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1:貧血とは
(1)貧血とは
末梢血中の赤血球数、ヘモグロビン(Hb)濃度、ヘマトクリット「(Hct)が健康な人々の値に比べて減少した
状態をいいます。
その3種の指標は必ずしも平行して減少しないので、そのような場合には、赤血球の酸素運搬という役割から
考えてヘモグロビン(Hb)濃度の減少を最も重視します。
最近の血液像の簡単な記載では、貧血の程度をHb濃度だけで記してあるのをよく見かけるのもこのような理由
からだと思われます。
* ヘモグロビン(Hemoglobin)とは
赤血球に含まれる赤色素たんぱく質のことです。
鉄(ヘム)とたんぱく質(グロビン)が結びついたものです。
血液が赤い色をしているのはヘムが赤色素を持っているためです。

* 赤血球の生成過程

(2)貧血の検査
医療機関や検診機関によって、正常値には若干の違いがあります。
赤血球数
男性:おおよそ 500万/mm3 (380万〜540万/mm3)
女性:おおよそ 450万/mm3 (350万〜480万/mm3)
ヘモグロビン(Hb)
酸素分子と結合する性質を持つ血色素量を示します。
男性:12-17g/dl
女性:11-15g/dl
ヘマトクリット(Hct)
血液中に占める赤血球の体積の割合です。
Hct:Hgb=3:1の関係がほぼ成り立ちます。
男性: 36〜50%
女性: 33〜45%
平均赤血球容積(MCV)
赤血球1個当たりの平均的な大きさです
平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)
赤血球1個当たりの平均ヘモグロビン濃度
2:貧血の原因ならびに分類
A:原因による分類
赤血球数やHb濃度の恒常性は、多くの因子によって調節をうけ、保持されています。
しかし何らかの原因で貧血が起こるためには、次の事に起因します。
赤血球の産生低下と破壊
喪失の増加
(1)赤血球産生の低下
@無効造血
造血細胞は赤血球を作ろうと努力はするが何らかの原因でうまく行かず、正常な赤血球を十分に作れない場合。
1)ヘモグロビン合成障害
1:鉄欠乏性貧血(ヘム合成の障害)
赤血球の材料である鉄が不足した場合の貧血です。
2:鉄芽球性貧血(ヘム合成の障害)
3:サラセミア(グロビン合成の障害)
異常な赤血球が作られてしまい、それはすぐに壊されるので溶血性貧血でもある。
2)DNA合成障害
1.ビタミンB12欠乏 巨赤芽球性貧血
悪性貧血や胃の切除、腸の吸収異常、極端な菜食主義で、ビタミンB12 が不足するために発症
します。
2.葉酸欠乏 巨赤芽球性貧血
なんらかの原因で葉酸が不足した場合。
3.骨髄異形成症候群(MDS)
造血細胞自体の異常で正常な赤血球が作れなくなります。
A造血細胞の減少
造血細胞の数が減少し赤血球産生能力が低下するために貧血が起こります。
1)再生不良性貧血 (詳細は、「再生不良性貧血」へ)
骨髄中の造血幹細胞が減少することによって骨髄の造血能力が低下し、末梢血中の全ての系統の
血球が減少(汎血球減少と言う)する。
2)赤芽球癆
3)骨髄癆
骨髄で異常細胞が増殖したり、骨髄が何かに置き換わってしまって、造血細胞が骨髄から追い出されて
しまいます。
例:白血病、肉芽腫性疾患、骨髄線維症、転移性腫瘍など。
4)薬剤、放射線、ウイルスなどが造血細胞を傷害します。
Bその他
1)造血因子エリスロポエチンの減少 腎障害---腎性貧血。
2)低栄養。
(2)赤血球の喪失
@出血
出血では赤血球と血漿(水分)を同時に失います。
血漿(水分)量は短時間で回復しますが、赤血球の回復には時間がかかるので血液が薄くなります。
A溶血
何らかの原因で赤血球が破壊される、あるいはもろく壊れてしまう場合です。
