お口大全 (お口の機能と病気と口腔ケア)  All the Oral-functions and Care
mail:info@aofc-ydc.com

脳性麻痺について

     
トップページ お口の働き お口の病気 摂食嚥下障害  お口から入る病気  口腔ケア 

脳性麻痺(Cerebral palsy, CP)とは
脳性麻痺とは
受精から生後4週までの間に、何らかの原因で受けた脳の損傷によって引き起こされる運動機能の障害をさす症候群です。
運動障害・肢体不自由者の発症要因の約7割が脳性麻痺だとされます。

遺伝子異常によるものや、生後4週以降に発症したもの、暫定的なもの、進行性のものは含まれません。


脳性麻痺の分類
  損傷部位による分類
アテトーゼ型
大脳の運動神経系、錐体外路の大脳基底核が損傷されたケースで不随意運動を特徴とする。

 特徴1  
   不随意運動がある。筋緊張の変動があり、一定の姿勢の保持や運動範囲のコントロールが困難。

 特徴2  
   純粋のタイプでは 腱反射の亢進やバビンスキー反射など錐体路系の障害による病的反射は出現しない。
   原始反射・姿勢反射の消失異常あり。

 特徴3  
   障害の程度にもよるが、一般的に関節拘縮は起こらない。
   しかし、筋緊張の亢進したタイプでは、筋緊張から痙直型と同じような拘縮が起る場合がある。
 
 特徴4  
   顔面の不随意運動による言語障害が著明。
   発語、発声の運動障害・筋緊張の過度な動揺による運動の不安定性・協調性の困難さあり。
   さらにこれによる、咀嚼嚥下(えんげ/のみこむ)障害及び流涎が比較的軽症の場合でも多く出現する。

 特徴5  
   知的発達は正常を保たれることが多い。痙直型に比べると知的発達の遅れは少ない。
 特徴5'  
   知的発達が正常である場合、本人の意欲と身体的運動能力が一致しない。
   身体が思い通りに動かないことに欲求不満を抱えがちである。

 特徴6  
   感音性難聴を合併することも少なくない。


失調型
小脳もしくはその伝導路が損傷されたケースで四肢麻痺、震顫(しんせん/ふるえ)、バランスの悪さ、運動コントロールの不安定性、抑揚に乏しい単調なゆっくりとした話し方などを特徴とします。


痙直型
大脳の運動神経系の錐体路系が損傷されたケースで、四肢の筋緊張の亢進を特徴とし、折りたたみナイフ現象が見られる。障害が現れる部位によって片麻痺、対麻痺、四肢麻痺、両麻痺などに分類される。視覚・認知障害、斜視を合併することが多い。


固縮型
錐体路、錐体外路ともに障害があり、四肢麻痺が出現する。強固且つ持続的な筋緊張のため、関節の動きは歯車様となります。


混合型
痙直型とアテトーゼ型の症状を併せ持つケースなど同時に二つ以上のタイプが混合している状態を指します。


運動障害の範囲による分類
単麻痺
四肢のうちどこか一肢のみが冒されたもの。


片麻痺
左右どちらかの片側の上下肢が冒されたもの。


対麻痺
両下肢のみ冒されたもの。


両麻痺
四肢すべてに障害があり、上肢の障害が比較的軽いもの。
通常は痙直型に出現する 首のすわりや言語・上肢機能が比較的良い場合が多い。


四肢麻痺
四肢すべてに障害があり比較的重度のもの。各タイプに出現する。
アテトーゼ型四肢麻痺では上肢より下肢の障害が軽いケースも少なくない。





原因
周産期仮死、低体重出生、核黄疸が挙げられ、脳障害の病因発生の時期に応じて、胎生期・周産期・出生後に分けられる。

胎生期の原因
  脳の発生の過程で問題が生じる脳形成異常
  脳出血
  虚血性脳障害

周産期の原因
  胎児仮死
  新生児仮死
  核黄疸
  脳室周囲白質軟化症(PVL)

出生後の原因
  脳炎・髄膜炎
  脳血管障害


合併症
  精神発達障害
  運動発達障害
  てんかん
  視覚障害
  聴覚障害
  視覚や聴覚などの認知発達の障害
  情緒・行動障害


症状
(1)原始反射の残存   
   消失すべき原始反射が残存し,異常姿勢や異常筋緊張を生じます。   
   健常児では生後5〜6か月頃までには消失します。

  @緊張性迷路反射     
    背臥位で頭部を軽度後屈させると四肢体幹が伸展し、 腹臥位で頭部を軽度前屈させると四肢体幹が屈曲する反射です。

 A非対称性緊張性頸反射     
    顔を一方に向けると、顔の向いている側の上下肢が伸展し,反対側の上下肢が屈曲する反射.    

