溶血性貧血 (AA:hemolytic anemia) |
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1:溶血性貧血
赤血球が破壊されることを溶血と言いいます。
赤血球の寿命はおよそ4か月と考えられていますが、赤血球が寿命よりも早く壊されることにより引き起こされる
貧血を溶血性貧血といいます。
溶血性貧血とは、赤血球自体の異常、または外因的な原因により早期に赤血球が破壊することによって生じます。
溶血とは
赤血球は通常時、ヘムとグロビンが結合した赤い色素のヘモグロビンを有しています。
これが破壊=溶血すると、ヘモグロビンは遊離し、腎尿細管上皮内でヘムとグロビンに分解されます。
ヘムはDNAや脂質を損傷させる有害な酸化ストレスとなりうるので、細胞が遊離したヘムにより発生した
フリーラジカルにさらされるとヘムを分解代謝するヘムオキシゲナーゼ1が極めて速やかに導入され、
ヘムがビリベルジンに分解されます。
ビリベルジンがビリベルジン還元酵素(BVR)によりビリルビンに還元されることとなります。
黄色のビリルビンが原因で黄疸が発症します。

低張液中(右)では赤血球の内部に水が流れ込んで溶血します。
2:病因
赤血球自体に基づくものと、それ以外のものとがあります。
(1)内因的原因
@自己免疫性溶血性貧血
赤血球を異物と誤認して、抗体反応によって赤血球が破壊されて発生する。
膠原病や悪性腫瘍、感染症が基礎疾患となって自己抗体の産生が惹起されることもありますが、
明らかな原因が特定できないこともあります。
A発作性夜間ヘモグロビン尿症
溶血性貧血のおよそ25%を占めています。
PIGA遺伝子と呼ばれる遺伝子が後天的に異常を呈することで赤血球が補体と呼ばれる免疫物質によって
破壊されやすい性質へと変化するために発症します。
B遺伝性球状赤血球症
先天的な病気で、約10%を占めています。
Cその他
寒冷凝集素症、発作性寒冷ヘモグロビン症、酵素異常症、ヘモグロビン異常症などが原因となります。
(2)外的な原因
@スポーツ
運動をすることによって足の裏の血管内で自らの赤血球を数多く踏み潰してしまうことで発生します。
昔は軍隊の長時間の行軍で兵士の尿に赤血球の中身であるヘモグロビンが見られ、血液学では
行軍ヘモグロビン尿症といわれるものと本質的に同じものです。
A薬物、細菌感染 など
3:症状
この貧血は病因も多様なため病状も多彩となります。
しかし,赤血球の破壊亢進という共通した現像から生ずる所見として
正球性,正色素性の貧血,ビリルビン(とくに間接ビリルビン)高値,LDH上昇,網赤血球数の増加,
骨髄赤芽球の増生などをあげることができる.
(1)貧血の一般的な症状
めまいや動機、少しの運動での疲労感、顔色不良、倦怠感、脱力感、息切れなどの貧血症状が現れます。
尿がコーラのような色になります。
(2)黄疸
溶血により血中ビリルビン値が上昇して黄疸になります。

(3)合併症
脾臓が大きくなる
胆石症 : 溶血により血中ビリルビン値が上昇するため胆石症を合併する事が多い。
核黄疸 : 新生児黄疸にみられ、大脳核にビリルビンが沈着することで起こる障害。
4:検査・診断
赤血球の減少、網赤血球の上昇(赤血球産生が増加していることの指標となります)、LDHの上昇、
間接ビリルビンの上昇などがあります。
溶血が進行するとヘモグロビンの処理が必要となり、ハプトグロブリンと呼ばれるタンパク質が低下します。
この項目を血液検査で確認することも重要です。
尿の潜血反応などの検査も行われますし、骨髄検査も検討されます。
5:治療
赤血球破壊の場である脾臓の摘出が奏功することがあります。
また、溶血により血中ビリルビン値が上昇するため胆石症を合併する事が多く、脾臓と同時に胆嚢の摘出を
することもあります。
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