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淋菌感染症ついて

   

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淋菌感染症 (infection with Neisseria gonorrhoeae)
1:淋菌感染症とは
 (1)淋菌とは    
     淋菌(ナイセリア ゴノレエ:Neisseria gonorrhoeae)はナイセリア属のグラム陰性双球菌です。
     ナイセリア属の菌は全部で11種類あり、その内病原性のものは、この淋菌髄膜炎菌のみです。

     淋菌は淋病、角結膜炎、咽頭炎などの原因となります。
     その他の9種類のナイセリア菌は全て口腔内に存在する常在菌(日本人の5?10%に常在)です。

     口腔内常在菌であるナイセリアの働きはよく分かっていませんが、、口腔常在菌が飲酒由来のア ルコールから
     アセトアルデヒドを産生し、口腔がんリスクを高めているという報告もあります。

     参考資料:「口腔内細菌によるアセトアルデヒド産生その産生機構と代謝的特徴の解明」 東北大学歯学部

     淋菌は粘膜から離れると数時間で感染性を失います。
     日光、乾燥や温度の変化、消毒剤で簡単に死滅するのです。
        
     淋菌の大きさは0.6μm〜1.0μmで線毛のある型と線毛のない型に分けられます。
     線毛は電子顕微鏡で確認できますが、光学顕微鏡では確認できないほど極細の構造をしています。
     生きている淋菌は、この線毛を活発に動かし粘膜上皮に付着、粘膜下に浸入するものと思われます。
      
        Wikipedia  淋菌の蛍光染色写真


 (2)淋菌感染症とは
     男性は急性尿道炎として発症するのが一般的で、放置すると前立腺炎、精巣上体炎となります。
     後遺症として尿道狭窄が起こります。
 
     女性は子宮頚管炎や尿道炎を起こしますが、自覚症状のない場合が多く注意が必要です。
     感染が上行すると子宮内膜炎、卵管炎等の骨盤内炎症性疾患を起こし、発熱、下腹痛を来します。
     後遺症として不妊症が起きる可能性もあります。
 
     その他、咽頭や直腸などへの感染や産道感染による新生児結膜炎などもあります。

        日本性感染症学会 「性感染症 診断・治療 ガイドライン 2016」から引用

     淋菌の診断が下った場合の性器クラミジア感染症と同時感染は20-30%であるため、その場合クラミジアの
     検査も必須とされます。


 (3)淋菌感染で起こる病気
   @尿道感染】淋病性尿道炎
      女性がかかる事もありますが、男性の患者数が多いのが淋病性尿道炎です。
      淋菌が尿道に感染することで発症し、感染原因となる性行為から約1週間程度で発症します。
      男性の場合、これを放置すると、尿道から淋菌が精巣上体へと進み精巣上体炎を引き起こすこともあります。

   A女性器感染:淋菌性子宮頸管炎
      女性に起こる病気としては淋菌性子宮頸管炎が挙げられます。
      淋菌による子宮頸管の炎症で、自覚症状が無い場合も多い病気です。
      進行すると卵管炎や卵巣炎を発症します。
      これらの病気にかかると妊娠し難くなるため不妊の原因ともされています。

   B咽頭感染:淋菌性咽頭炎
      オーラルセックス等によって淋菌が咽喉に感染した場合に起こります。
      無症状の場合が多く、風邪と間違えられやすいのが特徴です。
      淋菌性咽頭炎が確認された場合、パートナーが性器に淋菌感染を起こしている場合も多いです。

   C眼部感染:淋菌性結膜炎
      淋菌が眼に感染することで起こる淋菌性結膜炎は、母子感染で最も起こりやすい病気です。
      産道で新生児が感染した場合、新生児結膜炎と診断されます。
      
        Wikipedia 「淋菌性眼炎」

      大人の場合、基本的に片目のみ症状が現れ、新生児がかかると両目に発症するのが特徴です。
      抵抗力の弱い新生児の場合、重症化すると失明する可能性もあります。
      成人で重症化すると、化膿性結膜炎や角膜の潰瘍、腫瘍、穿孔の他、全眼球炎を引き起こす可能性もありす。

   D直腸感染:淋菌性直腸炎
      アナルセックス等によって淋菌が直腸に感染して起こります。
      激しい痛みが特徴です。
      炎症が強い間は、排便の度に激痛に襲われることもあり、強い痛みから病気を自覚し比較的早期発見されます。

