お口大全 (お口の機能と病気と口腔ケア) All the Oral-functions and Care
mail:info@aofc-ydc.com

障がいと障がい者について

       
トップページ お口の働き お口の病気 摂食嚥下障害  お口から入る病気  口腔ケア 


障がいと障がい者 (Disability and Person with Disabilities)
1:障害について
 (1)障がいとは---国際生活機能分類(ICF:International Classification of Functioning, Disabilty and Health)
    「障がいとは、疾病、変調、傷害、精神的外傷、妊娠、老化、ストレス、先天的異常、遺伝的素質、個人的因子
     (性別・年齢・ライフスタイル・習慣・養育歴・ストレスの対処法・教育歴・職業・性格)から生じる、
     機能障害、活動の制約、参加の制約である」、と定義されています。

     さらに障害とは、治癒しないもので、これが病気と違う点だといいます。


 (2)障害者とは---障害者基本法(1975制定、2011改訂)
     障害者とは、身体障害知的障害精神障害発達障害を含む)その他の心身の機能の障害がある者であって、
     障害及び社会的障壁(事物、制度、慣行、観念等)により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける
     状態にある者をいう、と定義されています。


2:各種法令等による障がいの分類
   様々な法令や、学会によって色々な分類がなされています。

 (1)障害者基本法(1975制定、2011改訂)による分類
     身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)、その他の心身の機能の障害がある者であって、
     障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。


 (2)WHO-国際疾病分類第11回改訂版(2018年)
     (ICD-11:International Statistical Classification of Diseases and Related Health ProblemsI

     障がい者基本法では、精神障害の中に発達障害や認知症が含まれています。
     ICD-11では知的障害と発達障害を神経発達症群として扱っています。
      
     1.1 知的発達症    1.3 自閉スペクトラム症    1.4 発達性学習症    1.7 注意欠如多動症  

      


3:国際障害分類と国際生活機能分類
(1)国際障害分類 (ICIDH: International Classification of Impairments, Disabilities and Handicaps)     
     1980年、WHOにより定められた障がいの分類法です。
     障がいを、心身、能力、社会参加という3つのレベルに分類します。
     これは、疾病等によって生じた機能障害は、生活上の能力障害(能力低下)や社会的不利を伴うという考え方
     です。
     三つに分類される障害の内容は次のとおりです。

 @機能障害    
    心身の機能または構造の一時的または永続的な喪失や異常.    
    肢体不自由、視覚、聴覚、思考、情緒、感情などが正常に機能しない状態です。     
    治療的アプローチによって、対応します。  

 A能力障害(能力低下)
    機能障害に起因する能力の低下です。    
    食事、排泄、衣服の着脱などの身辺動作やコミュニケーションがうまくできない状態となります。     
    代償的アプローチによって対応します。  

 B社会的不利
    生活水準、社会活動への参加、社会的評価などが保障されない状態をいいます。     
    環境改善的アプローチによって対応します。

      


(2)国際生活機能分類(ICF : International Classification of Functioning, Disability and Health)
     2001年、 WHOによって定められた新しい障がいの分類法です。   
     1980年の三つの障害レベルに分類する国際障害分類の考え方は画期的なものとされました。
     しかしそれは、疾病/変調⇒機能障害(能力低下)⇒社会的不利、というように直線的に障害を捉える考え方で
     あり、それだけでは不十分であるということが問題となりました。

     こうした考え方に立って、医療、福祉、行政、障害当事者など各分野の関係者が参加して国際障害分類の改定作業
     が進められました。
     そして2001、世界保健機関(WHO)の第54回総会で採択されたのが国際生活機能分類(ICF)です。

     国際生活機能分類(ICF)の特徴は、改定前の分類の考え方をさらに積極的に推し進め、
     人間の生活に関連するすべての生活機能や生活能力に着目するものであり、
     人の生活機能や生活能力の障害を、次の三つの次元に分類します。
        @心身機能・身体構造  A活動  B参加 
     
     それらは、健康状態(変調または病気)と背景因子(個人因子と環境因子の二つ)とも関連する相互作用として
     捉えようというところにあります。

     要するに、障害の発生には個人のもつ心身の特徴だけではなく、環境の影響が大きいことにも着目をし、生活機能と
     生活能力のすべての構成要素に影響をおよぼす背景因子として、個人因子との関連で環境因子という観点を加え、
     各次元の要素が相互に関係し合うという考え方です。

