1:概念
(1)食行動症群とは
食行動の重篤な障害を呈する精神障害の一種です。
近年では嚥下障害等の機能的な摂食障害との区別をつけるため、中枢性摂食異常症とも呼ばれています。
厚生労働省の難治性疾患(難病)に指定されています。
患者の極端な食事制限や、過度な量の食事の摂取などを伴います。
それによって患者の健康に様々な問題が引き起こされます。
2:分類 (ICD-11)
(1)神経性やせ症(神経性無食欲症) (AN:Anorexia Nervosa )
やせへの執拗な追求、肥満に対する病的な恐怖、身体像の歪み、および必要量に対する相対的な摂取量制限が
健康を害する程度の有意な低体重につながっていることを特徴とします。
この障害は排出(例:自己誘発性嘔吐)を伴う場合もあれば,伴わない場合もあります。
(2)神経性過食(大食)症 (BN:Bulimia Nervosa )
反復的な過食エピソードに続いて排出(自己誘発性嘔吐、下剤また利尿薬の乱用)、絶食、衝動的運動などの形態の
不適切な代償行動がみられることを特徴とします。
(3)むちゃ食い症(過食性障害) (Binge eating disorder )
大量の食物を摂取し,自分が自制心を失ったかのように感じる反復的なエピソードを特徴とします。
エピソードの後に不適切な代償行動(例:自己誘発性嘔吐)はみられません。
(4)回避・制限性食物摂取症 (Avoidant-restrictive food intake disorder)
食物を回避したり、食物摂取を制限したりすることで、有意な体重減少、栄養欠乏、栄養サポートへの依存、
および/または心理社会的機能の著明な障害を来すことを特徴とします。
しかし、神経性やせ症や神経性過食症とは異なり、この障害は体型や体重への関心を伴うことが有りません。
(5)異食症 (Pica)
発達段階に不相応に(すなわち,2歳未満の小児では異食症は診断されない)、かつ文化的伝統の一部でない状況
において、栄養のない非食用物質を持続的に摂食する病態です。
(6)反芻・吐き戻し症 (Rumination-regurgitation disorder)
食後に食物の吐き戻しを繰り返す病態です。
3:原因
発症原因は諸説あります。
しかし現代においてはそれらが相互に複雑に関連し合って発症に至ると考えられています。
@社会文化的要因
肥満蔑視・やせに価値があるといいます。
A心理的要因
成熟拒否や、自己同一性獲得の失敗等が挙げられます。
B生物学的要因
脳機能の異常に原因を求める場合です。
4:疫学
(1)有病率
日本では2 - 3%で、心療内科や精神科での治療に抵抗がある者が多い。
よって、未治療者も含めるとそれを大幅に上まわるとされます。
(2)性差
女性が約9割と圧倒的に多い.
男性は全体の5 - 10%程度です。
(3)地域性
工業先進国に極端に多く見られます。
発展途上国、旧共産諸国などにはほとんど見られません。
(4)2002年の実態調査
女子学生の50人に1人が拒食症でした。
25人に1人が過食症で、10人に1人がその予備軍でした。
この10年間に拒食症は2倍、過食症は3倍に増加しているということです。
5:食行動症群と歯科医療
(1)口腔内の特徴
@嘔吐がある場合
耳下腺の腫脹と、手拳上の瘢痕(自己誘発性嘔吐によるもの)吐きダコが認められます。

(2)対処方法
@嘔吐による歯の酸蝕
フッ素塗布
歯磨きの励行
修復処置
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