1)赤血球膜異常 遺伝性球状赤血球症、肝疾患、尿毒症。
2)赤血球酵素異常 G6PD欠乏症、ピルビン酸キナーゼ欠乏症。
3)自己免疫性溶血性貧血
免疫系が自分の赤血球を攻撃してしまう場合。
4)物理的破壊:行軍ヘモグロビン尿症(スポーツ貧血)
足を強く多く踏みつけることで、足裏の毛細血管内で大量に赤血球を押しつぶしてしまう。
5)発作性夜間ヘモグロビン尿症
A:原因による分類
赤血球の減少は、赤血球のサイズ・ヘモグロビン濃度という観点から分類されます。
赤血球のサイズ
大球性 - 赤血球が通常よりも大きい。赤血球の分化に異常があることを示唆します。
正球性 - 通常のサイズ。
小球性 - 通常よりも小さい。赤血球を作るための材料が不足していることを示唆します。
ヘモグロビン濃度
正色素性 - ヘモグロビンが通常の濃度で含まれている。
低色素性 - ヘモグロビン量が少ない。ヘモグロビンの産生に障害のあることを示唆するものです。
これらを組み合わせて、例えば「小球性低色素性貧血」などと表現します。
これは、状態を表現しただけのもので原因まで含めた診断名ではありません。
(1)小球性低色素性貧血
サラセミア
鉄芽球性貧血
鉄欠乏性貧血
(2)正球性正色素性貧血
再生不良性貧血
溶血性貧血
遺伝性球状赤血球症
発作性夜間血色素尿症(PNH)
自己免疫性溶血性貧血
(3)大球性貧血(大球性正色素性貧血)
巨赤芽球性貧血
悪性貧血
葉酸欠乏性貧血
ビタミンB12欠乏性貧血
3:貧血の症状
貧血状態では、ヘモグロビン濃度の減少により皮膚や粘膜面におけるHbの赤色調が減少し,顔色が悪いとか蒼白など
の状態になります。
(1)主要な症状
心悸亢進,息切れ,頭痛,耳鳴り,めまい,立ちくらみ,失神発作
全身倦怠、微熱 など
これらの症状は安静時には軽微であっても運動などにより負担がかかり、相対的に低酸素状態が増強されると
明瞭に現れるようになります。
(2)各種貧血の特徴的な症状
@鉄欠乏性貧血の場合
スプーン爪、舌炎、口角炎が特徴的です。
氷や土が無性に食べたくなる「異食症」を認める場合があります。
AビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血
舌炎を含む消化器症状や神経症状を認めます。
B溶血性貧血の場合
脾臓の腫大や黄疸を認める場合があります。
4:貧血の治療
各種の貧血がありますが、それによって治療法も異なります。
詳細は、 「鉄欠乏性貧血」 へ
詳細は、 「再生不良性貧血」 へ
詳細は、 「溶血性貧血」 へ
詳細は、 「巨赤芽球性貧血」
悪性貧血
葉酸欠乏性貧血
ビタミンB12欠乏性貧血
5:赤血球に影響が現れる主な疾患
次の様な病気があると、赤血球に異常を生じ、貧血用の症状を呈する事があります。
(1)汎血球減少性疾患
再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、急性白血病など
(2)主に赤血球数もしくはヘモグロビン量が減少する疾患
赤芽球癆、腎性貧血、巨赤芽球性貧血、鉄欠乏性貧血、無トランスフェリン血症、鉄芽球性貧血、
自己免疫性溶血性貧血、鎌状赤血球症、サラセミア、発作性夜間ヘモグロビン尿症、
(3)脾機能亢進症など赤血球数が増加する病気(多血症)
真性多血症など
(4)色素代謝異常
ポルフィリン症、メトヘモグロビン血症など
6:各種の貧血
詳細は、 「鉄欠乏性貧血」 へ
詳細は、 「再生不良性貧血」 へ
詳細は、 「溶血性貧血」 へ
詳細は、 「巨赤芽球性貧血」 へ
詳細は、 「巨赤芽球性貧血」
悪性貧血
葉酸欠乏性貧血
ビタミンB12欠乏性貧血
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