サリバテスト : だ液検査から始める新しい虫歯予防 |

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はじめに |
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虫歯の発症には、次の3大要因が大きく関与しています。 @細菌 : ミュータンス菌、乳酸菌など A基質 : 砂糖、炭水化物 B宿主 : 歯の質、歯並び、唾液の性状、全身疾患など
従って、これらのいづれかをコトロールすれば虫歯を予防することが出来ます。 そのためには、どの項目に弱点があるかを調べる必要があります。
すなわち、唾液検査(サリバテスト)を行うことで、虫歯に関する原因因子を調査し、現在の虫歯の活動状況や、今後虫歯に
罹患する危険性などを推測する目安とし、それに対する対策を講じます。
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唾液検査の実施手順 |
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サリバテスト
問診、唾液検査、口腔内写真撮影
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問題点の把握
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虫歯予防のプログラム作成
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検査をお勧めする対象者 |
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虫歯予防のための唾液検査は、特に次の様な方にお勧めします。
@5歳以上の小児 乳歯から永久歯に交換するする時期に虫歯は多発します。 この時に、萌出したばかりの幼弱永久歯の虫歯予防を行うことが将来的に重要になります。
A妊娠中の女性 ご自分の虫歯予防に加えて、出産されるお子様の虫歯予防は、妊娠中から進めることがより効果的です。
B歯周病の進行した成人 歯周病により歯根の露出が進行した方は、歯根面う蝕が発生し易くなります。
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虫歯の発症の3大要因
@細菌 : ミュータンス菌、乳酸菌など A基質 : 砂糖、炭水化物 B宿主 : 歯の質、歯並び、唾液の性状、全身疾患など 
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1:唾液検査を受けられる方へ |
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唾液検査(サリバテスト)は、虫歯に関する原因因子を調査し、現在の虫歯の活動状況や、 今後虫歯に罹患する危険性などを推測して、虫歯予防のための対策を講 じるために行う検査です。
実施する検査項目 臨床診査 DMF歯数診査、プラークスコア診査、飲食回数、フッ素の使用状況、 全身疾患などなどの問診等 臨床検査 唾液量 唾液緩衝能 ミュータンス菌数 乳酸菌数 その他 口腔内写真撮影
検査全体の流れ 申込書兼問診票の記載 検査手順説明(説明書1=本紙) │ ↓ 検査(唾液検査、口腔内写真)
↓
↓
結果説明分析) 詳細説明書(説明書2) │ ↓ プログラム開始
検査に際しての注意事項 検査を行う前には次のことを注意して下さい @抗生剤を服用している方は、検査事前にお申し出下さい。 A検査前12時間以内に、アルコールを含んだ殺菌剤配合の洗口液で口をゆすがないでください。 B検査前1時間は飲食・喫煙・歯磨きをしないでください。 C検査前に運動をすると唾液の分泌が減りますので、なるべくさけて下さい。
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2:唾液検査を受けられた方へ |
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実施した検査の内容をご理解頂くために、以下に検査項目の説明を致します。 これをもとにして、医療者側は、患者側の口腔内にどんな現象が起こっているのかを把握し、 その結果を説明して、具体的な予防プログラムを作成・提出を致します。
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1:臨床診査 |
(1)DMF歯数
@意義 過去のう蝕の罹患状況や、治療経験を表したものです。 一般的にこの指数が高いものほどう蝕活動性も高い(すなわち虫歯になりやすい)といえます。 D=decade ・・・虫歯の本数 M=missing ・・・喪失歯(抜歯等でなくなった歯) F=filling ・・・治療が行われている歯
A評価方法 Class 0=0本 Class 1=年齢層の平均より良い Class 2=年齢層の平均程度 Class 3=年齢層の平均より悪い
DMF歯数は一般的に加齢に伴い増加し、年齢層により異なるため別表グラフより算出します。 しかし、小児の場合には便宜的に以下の基準を用います。 混合・永久歯列期(6歳−15歳) Class 0=0本 Class 1=1−3本 Class 2=4−9本 Class 3=10本以上
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参考 |
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1歳6ヶ月 |
平均DMF歯数=0.15本 |
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3歳 |
平均DMF歯数=1.99本 |
