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1:IgG4関連疾患とは
抗体の一つであるIgG4を作る形質細胞とリンパ球が集まり、炎症と線維化をおこして臓器の腫れなどをきたす原因不明
の病気です。
病気は全身のあらゆる臓器に起こるので、診断時には全身の検査が必要です。
また、同時にがんがみられる場合があるので注意が必要です。
Sjogren症候群の亜型とされてきたMikulicz病はIgG4関連疾患の涙腺・唾液腺病変です。
今まで別々の病気だと思われていた、ミクリッツ病、リンパ形質細胞性硬化性膵炎、自己免疫性膵炎などに、全てIgG4の
上昇とIgG4を作る形質細胞という細胞の臓器への浸潤が共通していることが分かり、IgG4関連疾患としてまとめられる
ことになりました。
現在では、ほかにも、自己免疫性下垂体炎、間質性腎炎、後腹膜線維症、大動脈周囲炎などと呼ばれていた疾患のうち
一部がIgG4関連疾患であることが分かっています。
2:IgG4関連疾患に含まれる疾患
涙腺・唾液腺----Mikulicz病、Kuttner腫瘍(顎下腺)、涙腺炎、視神経炎
呼吸器系-------IgG4関連肺障害、炎症性偽腫瘍、縦隔線維症
消化器系-------腸炎
肝・胆道系------硬化性胆管炎、IgG4関連肝障害
膵-------------自己免疫性膵炎
腎・泌尿器系----IgG4関連腎臓病、後腹膜線維症(Ormond病)、前立腺炎
内分泌系-------自己免疫性下垂体炎、Riedel甲状腺炎、糖尿病
神経系---------肥厚性硬膜炎
リンパ系--------IgG4関連リンパ節症
心血管系-------炎症性大動脈瘤、大動脈周囲炎、動脈周囲炎

厚生労働省 難治性疾患克服研究事業 「IgG4関連疾患専用情報」 から引用
3:原因
原因は不明ですが、何らかの免疫異常が関わっている自己免疫性疾患と考えられています。
4:疫学
(1)患者数
日本全体で約1〜2万人いると推定されます。
(2)好発部位
膵臓と涙腺・唾液腺を二大好発臓器とします。
その他、神経、涙腺、唾液腺、甲状腺、肺、肝臓、胆道、腎臓、膵臓、胃腸、前立腺、リンパ節、血管、乳腺、
膚、後腹膜などにも発症します。
5:症状
涙腺・唾液腺:腫れ、目や口の乾燥症状(ドライアイ、ドライマウス)
肝臓・胆道(胆汁の通り道)・膵臓:お腹の痛み、黄疸(眼球や皮膚が黄色くなる)
後腹膜(お腹の中の後ろ側):お腹の痛み、水腎症(腎臓からの尿の流れが悪くなり、腎臓が腫れる)
肺:咳、痰、呼吸が苦しい
リンパ節:腫れ
甲状腺:腫れ、甲状腺機能(甲状腺ホルモンの分泌)の異常
6:診断
(1)検査所見
血清総蛋白(TP)上昇、末梢血好酸球増多、
血清IgG(1800mg/dl以上)上昇、IgG4(135mg/dl以上)上昇、非特異的IgE上昇など。
抗SS-A/Ro抗体・抗SS-B/La抗体は陰性のことが多い
抗核抗体・リウマトイド因子も陰性の場合が多い
(2)全身疾患としてのIgG4関連疾患の包括診断基準
1)臨床的に単一または複数臓器に特徴的なびまん性あるいは限局性腫大,腫瘤,結節,肥厚性病変を認める.
2)血液学的に高IgG4血症(135mg/dl)を認める.
3)病理組織学的に以下の2つを認める.
組織所見:著名なリンパ球,形質細胞の浸潤と線維化を認める.
IgG4陽性形質細胞浸潤:IgG4/IgG 陽性細胞比40%以上,かつIgG4陽性形質細胞が10/HPF を超える.
上記のうち
1)+2)+3) を満たすものを確定診断群(definite)。
1)+3) を満たすものを準確診群(probable)。
1)+2) のみを満たすものを疑診群(possible)とする.
7:治療
治療としてステロイドが有効で。
ステロイドの量を減らした後に、固まりや臓器の腫れがまた悪くなることがあります。
慎重に経過をみる必要があります。
8:予後
長期経過については、まだ詳しいことはわかっていません。
ステロイドで治療して良くなっても、ステロイドを中止すると半分程度の患者さんで再発・再燃 します。
生命予後 は比較的良好と考えられています。
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