     ICFは、人間の生活機能と障害についての分類法として、多数の組み合わせによって約1,500項目に分類することが
     できます。

     具体的には、以下のような目的でICFは活用されます。
       健康に関する状況、健康に影響する因子を深く理解する。

       健康に関する共通言語の確立で、さまざまな関係者間のコミュニケーションを共通化し、改善する。
     
       国、専門分野、サービス分野、立場、時期などの違いを超えたデータの記録・共有・比較・評価などへの活用。


      


 (補足)国際機能分類と国際生活機能分類

      


4:障がいの種類
 (1)身体障害
  @視覚障害
     視力が全く無い、もしくは日常生活や就労などの場で、不自由を強いられるほどに弱い障害です。
     全く見えない、文字がぼやけて読めない、物が半分しか見えないなど、さまざまです。
     また、特定の色が分かりにくい人もいらっしゃいます。
     しかし、色盲の方は障がい者とはなりません。

     詳細は、「視覚障害」へ


  A聴覚障害
     音が聞こえない、聞こえにくい障害です。

     詳細は、「聴覚障害」へ


  B肢体不自由
     手や足などのからだの一部、又は全部に障害があります。
     障害の内容はさまざまで、生まれつきの(先天性)障害、病気や事故による(後天性)障害など個人差があります。
     
     また、重度の肢体不自由と重度の知的障害をあわせ持ち常時介護が必要な障害が重度心身障害です。
     肢体不自由には、脳性まひ、脊髄損傷など全身に障害がおよぶものや、関節リウマチなど関節に障害がおよぶ
     ものなどがあります。

     脳性まひは、自分の思いとは関係なく、手や足、顔などが動く特徴があります。 

     詳細は、「運動障害」


  C 内部障害
     からだの内部、すなわち内蔵に障害がある場合です。

     心臓機能障害、腎臓機能障害、膀胱・直腸機能障害、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能障害、
     肝臓機能障害、呼吸器機能障害、小腸機能障害


 (2)知的障害
     脳に障害が生じ、読み書き、計算など知的機能に困難があり、社会生活にうまく適応できない場合で、
     発達期(おおむね18歳まで)に生じたものをいいます。
     知的障害のある方の多くは、言葉をうまく使えなかったり、ものごとの理解に時間を有する場合などがあります。

     主な特徴の例
       読み書きや計算が苦手
       自分の意見などを伝えるのが苦手
       物事に対して継続して取り組めないなど、集中力が続かない
       ひとつの行動に執着したり、同じ質問を繰り返す
       考えることがゆっくりしていて、状況を判断して予想することなどが苦手

     詳細は、「知的障害」へ


 (3)精神障害
     精神の病気のため、日常生活や社会生活がしずらくなることをいいます。
     多くの場合、適切な服薬治療や周囲の配慮があれば症状が安定し回復に向かいますが、症状が残ったり、
     再発したりすることもあります。

  @統合失調症
     幻聴や幻覚、感情の障害などが多様な精神症状が特徴です。
     現実を認識する能力が妨げられ、判断が出来にくく、対人関係が難しくなることがあります。

  A気分(感情)障害
     気分の高揚、過活動(躁状態)と、落ち込み(うつ状態)の波を繰り返す精神疾患です。

  B不安症
     不安が強く、行動や心理的障害をもたらす症状の総称です。

    詳細は、「精神障害」へ


 (4)発達障害
     生まれつきの脳機能の発達のアンバランスさ・偏りと、その人が過ごす環境や周囲の人とのかかわりのミスマッチ
     から、社会生活に困難が発生する脳機能障害です。

  @自閉スペクトラム症
     コミュニケーションや言語に関する症状があり、常同行動を示すといった様々な状態を連続体(スペクトラム)
     として包含する病気です。

  A学習障害(LD:Lerning Disorder)
     知的発達に遅れは無いですが、読み書き、計算など特定の能力に遅れが見られます。

  B注意欠如多動症(ADHD:Attention-deficit hyperactivity disorder)
     多動性(過活動)や衝動性、または不注意を症状の特徴とする神経発達症もしくは行動障害です。


