マスク (mask)
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1:マスクについて
マスクとは、人体のうち顔の一部または全体に被るもの、または、覆うものを指します。
また、頭部まで覆うものを含めることもあります。
主に鼻と口を覆い、外から微生物、花粉、粉塵などの侵入を防ぐ目的で使用されます。
また、逆に体内から外部に飛沫等が出るのを防ぐ目的もあります。
防寒の目的で使われる場合もあります。
2:マスクの種類と用途
用途別では、産業用、医療用、家庭用に分けられます。
材質別では、ガーゼなどの布を使うタイプと不織布を使うタイプに分けられます。
3:マスクの性能を表す指標
(1)バクテリア飛沫捕集効率 (BFE:Bacterial Filtration Efficiency)
マスクによって、黄色ぶどう球菌含む懸濁液の粒子(平均粒子径3.0±0.3μm)がどれだけ除去されるかの
割合(%)を示したものです。
サージカルマスクではBFE>95%以上が必要です。
(2)ウイルス飛沫捕集効率 (VFE:Viral Filtration Efficiency)
マスクによって、バクテリオファージ174を含む懸濁液の粒子(平均粒子径1.7μm)がどれだけ除去されるかの
割合(%)を示したものです。
(3)微粒子ろ過効率 (PFE:Particle Filtration Efficiency
約0.1μmの大きさの粒子をどれだけカットできるか示したものです。
PFEが高値であればあるほどインフルエンザウイルスなど粒子が非常に小さな病原体もしっかりカットすること
ができるということです。
(4)アメリカ合衆国労働安全衛生研究所の規格
(ナイオッシュ NIOSH:National Institute for Occupational Safety and Health )
@NIOSH規格とは
NIOSHが定めた9種類の基準です。
N95/R95/P95:0.1〜0.3μmの微粒子を95%以上除去できる性能
N99/R99/P99:0.1〜0.3μmの微粒子を99%以上除去できる性能
N100/R100/P100:0.1〜0.3μmの微粒子を99.97%以上除去できる性能
N:Not resistant to oil(耐油性なし)
R:Resistant to oil(耐油性あり)
P:Oil Proof(防油性あり)
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95 |
99 |
100 |
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N |
N95 |
N99 |
N100 |
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R |
R95 |
R99 |
R100 |
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P |
P95 |
P99 |
P100 |
AN95マスク
アメリカ合衆国労働安全衛生研究所(NIOSH:National Institute for Occupational Safety
and Health )の
N95規格をクリアし、認可された微粒子用マスクのことを指します。
N95 規格は、NIOSHが定めた9種類(後述)の基準の中で最も低いものです。
「N」は耐油性が無いことを表し(Not resistant to oil)、「95」は試験粒子を 95% 以上捕集できることを
表しています。
試験粒子は約0.3μmの塩化ナトリウム粒子であり、この粒子径で95%以上捕集できなければならないと
されます。
耳掛け式のマスクは顔面への密着性が十分に確保できないことから、防じんマスクとしての要件を満たしません。
後頭部で固定する構造であることが必要です。
(5)NIOSH以外の規格
@KN95マスク
中国の規格GB2626-2006に準じて作られたマスクです。
フィルタ性能的にはN95と同等の基準をクリアしたマスクになります。(試験粒子(0.3?)以上を95%捕集)
ADS2マスク
DS2は日本の厚生労働省が定めた国家検定規格に適合したマスクです。
米国規格のN95に相当するものとして一般に認識されています。
BKF94マスク
KFはコリアンフィルターのことで 韓国の保健福祉部と食品医薬品安全処によって制定された保健用マスクの
規格です。
米国の規格N95に相当すると認識されています。
CJN95マスク
日本製の立体マスクで、その形状からダイヤモンドマスクとも言われています。
JN95はKF94マスクに似た商品を日本で製造したマスクということで規格というよりは商品名ということに
なります。
DFFP2マスク
ヨーロッパが定めたEN規格に適合したマスクです。
米国規格のN95、日本の防じんマスクのDS2に相当するものとして一般に認識されています。
(5)医療用マスクのレベル
レベル1〜3に分けられています。
@血液不浸透性とは
血液などが付着した際の染み込みにくさを表しています。
A呼気抵抗とは
呼吸のしやすさを示しています。
数値が低いほど呼吸がしやすいです。
呼吸がしやすいということは反面、バリア性にも影響がでるため、呼吸のしやすさとバリア性の両立が求められる
部分でもあります。
B延焼性とは
燃えひろがりにくさを表しています。
クラス1〜3にわかれており、数値が小さいほど燃え広がりにくいことを示しています。

