1:医療用手袋とは
(1)医療従事者が手袋を着用する目的
医療従事者が手袋を着用する目的には以下のものがあります。
血液や体液、注射針やメスなどを介した感染・汚染リスクから医療従事者を守ること。
医療従事者の手指を介して患者に汚染物質が及ぶのを防ぐこと。
医療現場の施設や物品が汚染されるリスクを減らすこと。
(2)用途
手袋は医療現場での用途別に、手術用、検査・検診用、その他の作業用の3つに大別できます。
@手術用手袋
滅菌袋で密閉するなど適切な管理が必要なため管理医療機器とされています。
完全に滅菌が為されています。
製造・販売には第三者認証機関の認証が必要です。
A検査・検診用手袋
一般医療機器の一つとして届出制がとられている物もあります。
検査・検診用手袋には滅菌・非滅菌の両タイプがあり、検査や治療の内容に応じて使い分けが必要です。
手術用手袋と同じく再使用が禁じられています。
Bその他の作業用
医療用器具の洗浄を行う時、医療廃棄物の処理を行う時、などの衛生管理業務に使われます。
滅菌されていないのが普通で、粘膜や創部に触れる作業には使えません。
2:分類
(1)材質による分類
代表的な材質としては、天然ゴムラテックス、ニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、の4つが挙げられます。
@天然ゴムラテックス
ゴムノキ類から採取した樹液を加工して作られます。
伸縮性に優れ、手指にフィットします。
ラテックスアレルギーのリスクがあります。

Aニトリル
合成ゴムであるニトリルは、ラテックスグローブによるアレルギーを防ぐための代替品として近年大きく需要を
伸ばしています。
やや、高価です。
天然ゴムではないのでラテックスアレルギーの原因にはなりません。
しかし、成形時に添加される薬品による遅発性アレルギー反応を起こすことがあります。

Bポリ塩化ビニル
一般にプラスチックグローブやビニール手袋と呼ばれるもので、一般的な衛生管理業務に使われます。

Cポリエチレン
家庭で普及しているポリエチレングローブは、食品の配膳などに使う以外、医療現場での需要は比較的少なめです。

補足:ラテックスアレルギー
医療用手袋やカテーテルなどに使用される天然ゴムに含まれるラテックスによって引き起こされるアレルギー反応です。
アトピー患者や二分脊椎・先天的泌尿器系異常のある患者、手術を頻繁に受けている患者などにも多く見られます。
発症頻度は2.8〜30%で、救急医療の現場ではいまラテックスをほとんど使わない様になりつつあります

(2)JIS規格(日本工業規格)に基づいた分類
医療用手袋はわずかな破損も汚染リスクにつながるため、品質確保が非常に重要です。
日本ではJIS規格(日本工業規格)に基づいた製造が行われています。
手袋の用途に応じて5つのJIS規格が設けられており、それぞれ寸法や伸び、ピンホール(穴あき)などの不良品率や
耐久性について品質水準が決められています。
@使い捨て手術用ゴム手袋 (JIS T9107)
1種:主に天然ゴムラテックス製。
2種:主にニトリルゴムラテックスなど。
A使い捨て歯科用ゴム手袋 (JIS T9113)
1種:天然ゴムラテックスを主材料とするもの。
2種:合成ゴムラテックス、天然ゴム溶液または合成ゴム溶液を主材料とするもの。
B使い捨て歯科用ビニル手袋 (JIS T9114)
塩化ビニル樹脂及び可塑剤を主材料とするもの
C使い捨て検査・検診用ゴム手袋 (JIS T9115)
1種:天然ゴムラテックスを主材料とするもの。
2種:合成ゴムラテックス、天然ゴム溶液または合成ゴム溶液を主材料とするもの。
D使い捨て検査・検診用ビニル手袋 (JIS T9116)
塩化ビニル樹脂及び可塑剤を主材料とするもの。
(3)医療機器か否かの分類
手袋は医療機器に該当するものと、該当しないものがあります。
医療機器に該当する医療用手袋を輸入販売する場合には、輸入者が医療機器製造販売業許可を取得し、製品の
品質や市場への流通に関する責任を持つ必要があります。
また、輸入した手袋の製造作業、保管は、医療機器製造業登録を取得した場所(倉庫)にて対応しなくてはいけません。
さらに、手袋を病院等に販売するには、販売する業者が医療機器販売業を取得する必要があります。
クラスTの場合
製造販売業:第三種医療機器製造販売業
製造業:必要
販売業:不要(特定保守管理の医療機器を除く)
クラスUの場合
製造販売業:第二種医療機器製造販売業
製造業:必要
販売業:必要
@医療機器に該当する手袋
手術用手袋(クラス分類:クラスU)
検査・検診用手袋(クラス分類:クラスT)
歯科用手袋(クラス分類:クラスT)
A医療機器に該当しない手袋
多用途手袋:器具の洗浄や清掃時などに使用する、再使用可能な指先から前腕くらいまで覆える厚手の手袋です。
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