               

 B咬反射    
    歯に歯ブラシや器具の刺激が加わると反射的に噛みこんでしまいます。

  C驚愕反射     
    安静時に、光、音、接触刺激により全身が緊張します。


(2)合併症
   原始反射が持続すると、四肢体幹の変形、拘縮が進行.、脊柱側弯、股関節脱臼が引き起こされる。
   脊柱側弯や胸郭変形が強いと呼吸器,消化器循環器等に合併症を併発する。
   脳性麻揮は運動および姿勢の障害であるが、以下を合併します。
       知的能力障害(約50)   てんかん(約50)   視覚障害(約50)   聴覚障害(約3040)
       言語障害(約70%)


脳性麻痺の医療・療育
  筋緊張充進に対する治療   
   経口抗痙縮薬(ジアゼパム 経口バクロフェン. ダントロレンナトリウム,チザニン)   
   ポツリヌス療法   
   フェノールブロック   
   バクロフェン髄腔内投与療法、などが用いられています。  


変形,拘縮に対する治療
  
  整形外科手術が行われる.  


その他の合併症(てんかん,呼吸障害など)の治療   
  必要に応じて実施    
 

機能訓練   
  運動能力を引き出すための理学療法:Bobath(ボバース)法、Vojta (ボイタ)法.上田法など.   
  ADLを獲得するための作業療法・摂食機能訓練など.  
  機能訓練の補助、また変形.拘縮の予防や矯正の目的で,上肢,下肢,体幹に装具が用いられる.
 

脳性麻痺と口腔機能・口腔ケア
  (1)口腔の特徴  
 @歯   
    適切な口腔衛生管理がなされないと,う蝕罹患率が高くなります。   
    不随意運動や姿勢の異常などから歯科治療が困難なため未処置歯が多くなります。   
    エナメル質形成不全がみられることがあります。   
    筋緊張の充進から生じる特有の顎運動から,歯の著しい咬耗があります。  
    転倒やスプーン、マウススティックの使用による歯の破折、脱臼などの外傷が多く見られます。  

 A歯周組織   
    う蝕と同様に適切な口腔衛生管理がなされないと歯周疾慰の罹患率が高くなる.   
    フェニトインなどの抗てんかん薬による薬物誘発性歯肉増殖症がみられる.  

 B歯列   
    舌の突出や口腔周囲筋の強い緊張のため、狭窄歯列弓(V字型,U字型歯列弓)が多い.  

 C咬合   
    歯列弓の変形に伴う開咬や、上顎前突が多い.    

 D摂食嚥下機能   
    中枢神経系の障害や口腔周囲筋の機能障害などによる摂食嚥下障害がみられる.  


(2)歯科医療、口腔ケアを行うときの注意点
 @リスク評価   
    運動障害の型分布や知的能力障害,てんかん,呼吸障害などの合併症の有無を把握することが必要.   
    またコミュニケーションの方法も知る必要.  

 A局所麻酔   
    患者の緊張を高め,協力性を損なうため、局所麻酔は痛みを伴わないように行うことが必要.

 B行動調整   
    原始反射の残存する脳性麻揮患者では仰臥位にして股関節や膝関節を伸展させると不随意運動が誘発され
    やすくなります。    
    押さえつけて抑制するとかえって緊張が高まり不随意運動を充進させることになりかねません。

    姿勢緊張調整パターン(Bobathの反射抑制体位)をとらせることにより軽減できます。
    治療いすの背板を少し立てて、頭部と肩甲帯を前屈させ、股関節と膝関節を屈曲させるために膝下に三角形の
    クッションを入れることにより緊張が出にくくなります。     
    このとき上体が不安定になりやすいのでマジックベルトなどで骨盤部を治療いすに固定すると安定感が得られます。
    反射抑制体位を考慮した固定装置もあります。    

    また緊張の緩和,驚跨反射の防止を図るためには静かな環境での診療が望ましい.    
    不安,緊張の軽減,不随意運動のコントロールのため前投薬.笑気吸入鎮静法や静脈内鎮静法が用いられる.    
    有意識下では治療が困難な場合には全身麻酔が用いられる.    

    口腔内に不用意にミラー、開口器などの器具を入れると、咬反射を誘発し, 歯の破折・脱臼を起こすことが
    あるため注意が必要(痙直型)。  
    脳性麻痺者においては、上肢連動年齢が高いほど歯ブラシによる清掃効果は高い.   
    電動歯ブラシは、振動や把持部の太さなどから必ずしも清掃効果が高いとはいえない.


  補足:ボバースの反射抑制体位  
     脳性麻痺の患者において不随意運動が出にくい姿勢・体位のこと. 異常姿勢反射抑制肢位ともいう.
     歯科診療時の異常な運動によるリスクを低くする.
     治療中の苦痛も軽減できるとされている.  

                

      ボバースの反射抑制体位   四肢は屈曲させ、頭部は前屈、膝にクッションなどを挟み込む姿勢である。



参考資料

『スペシャルニーズ デンティストリー 障害者歯科』 医歯薬出版 2009 日本障害者歯科学会 (著, 編集)


『障害者歯科のための行動変容法を知る』 1999/9 大津 為夫 クインテッセンス出版


「障害(児)者における診療時の行動調整」 佐藤昌史 昭和大学歯学部小児成育歯科学教室 昭歯誌 26:249-255, 2006







 お口大全TOPへ

copyrightc 2021 YDC all rights reserved


mail:mail:info@aofc-ydc.com