因となる大部分の神経病変は錐体外路系に生じるため、ときに運動異常症は錐体外路疾患と
呼ばれます。

2:錐体路障害と錐体外路障害
(1)錐体路(皮質脊髄路)の障害
@症状
深部腱反射の亢進
病的反射の出現(バビンスキー反射など)
痙性麻痺(筋緊張亢進)
手・指・足クローヌスの出現
クローヌスとは
筋肉や腱を不意に伸張したときに生じる規則的かつ律動的に筋収縮を反復する運動です。
間代(かんたい)と訳します。
A疾患
筋萎縮性側索硬化症
神経変性疾患、など。
(2)錐体外路の障害
@症状
多くは不随意運動を呈します。
A疾患
パーキンソン病
レビー小体型認知症
脳出血や脳梗塞
ある種の薬剤の副作用
3:錐体外路症状
主に大脳基底核の異常により生じる様々な症状です。
錐体外路症状は一般に次の2つに大別されます。
筋緊張亢進‐運動減退症候群(hypertonic-hypokinetic syndrome)
筋緊張低下‐運動亢進症候群(hypotonic-hyperkinetic syndrome)
(1)筋緊張亢進・運動減退症候群---運動過少を呈する症状
@症状
主に淡蒼球、黒質の障害で、筋緊張は亢進し、固縮、寡動、無動が見られます。
1)固縮---歯車様固縮と鉛管様固縮に分類される。
1:歯車様固縮
関節屈伸運動時にガタガタとした断続的な抵抗を感じるものです。
パーキンソン病に特徴的な固縮である。
2:鉛管様固縮
抵抗を感じるもので、非特異的な固縮です。
2)無動
動作が少なくなり、動作が緩慢となり、進行すると動けなくなります。
この動作の減少を寡動、動作の緩慢を動作緩慢、動作の欠如を無動と呼びます。
パーキンソン病でみられる仮面様顔貌、すくみ足、瞬きの減少などは無動によるものと考えられます。
A疾患
パーキンソン症候群、ウィルソン病の末期、マンガン中毒などで見られます。
(2)筋緊張低下・運動亢進症候群---運動過多を呈する症状(不随意運動)
@症状
主に視床とも関連する新線条体(尾状核、被殻)の障害で、筋緊張は低下し、多動状態が見られます。
1:パーキンソン様症状
手がふるえる、体がこわばります。
2:振戦
静止時振戦、姿勢時振戦、運動時振戦に分類されます。
パーキンソン病では静止時振戦が特徴的です。
通常、片側の上肢に発症、次に同側下肢、後に対側の上肢下肢へとみられるようになります。
3:舞踏運動
顔をしかめたり、首を回旋させたり、手足を伸展・屈曲・開閉・回旋させたりします。
4:片側バリズム
振幅が大きい素早い運動です。
上肢または下肢を投げ出すような激しい動きでパターンは一定です。
視床下核や、視床下核に投射する神経線維連絡の障害により、視床から大脳皮質への出力が異常に増大して出現
すると考えられています。
脳血管障害が原因として多いが、高血糖でも生じます。
5:アテトーゼ
顔面・頸部にみられる持続の長い運動です.
異常肢位がゆっくり捻れながら変化していくような動きです。
原因としては、周産期異常による脳性麻痺が多い。
アテトーゼのみを呈することは稀で あり、舞踏運動、ジストニア、痙縮などを伴う場合が多い。
6:ジスキネジア
無意識に口が動く、手足が勝手に動く。
7:ジストニア
持続的な筋収縮により異常姿勢や局所(上肢・下肢等)の運動障害を来たします。
ろれつがまわらない、首が反り返る、手足がつっぱる、目が上を向いたままもどらない、など。
特徴として、
主動筋と拮抗筋が同時に収縮する共収縮、
姿勢異常や運動障害が一定のパターンをとる常同性、
特定の感覚入力によって症状が改善する感覚トリック
ある特定の動作のみが障害される動作特異性
起床時に症状が軽い早朝効果、などがあります。
8:アカシジア
錐体外路症状(EPS)による静座不能の症状のことを言います。
足がむずむずする、そわそわしてじっとしていられないという症状があります。
9:その他
よだれが大量に出る.。
A疾患
リウマチ性舞踏病(小舞踏病)、ハンチントン舞踏病、脳性麻痺、脳血管障害等があります。
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