顎関節部の外傷について |
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はじめに:顎関節と外傷
顎関節部は直接的に外力を影響を受けることは余り多くありません。
しかし、オトガイに受けた力が、介達的に顎関節部に影響を及ぼすことは少なくありません。
その結果、顎関節部の打撲、捻挫、骨折などが生じることになります。
介達骨折=力が加わった場所から離れた場所に起きた骨折を介達骨折(かいだつこっせつ)といいます。
オトガイ部に加わった力が下顎頭にダメージを与えます。
1:顎関節部の捻挫
顎関節でも、噛みそこねや、オトガイ部の打撲などが原因となった捻挫があります。
関節軟部の損傷なのでX線像からは診断出来ませんが、開口障害、関節部疼痛を訴えることがあります。
この病態は骨折や脱臼にいたらない軽度外傷であり、円板、包内外に軟部外傷が生じ、開口時疼痛を主とした症状を
示します。
これらの症例も顎関節症と判別しがたい場合があり、後述の顎関節症のU型に入れる場合もあります。

顎関節周囲の軟組織 (顎関節症の診断と治療 別冊補綴臨床 医師薬出版から引用)
2:骨折(関節突起、下顎窩)
顎関節部外傷で最も一般的にみられるのは、下顎頭、関節突起の骨折です。
介達性骨折として頻度は高い。
保存的または観血的処置により対応されますが、ときにいわゆる骨折後遺症候群といわれるような開口時疼痛、雑音と
側方運動の障害を生じ、顎関節症と類似します。
症例1:右関節頭の骨折
咬合の変位が少ない場合には保存療法が選択されます。

症例2:左下顎角部、右関節頭の骨折
勤務医時代の症例です。
関節頭部はKirchnerワイヤーで固定、
その後顎間固定を行って交互をあわせ、シャンピーのミニプレートで骨の接合を行いました。

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参考資料 |
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『口腔外科学 第3版』 日本口腔外科学会編 2010 医歯薬出版
『カラーアトラス サクシンクト口腔外科学』 (第4版) 近藤 壽郎, 坂下 英明他 2019 学建書院
『顎関節症の診断と治療』 別冊補綴臨床 医師薬出版 1975
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