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12歳 |
平均DMF歯数=2.44本 |
(2)プラークスコア
@意義 プラーク指数は、口腔内の清掃状態を示す指標であるとともに、う蝕、歯周病の発症を 予知するのにも有用 な指数です。
A測定方法 オレリ−(O'Leary's)のプラ−ク指数 プラークの付着している歯面の合計 / 被検歯面数 ×100=[%]
B評価方法 Class 0=15%未満 Class 1=15−30% Class 2=30−50% Class 3=50%以上
(3)飲食回数
@意義 食事回数の増加(間食)は継続的なpHの低下を持続さえ、その結果脱灰時間が延長してしまうため、 う蝕の危険性は増加します。 通常の食事+間食(喫茶等も含む)の回数で表す。
A評価方法 Class 0=3回以下 Class 1=5回以下 Class 2=7回以下 Class 3=8回以上
(4)フッ素の使用状況
@意義 フッ素は、定期的に繰り返し塗布することで歯質を強くし、虫歯になりにくくします。 たとえ低濃度であっても、頻繁にフッ化物を使用することが重要であるといえます。
A評価方法 Class 0=診療室で定期的+家庭で毎日 Class 1=家庭で毎日フッ素含有歯磨剤使用 Class 2=来院時のみ使用 Class 3=使用していない
(5)関連全身疾患
@意義 いくつかの全身疾患や状態は直接、あるいは間接的にう蝕の発症に影響を及ぼします。 例えば唾液の生成やその組成に影響を与えたり、う蝕を発生させる食事内容に変化を及ぼしたりします。 また、薬剤 の長期服用をもたらします。 乳幼児期における疾患や状態がエナメル質形成に影響していることもあります。 その他の問題や心身障害も考慮に入れなければなりません。 例えば、視力が悪いと口腔衛生を良好に保 とうとするときに影響が出るでしょう。 また心身障害がある場合は、歯磨きが適切に行われにくいと言えます。
A評価方法 Class 0=疾患なし う蝕に関連のある重要な全身疾患の兆候は見られない。患者は「健康」である。 Class 1=軽度 う蝕の発症に間接的に影響を与える全身疾患やカリエスリスクを高めると考えられる状態。 例:糖尿病、視力低下、運動困難。 Class 2=重度 長期間寝たきり状態や唾液分泌に影響を与える薬剤の継続的な使用など。 例:自己免疫疾患(シェーグレン症候群など) 唾液分泌の抑制をきたす薬剤の服用 頭頸部への放射線治療
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2:臨床検査 |
(1)唾液量 @意義 唾液には各種の抗う蝕作用(緩衝作用、洗浄作用、カルシウムイオンの供給、等)があます。 その分泌量の多寡が虫歯になりやすいかどうかにも関係します。 唾液腺は15歳前後で成熟し、それまでは唾液量が増加していきます。 加齢による唾液量の減少はないといわれています。 しかし、人間の体は加齢に従い全身疾患、薬剤服用、咀嚼機能の低下等の因子が付加します。 その結果、年齢がいくにしたがって、実際には唾液量が減少しているようです。
A測定方法 5分間パラフィンワックスを噛み、出てきた唾液を容器へ吐き出して分泌された唾液の総量を測定します。
B評価方法 Class 0=10ml以上 (2.0ml/分以上) Class 1=6ml以上 −10ml未満 (1.2−2.0ml/分) Class 2=3.5ml以上−6ml未満 (0.7−1.2ml/分) Class 3=3.5ml未満 (0.7ml/分未満)
(2)唾液緩衝能
@意義 緩衝能が高ければ、脱灰時間が短く再石灰化の時間が長くなります。 逆に緩衝能が低ければ、脱灰時間が長いだけでなく、再石灰化の時間がなくなってしまいます。 そのため緩衝の低い口腔ではう蝕が発症しやすいと言えます。 一般的に、唾液量が少ないと、緩衝能も弱い傾向にあります。
A測定方法 採取した唾液をスポイトで取り、試験用ストリップス(dentobuffer Strip)に1滴落とす。 5分後に色の変化で唾液緩衝能を見ます。
B評価方法 Class 0=即青(pH≧≧6.0) Class 1=青 (pH≧6.0) Class 2=緑 (4.5≦pH≦5.5) Class 3=黄 (pH≦4.0)
(3)ミュータンス菌数 (SM菌数)
@意義 SM菌は以下の特性により、う蝕発生にもっと強く関与する細菌です。 1:強い歯面への付着能 2:強い酸産生能 3:酸のデンタルプラークでの停滞 4:持続的な酸産生能
A測定方法 舌の上でストリップを数回、回転させ、培養試験管に入れて培養器(35〜37℃)で 2日間培養してミュータンス菌の数を調べます。
B評価方法 SM菌数 Class 0= 0 (CFU/ml) Class 1= 10万 (CFU/ml) Class 2= 50万 (CFU/ml)
Class 3= 100万 (CFU/ml)
(4)乳酸菌数 (LB菌数)
@意義 LB菌は食習慣や齲窩、不良修復物にかかわるといわれています。 う窩や不良修復物が1ヶ所でも存在すると、その数にかかわらずLB菌の増殖に有利です。 また、飲食回数の多い人でう窩や不適合補綴物の存在下においては、LB菌が増殖しやくなります。 唾液量との関連については、唾液の作用(抗菌作用・浄化作用など)がLB菌の菌数と関係しています。
A測定方法 採取した唾液をスライドの寒天培地上にかける。 培養試験管に寒天培地スライドを入れて、培養器(35〜37℃)で4日間培養してLB菌の数を調べます。
B評価方法 LB菌数 Class 0= 1000 (CFU/ml) Class 1= 1万 (CFU/ml) Class 2= 10万 (CFU/ml) Class 3= 100万 (CFU/ml)
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