お口大全 (お口の機能と口腔ケア) All the Oral-functions and Care
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シェーグレン症候群について

     
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シェーグレン症候群 (Sjogren's syndrome)
 
1:シェーグレン症候群とは

 涙腺の涙分泌や、唾液腺の唾液分泌などが障害される自己免疫疾患の一種です。
 シェーグレン症候群は指定難病のため重症度により医療助成の対象となることがあります。

        


2:分類
 次の二つに大別されます。
    2次性シェーグレン症候群-----膠原病に合併する。
    原発性シェーグレン症候群----合併症は無い。


3:原因・発症機序
 直接的な原因は不明ですが、遺伝的要素、環境要素、性ホルモンの影響なども関わると考えられています。
 抗SS-A/Ro抗体、抗SS-B/La抗体といった自己抗体が存在することから自己免疫応答が関わると考えられています。


4:疫学
 40歳から60歳の中年女性に好発します。
 男女比は1対14で、圧倒的に女性に多い。


5:症状
 本症候群は、腺細胞からの分泌物の低下が基礎となり、様々な症状が現れる。

        

 (1)眼症状---主症状
     2種類ある涙の分泌様式の基礎分泌と反射性分泌の双方に障害を与え、ドライアイなどをきたします。

 (2)口腔症状
     ドライマウス(詳細は、「口腔乾燥症」)で、自己免疫現象により自らの唾液腺が破壊され唾液の分泌が減少に
     より起こります。
     唾液分泌の減少は虫歯酸蝕症の増加します。
     その他の自覚症状としては、味覚変化、口内炎の好発が有ります。
     乾燥が喉まで至り食べ物が喉を通らなかったり、声のかすれも起こる事があります。
     詳細は、「口腔乾燥症の影響」へ

 (3)皮膚症状
     @皮膚乾燥症状にともなう掻痒
     A皮膚血管炎
     B環状紅斑

        

     Cレイノー現象
       寒冷時や冷水につかったときに四肢末梢部、とくに両手指が対称的に痛み、痺れ感とともに蒼白、あるいは
       チアノーゼなどの虚血症状をきたす現象。
       若年女子に多発します。
       原因は明らかではありません。
       強皮症、混合性結合組織病、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎の患者
       でもレイノー現象が認められます。

        


 (4)関節、筋
     関節炎が生じることがありますが、関節リウマチのような破壊性のものではなく、全身性エリテマトーデスに
     似ています。
     筋炎が生じることがあり、多発性筋炎に似た近位筋優位の炎症性筋炎です。

 (5)肺
     間質性肺炎が生じることがあり、特にリンパ球性間質性肺炎(LIP)という特徴のある間質性肺炎を来たします。
     有症状となる頻度は高くありませんが、CTなどで軽度の異常陰影がみられることがあります。
     間質性肺炎合併時の5年生存率は84%程度とされています

 (6)心臓
     心外膜炎が生じることがあるが有症状となることはまれです。
     しかし心臓超音波検査で心嚢液が多くみられるなどの異常所見はよくあります。

 (7)消化管
     嚥下困難はよくみられ、たいていは口腔内乾燥が原因です。
     しかし、全身性強皮症に似た消化管蠕動異常が原因であることもまれにあります。

 (8)肝臓
     肝機能障害が起こることがあるほか、原発性胆汁性胆管炎や門脈圧亢進症を合併することもあります。
     膵臓自己免疫性膵炎を合併することがあると言われていましたが、現在ではシェーグレン症候群ではなく、
     同じ様な症状を呈するミクリッツ病に合併するという考えが大勢を占めています。

 (9)腎臓
     特徴的なリンパ球性間質性腎炎が本症に合併することがありますが、頻度はまれです。
     間質性腎炎の結果として、遠位尿細管性アシドーシスや腎性尿崩症をきたします。
     シェーグレン症候群の患者の尿細管では介在細胞のH+-ATPaseが欠損していたとの報告があります。
     膀胱間質性膀胱炎が合併することがあります。

 (10)甲状腺
     甲状腺に炎症が起きることがあり、橋本病様であるとされます。
      (これについては特別本症で起きやすいわけではないとする報告もあります)

 (11)神経
     多発神経炎や多発単神経炎を合併することがあります。
     全身性エリテマトーデス様の症状であると考えられています。
     中枢神経症状を起こすことがあります。


6:検査
 (1)眼乾燥をみる検査
     @シルマーテスト
        短冊状の濾紙を眼角に挟み涙液分泌量をみる検査です。
        正常=10mm以上 低下=5mm以下

               


     Aローズベンガル染色テスト・蛍光染色テスト
        角膜上皮障害程度を染色によって調べる検査です。
        眼の表面がドライアイでどれだけ荒れているのか調べる検査です。
        具体的には、フルオレセインとローズベンガルという2つの色素を使って調べます。
        フルオレセインは主に角膜、ローズベンガルは主に結膜の傷を評価することができます。
        
 
 (2)口腔乾燥をみる検査----詳細は、「口腔乾燥症の検査」へ
     @ガムテスト
        チューインガムを噛みその間に分泌される唾液量を測定する検査です。
   
     A他
        唾液腺造影、唾液腺シンチグラフィーなどが行われることがあります。


 (3)自己抗体
     感度の高い抗SSA/Ro抗体と特異度の高い抗SSB/La抗体がよくみられ、診断に有用です。
      
     抗SSA/Ro抗体
        シェーグレン症候群の70〜90%と最も高頻度に検出されます。
        疾患特異性は高くなく、全身性エリテマトーデス(SLE)や強皮症、混合性結合組織病(MCTD)、
        関節リウマチなど、他の膠原病でも広く陽性となります。

     抗SSB/La抗体
        シェーグレン症候群の30〜40%に検出されます。
        特異性が高く、抗SS-B抗体陽性の場合、抗SS-A抗体も同時に陽性となります。


7:診断
 厚生省の診断基準(1998改定)
     1)口唇小唾液腺または涙腺の生検組織でリンパ球浸潤がある   
     2)唾液分泌量の低下がガムテスト、サクソンテストで証明され、シンチグラフィーで異常がある
       または唾液腺造影で異常がある
     3)涙の分泌低下がシャーマーテストで証明され、ローズベンガル試験または蛍光色素試験で角結膜の
       上皮障害がある
     4)抗SS‐A抗体か抗SS‐B抗体が陽性である

     この4項目の中で2項目以上が陽性であればシェーグレン症候群と診断されます。


8:治療
 基本的に対症療法が中心となります。
 主要臓器症状(間質性肺炎、間質性腎炎、中枢神経症状など)にはステロイド剤や、免疫抑制剤などの投与を積極的に
 検討します。

 (1)ドライアイ
     人工涙液またはヒアルロン酸が主成分の点眼薬を投与する。

 (2)ドライマウス----詳細は、「口腔乾燥症の治療」へ
    

9:シェーグレン症候群と口腔機能
 シェーグレン症候群は著しい口腔乾燥を引き起こします。
 唾液は、口腔環境を快適にさせる様々な因子を持っています。 (詳細は、「唾液」へ)
 そのため、シェーグレン症候群は口腔機能を厳しく損傷させてしまいます。
 この病気には対症療法が主となりますので、とにかく口腔乾燥症対策を取り、同時に口腔ケアの徹底が重要になります。


参考資料 
 
『シェーグレン症候群の診断と治療マニュアル 改訂第3版』   日本シェーグレン症候群学会 (編集) 2018

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