 (*)難病
     難病とは、2015年施行の難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)により次のとおり定義されています。
     ただし、がんや精神疾患、感染症、アレルギー疾患等、個別の施策体系があるものは含まれていません。

       1;発病の機構が明らかでない疾病です。
       2;治療方法が確立していない、希少な疾病です。
       3;当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とすることとなるものです。

     現在338の病気が難病指定されています。 厚労省:指定難病


4:疫学
 (1)本邦における障がい者数
  @2015年(平成27年版) 障害者白書 厚生労働省
     身体障害者数−393.7万人    
     知的障害者数− 74.1万人    
     精神障害者数−320.1万人
      
     総数 787.9万人 全国民の約5%に相当します。


 (2)年齢階層別障害者数の推移

  @身体障害児・者(在宅)
     身体障害者:在宅者---厚生労働省 「生活のしづらさなどに関する調査」 (2016年)

      
      身体障害は、65歳以上の高齢者で著明に増加しています。


  A知的障害児・者(在宅)
     知的障害者:在宅者---厚生労働省「生活のしづらさなどに関する調査」 (2016年)

      


  B精神障害者・外来
     精神障害者:外来患者---厚生労働省「患者調査」(2017年)

      


5:障害と受容   
    障害者の受容過程における心理は、障害による人間としての価値の喪失から、価値の発見に至る心理反応の
    一部です。 
    不幸で痛ましい事態に対する人の心理反応と同じように、障害を受容する過程も同じような健康な心理反応である
    ことを認識する必要があります。

 (1)親の受容--Drotar et al 1975
     障害受容の過程は混乱から回復までの段階的な過程として説明されます。
     この図では先天性奇形を持つ子どもの誕生に対してその親の反応を、ショック、否認、悲しみと怒り、適応、再起の
     5段階に分類しています。

  @ショック
  A否認
  B悲しみと怒り
  C適応
  D再起
 

      


 (2)死の受容 本人の受容 (アメリカの精神科医 エリザベス・キューブラ・ロスのモデル)  

  第一段階 【否認と隔離】
 
  第二段階 【怒り】  

  第三段階 【取引】    
     延命と交換に神に生涯をささげる  

  第四段階 【抑うつ】    
     怒りを吐き尽くし、嘆きも悲しみもし終え、患者は近づく自分の終焉を見つめる段階  

  第五段階 【受容】

      


補足:ICD11とDSM-5
(1)ICD11
  ICD11(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems)
  疾病及び関連保健問題の国際統計分類
  作成機関=WHO  作成年=2018年
  医学、行政機関で使用

  ICDは、精神疾患のみではなく、体の病気なども含め疾患全般の分類を記載しており、DSMと同じく病院などでの
  診断時に用いられています。 
  精神疾患の分類はDSMとほぼ変わりませんが、なかには、分類方法や診断名が違うものもあります。
  厚生労働省のサイトに載っている公式な診断や報告においては、基本的にICDが使われています。


(2)DSM-5
  DSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)
  精神疾患の診断・統計マニュアル
  作成機関=米国精神医学会  作成年=2013年
  医学分野で使用

  DSM-5には、精神疾患の診断名と診断基準が記載されています。 
  具体的には、まず、精神疾患が22のカテゴリーに分けられています。 
  そして、22の各カテゴリー内に、さらに小さな分類があります。


参考資料 

 『ICD-11・DSM-5準拠 新・臨床家のための精神医学ガイドブック


 『スペシャルニーズデンティストリー障害者歯科 第2版』


 『DSM-5診断面接ポケットマニュアル


 『歯医者に聞きたい 障がいのある方の歯と口の問題と対応法


 『歯科医院が関わっていくための障害児者の診かたと口腔管理


 『歯科衛生士講座 障害者歯科学 第2版 』


 『障害のある子が将来にわたって受けられるサービスのすべて


 『まんがと図解でわかる障害のある子の将来のお金と生活


 『ダウン症の子をもつ税理士が書いた 障害のある子の「親なきあと」対策


 『障害者総合支援法 第2版


 『障害のある子が「親なき後」も幸せに暮らせる本 ダウン症の娘をもつ「相続のプロ」が明かす財産管理のしくみ






 お口大全TOPへ

copyrightc 2021 YDC all rights reserved


mail:mail:info@aofc-ydc.com