補足:様々な粒子の大きさ
花粉--------約30μm
ヒト細胞-----約10μm
飛沫--------約5μm以上
飛沫核------約5μm以下
PM2.5-------約2.5μm
細菌--------約1μm
インフルエンザウイルス--約0.1μm
補足:マスクの再使用について
マスクの不足のため、再使用を余儀なくされる場合もあります。
しかし、アルコール消毒をして再利用すると、かなり効力が低下することが知られています。
N95マスクをアルコール消毒すると、ウイルス通過率が新品では1%であったところ、アルコール消毒後は35%も
通過するほど劣化したといいます。
新品のサージカルマスクをアルコール消毒すると、4%しか通過しないという値と比べると驚くほどの劣化です。
アルコール消毒は、アルコール分または水分が繊維が帯びた電気を失わせてしまうと考えられるので、N95マスク
に対しては禁忌とされています。
補足:マスクの選択
詳細は、「マスク2:マスクの選択」へ
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マスクの種類と用途 |
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1:用途による分類
マスクは用途別では、産業用、医療用、家庭用に分けられます。
(1)産業用-防塵マスク
@防塵マスク
主に工場などで作業時の防塵対策として使用されるマスクです。
工業用マスクや防塵マスクとも呼ばれ、粉塵の量や性質により口や鼻だけを覆うもののほかに顔面すべてを
覆うものもあります。

A種類
N95マスク(米国、NIOSHの認定)
DS2規格マスク(日本の国家検定合格使い捨て式 防じん規格)
(2)医療用マスク
@医療用マスク(サージカルマスク)
医療用マスクは、主に空気中の飛沫(3-5μm以上)を対象とする感染予防を目的とするマスクです。
狭義には surgical(外科の、手術の)マスクですが、広義には医療現場もしくは医療用のマスクを指します。
対象とする粒子径は一般的に3μmより大きいものとなります。
SARSウイルス(0.1μm以下)のように感染性病原ウイルスが微粒子で、空気中に浮遊している場合、
医療用マスクでは対応できないため、N95やDS2のクラス以上の防塵マスクが使用されます。
A種類
不織布マスク
N95マスク
Bサージカルマスクの基準
バクテリア飛沫捕集効率 (BFE:Bacterial Filtration Efficiency)が95%以上であること。
すなわち、3.0±0.3μmの粒子が95%以上捕集出来る事が必要です。

C医療用N95マスク
マスク性能として、試験粒子(0.3μm)以上を95%捕集できる事が必要です。
耳掛け式ではなく、後頭部で固定する構造であることが必要です。
作業用で長時間の使用には向いていません。

(3)家庭用マスク
@家庭用マスクとは
防寒、花粉症対策、風邪対策、ウイルス対策、防塵などのための一般向けのマスクを家庭用マスクといいます。
布(通常は木綿やガーゼ)で作られた、口と鼻を覆うマスクです。
サージカルマスクやN95マスクのような防毒マスクとは異なり、規格は定められていません。
また、感染経路や粒子状物質大気汚染に対する保護手段としての有効性について、ほとんど調査されておらず、
指針もありません。
しかしながら、2020年のアメリカ化学会の研究では、複数の素材を重ねることで粒子を捕捉する能力が高まり、
組み合わせによってはN95マスクに匹敵する有効性があるという結果もあります。

A種類
材質によっていくつかのタイプがあります。
木綿、ガーゼ、ウレタン、など
2:材質による分類
マスクは材質別では、ガーゼなどの布を使うタイプと不織布を使うタイプに分けられます。
(1)布タイプ
@布マスク
布製マスクまたはガーゼタイプのマスクは、主に綿織物を重ね合わせたもので古くから広く使われてきた
もので、布マスクとも呼ばれます。
洗浄して再利用できるため経済的で、病原体の飛散防止には一定の効果を発揮します。
しかし、不織布タイプに比べ性能が劣るため、世界保健機関(WHO)では医療従事者の使用を推奨して
いません。
織物 編み物
A素材
木綿、ガーゼ、ポリウレタン
(2)不織布(ふしょくふ)タイプ
@不織布
不織布とは繊維を織らずに絡み合わせたシート状のもの(紙、フェルト、編物を含まない)をいいます。
一般にシート状のものとして代表的な布は、繊維を撚って糸にしたものを織っていますが、不織布は繊維を
熱・機械的または化学的な作用によって接着または絡み合わせる事で布にしたものを指します。
不織布
3:形状による分類
マスクは形状別では平型マスク、プリーツ型マスク、立体型マスク、ダイヤモンド型マスクに分けられます。
(1)平型マスク
平型マスクは主に綿織物を使用しており、高い保温性と保湿性を有します。
ガーゼタイプが主流です。

