1:マイコプラズマ感染症
(1)マイコプラズマとは
マイコプラズマは、風邪、肺炎、気管支炎などを引き起こす細菌の一つです。
しかし、一般の細菌とは少し構造が異なります。
マイコプラズマは現在知られている細菌の中では最小のもので100ナノメートル位です。
一般の細菌は細胞膜と細胞壁の2種類で体が囲まれていますが、マイコプラズマは細胞壁を欠き、細胞膜のみ
で囲まれています。
この構造の違いにより、他の細菌とは区別されており、効果のある抗生物質も特別なものとなるのです。
病原菌であるものが多く、」関節症をはじめ、肺炎などの原因となります。


『病気がみえる vol.6 免疫・膠原病・感染症』 から引用
(2)マイコプラズマ感染症
病原体は、粘膜表面の細胞外で増殖する。
増殖の結果、気管、気管支、細気管支、肺胞などの気道粘膜上皮を破壊します。
特に気管支、細気管支の繊毛上皮が顕著に破壊され、粘膜の剥離、潰瘍の形成がみられます。
病原体は熱に弱く界面活性剤により失活します。

2:感染様式
(1)感染経路
飛沫感染と濃厚接触による接触感染で感染します。
飛沫感染---口や鼻から感染し、咳や痰、唾液で人にうつります。
接触感染---鼻やのどからの分泌物に触れることで感染します。
(2)潜伏期間
潜伏期は1 - 4週間程度(通常は、2 - 3週間)。
病原体が気道粘液(痰)に排出されるのは発症前2?8日から起こります。
臨床症状発現時に最大となり、高いレベルの排出が1週間程度続きます。
徐々に減少しながら4?6週間以上病原体の排出は継続します。
3:疫学
オリンピックが行われる年に流行する(4年に1度流行する)傾向があるとしてオリンピック熱とも呼ばれていました。
しかし、近年はこの傾向が薄れつつあります。
また喫煙者は重症化しやすいことも報告されています。
4:症状
(1)マイコプラズマ肺炎
マイコプラズマ感染者の3〜5%の方が肺炎などを発症します。
喀痰を伴わない「乾いた咳」(dry cough、乾性咳嗽)をすることが多いとされています。
発熱は38.5℃を越えることもあります。
頭痛、咽頭痛、刺激性の咳(乾性咳嗽)、倦怠感などのいわゆる感冒様症状を呈する。
(2)腸炎
消化管へのウイルス感染によって嘔吐、下痢、腹痛などの症状を来たすこともあります。
最近では、大人が感染して重症化するケースが急増しています。
また、症状が呼吸器を中心としたものから消化器症状を併発、もしくは消化器症状を中心としたものへと移り
変わってきている傾向がある様です。
(3)マイコプラズマ性感染症
性交渉を感染経路に、女性器のマイコプラズマ感染症が増えています。
実際、クラミジと淋菌と同様、子宮頚管炎や尿道炎の原因菌としてマイコプラズマによる感染が確認された
患者数が増加しています。
性感染症のマイコプラズマは肺炎のマイコプラズマとは別の菌です。
5:診断
(1)検査
マイコプラズマは、RSウイルスなどの風邪や気管支炎、肺炎を起こすウイルスや細菌と症状が似ており、
区別が難しいため、迅速診断キットを用いて判断します。
マイコプラズマの検査は、検査の材料をのどから綿棒でぬぐい取るだけで簡単に行うことが可能です。
検査の結果も15分くらいでわかります。
性病検査キット【 マイコプラズマ検査キット(のど)/男女共通】
聴診しても、肺炎を疑う音に乏しいため、肺炎かどうかは胸部X線で診断する場合もあります。
詳細は、「性行為感染症の検査」へ
(2)鑑別診断
鑑別診断が必要な疾患は、クラミジア肺炎、オウム病、肺結核などです。
6:治療
マクロライド系抗生物質、テトラサイクリン系抗生物質がよく用いられます。
しかし、近年マクロライド系の抗生物質は効きにくくなっています。
これは、抗生物質の乱用、抗生物質が適切に使用されてこなかったことが背景にあります。
そのため、ケトライド系、リンコマイシン系、ニューキノロン系薬剤も有効です。
いずれも7日〜10日間の投与がおこなわれます。
マイコプラズマは細胞壁を持たないため、β-ラクタム系(ペニシリン系、セフェム系)の薬剤は効果が有りません。
マクロライド系抗生物質

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