インフルエンザ菌感染症 (infection with Haemophilus influenzae) |
1:インフルエンザ菌感染症
(1)インフルエンザ菌
@インフルエンザ菌
パスツレラ科ヘモフィルス属のグラム陰性短桿菌です。
主に呼吸器や中耳に感染する細菌の1種です。
ヘモフィルス属の細菌の多くは、小児や成人の上気道に存在し、まれに感染症を引き起こします。
1890年代のインフルエンザの大流行の際に、原因菌として分離されたためインフルエンザ菌という名称が付けられました。
その後否定されたため名称だけが残ることとなりました。
ウイルス性のインフルエンザとは全くの別物です。
参照:「インフルエンザ (ウイルス性感染症)」

A病原性
非莢膜株と莢膜株とで大きく異なる病原性を持っています。

@莢膜-----ほぼ均一な厚みで周囲との境界が明瞭。
A粘液層---不定形で境界不明瞭
Bバイオフィルム--物体表面に層を形成し、複数の菌が内部で生存。
非莢膜株
健康なヒト、特に乳幼児の上気道(咽頭、鼻腔)にも常在しています。
感染症としては中耳炎、副鼻腔炎、気管支炎、肺炎などの気道感染症が多い。
小児では、気道感染症の3大起炎菌のひとつ(他は肺炎球菌、モラクセラ・カタラーリス)とされています。
莢膜株
上気道に保菌されていることがあります。
しかし気道感染症を起こすことは少なく、直接血流中に侵入して感染症を起こすものと考えられています。
莢膜株の感染症ではほとんどの場合b型が起炎菌です。
敗血症、髄膜炎、結膜炎、急性喉頭蓋炎、関節炎などを起こす。
b型以外の莢膜株が人に感染症を起こすことは稀です。
Hibワクチン(ヒブワクチン)の普及によりb型以外による感染症が目立つようになってきています。
(2)インフルエンザ菌感染症
中耳炎, 副鼻腔炎, 肺炎などの呼吸器系感染症の原因菌です。
菌血症や細菌性髄膜炎等の侵襲性インフルエンザ菌感染症(IHD)を引き起こすことでも知られています。
2:感染様式
(1)感染経路
飛沫感染、接触感染で広がります。
くしゃみ、せき、接触によって広がります。
3:疫学
(1)感染するリスクが高いのは以下のような人です。
小児(特に男児) 黒人ネイティブアメリカン
デイケア施設に通っているまたは施設で働いている人
過密状態で生活している人
免疫不全疾患の人、 脾臓がない人、および 鎌状赤血球症の人
4:症状
(1)主症状
中耳炎, 副鼻腔炎, 肺炎などの呼吸器系感染症状が発症します。
小児において、インフルエンザ菌b型(Hib)は血流によって拡散し( 菌血症)、関節、骨、肺、顔面や首の皮膚、
眼、尿路、その他の臓器に感染します。
(2)重症化例
インフルエンザ菌は次の2種類の重症感染症を引き起こす場合があり、しばしば死に至ります。
@髄膜炎
できるだけ速やかに治療する必要があります。
抗菌薬(通常はセフトリアキソンまたはセフォタキシム)の静脈投与をおこないます。
コルチコステロイドが脳の損傷を予防するために役立つ可能性があります。
A喉頭蓋炎(喉頭の上にある弁状の組織への感染)
一部の菌株は小児の中耳、小児と成人の副鼻腔、成人の肺に感染症を引き起こしますが、特に
慢性閉塞性肺疾患(COPD)や エイズの患者には容易に感染します。
5:診断
(1)検査
血液や他の体液のサンプルの培養検査を行います。
ときに髄液サンプル(腰椎穿刺で採取)の検査をします。
6:治療
(1)抗菌薬
インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)感染症は抗菌薬で治療します。
どの抗菌薬を使用するかは、感染症の重症度と感受性試験の結果に基づいて決定します。
重篤な感染症を患っている乳児は、抗菌薬の投与開始から24時間は隔離されます(空気感染隔離)。
これは汚染された飛沫が空気中に飛び散って他の人に感染するのを防ぐためです。
ペニシリン系抗生物質のアンピシリンなどが有効です。
アモキシシリン/クラブラン酸、アジスロマイシン、 セファロスポリン系、 フルオロキノロン系、クラリスロマイシンなどの
薬が使用されます。
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インフルエンザ菌感染症と口腔ケア |
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参考資料 |
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