(2)プリーツ型マスク
プリーツ型マスクは前面がプリーツ(ひだ)状になっており、顔前面にフィットして圧迫感を与えにくい形です。
不織布タイプが主流です。

(3)立体型マスク
立体型マスクは人間の顔に合わせてデザインされており、顔面に隙間なくフィットします。
不織布タイプが主流。

(4)ダイヤモンド型マスク
ダイヤモンド型マスクは不織布を用いたもので、プリーツ型や立体型に比べてマスクと口との距離にゆとりが
ある為、呼吸がしやすくなっています。
また、口紅がマスクに付着しにくいという理由で女性に人気があります。

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マスクの使用方法 |
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1:マスクの着用方法
(1)マスクの装着方法
事前に、サイズの合ったマスクを選んでおきます。
ノーズピースがある方を上にし、プリーツ部分が下向きになるよう立体に広げます。
(プリーツ部分が上向きだと、ウイルスや埃が溜まる恐れがあります。)
ノーズピースを鼻の形にそってズレ落ちないようしっかり折り曲げます。
鼻を押さえながらひだを伸ばし鼻とあごをしっかり覆います。

(2)マスクの外し方
マスクにはウイルス等がついている可能性があるため、紐をもってそっと外します。
表面に触らず、下側のゴムから外し、上ゴムを外します。
保管時は、マスクの外側を下にして清潔なティッシュ 等の上に置いて保管します
次に使用するときも、 紐を持って、マスクの 外側や内側に触れな いようにします。
捨てるときも 表面には触れないようにして廃棄します。
2:マスクの適正を検査する方法
(1)ユーザーシールチェック
マスクの漏れがないかを試すテストです。
N95マスクと顔の密着性を確認するため、装着時には毎回、必ずユーザーシール チェックを行います。
N95マスクに手を当て、息を吸ったり吐いたりして、隙間がないかチェックします。
N95マスクの脇や鼻周辺から息の漏れが感じられれば、もう一度ゴムバンドや 鼻当てを調整し直し、
再度ユーザーシールチェックを行う
(2)マスクフィットテスト
マスク使用者の健康被害を防止するために、どの呼吸器防護具が使用者の顔面にフィットするかを定性・量的
に決定する方法です。
@定性フィットテスト
エアロゾル化した物質(甘味剤 や苦味剤など)を噴霧し、被験者が感覚的に甘味や苦味を
感じたかどうかで判断する方法です。
定性法は安価な反面、客観性に欠ける点が多々あります。
A定量フィットテスト
呼吸用保護具の外側、内側それぞ れの粒子濃度を測定し、フィットファクターを求める方法です。
3:着用時の注意点
(1)マスク着用における熱中症
夏の時期はマスク着用による熱中症に気を付けなければなりません。
新型コロナウイルス感染症に対する医療体制を整える必要がある中で、熱中症による搬送者が増えたら
救急医療体制への負荷が高まる事になります。
これによって、新型コロナウイルス感染症の院内感染の危険性が高まることも危惧されます。
そのため、厚生労働省はマスク着用による熱中症を防ぐために、気温・湿度が高い時、人と2メートル以上離れて
いればマスクを外すようにすること、こまめな水分補給が必要だと注意喚起しています。
(2)マスク着用による肌荒れ・アレルギー
大人のニキビは、摩擦によって生じやすいという特徴があります。
摩擦をおこさないよう、刺激が少なく肌あたりの柔らかい素材のマスクを選ぶことがおすすめです。
マスクによるるかぶれ(接触皮膚炎)で、口周りが赤くただれて粉をふくことがあります。
かぶれない素材のマスクを選ぶことが必要になります。
炎症をともなっている場合には、保冷剤などで冷やし、たっぷりの保湿剤を使用することも必要です。
4:適したマスクの選択
詳細は、「マスク2:マスクの選択」へ
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参考資料 |
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