   E男性器感染:精巣上体炎
      精巣の上部にある精巣上体に淋菌が感染して起こる精巣上体炎は、高熱が出て精巣上体が腫れあがります。
      精巣上体炎を放置すると、尿道が狭くなる尿道狭窄症を引き起こし男性不妊の原因となることも。
      精巣上体炎は発熱や悪寒戦慄、白血球増多症などを伴う場合が多いため、発症後すぐに病気に気付き検査や
      治療を受けるケースが多いです。

   F全身感染:播種性淋菌感染症(DGI:disseminated gonococcal infection,)
      稀に淋菌が血流にのって巡り、皮膚や間接に感染しておこる播種性淋菌感染症という病気です。
      軽い発熱や関節痛、末端の膿疱性皮膚病変などが主な症状です。
      重症化すると心膜炎、心内膜炎、髄膜炎、肝周囲炎などを引き起こすこともあります。
      血液や心臓の感染症は治療で比較的早期に完治できます。
      関節炎は治療に長い時間がかかる場合もあります。


2:感染様式
 (1)感染経路
     性行為により感染します。
     淋菌は弱い菌で、粘膜から離れると数時間で感染性を失い、日光や乾燥、温度変化、消毒剤で死滅します
     そのため、性交や性交類似行為以外によって感染するのはまれとされています。

     ただし、分娩時に産道感染で母子感染を起こすことがあります
     さらに、手指やタオルからの感染が疑われる報告もされています。
     1回の性行為による感染率は約30%と高く、性器クラミジア感染症と合併す瑠場合が散見されます。


 (2)潜伏期間
     感染後2日〜7日と、感染してからすぐに症状が出るケースが多いようです。
     また、クラミジアは淋病と比べると潜伏期間が長く、感染後1?3週間で発症すると言われています。


3:疫学
 (1)感染者数 
     2002年(平成14年)をピークに減少傾向にあります。
     しかし、抗菌剤に対する耐性菌が増えており、未だ未だ注意を要する性感染症です。
     まt、淋菌感染によりHIV の感染が容易になると報告されており、その意味でも重要な疾患です。

       厚労省 「性感染症報告数」 から作図


 (2)性差など
     女性の数が男性より極端に少数です。
     淋病に感染した女性の8割は無症状のケースが多く、受診の機会が少ないことも要因の一つと考えられます。


4:症状
   男性は主として淋菌性尿道炎を呈し、女性は子宮頚管炎を呈します。

 (1)男性の症状
     尿道から黄白色の粘り気がある膿が大量にでる
     尿道のかゆみや不快感
     尿道が熱をもつ
     排尿痛
     副睾丸(精巣上体)の腫れ
     軽い発熱

      
         副睾丸(精巣上体)


 (2)女性の症状
     おりものが増える
     おりものが緑黄色になる
     下腹部の痛み
     性交痛
     不正出血
     外陰部の腫れや痒み
     頻尿や排尿痛


 (3)男女とも喉に感染した場合
     咽喉に淋菌が感染した場合、以下のような症状が起こることがあります。

     喉の痛み
     喉の腫れ
     発熱


 (4)男女とも直腸に淋菌が感染した場合
     直腸に淋菌が感染した場合、以下のような症状が起こることがあります。

     肛門のかゆみや不快感
     アナルセックス時の痛み
     激しい腹痛
     下痢や血便


 (5)男女とも眼に感染した場合
     淋菌が眼に感染した場合、症状が出やすく急速に重症化しやすいのが特徴です。

     まぶたの腫れ
     白目がゼリー状に盛り上がる
     膿が出る

       「性感染症 診断・治療 ガイドライン 2016」 から引用


5:検査・診断
 (1)検査
     グラム染色で淋菌の診断が得られる事もあります。
     検査には病院のほか、検査キットが販売されています。
     保健所が無料で行っている場合もあります。

     詳細は、「性行為感染症の検査」


 (2)診断
     感染している女性のうち淋菌を確認できるのは60%程度で分かります。
     男性の感染者の場合は、陰茎からの分泌物サンプルを調べれば90%以上で診断が付きます。

     淋菌感染者の20-30%がクラミジアの感染を合併しており、クラミジアの検査も必須とされます。


6:治療
 (1)通常の治療
     抗生物質が使われるが耐性化が激しい。
     ペニシリン系には90%以上が、テトラサイクリン系ニューキロノン系には70-80%が耐性を持っており、
     第三世代のセファロスポリン系でも30-50%が耐性を持ち、セフィキシムでも無効例が報告されるようになっています。


 (2)耐性菌
     無害のナイセリア菌は口腔内・咽頭内で常在菌として存在しています。
     これらナイセリア菌は、宿主の人が気管支炎や風邪などの感染症に罹患する毎に、医師から処方される抗生剤
     の被曝チャンスを頻回に受けます。
     その結果、様々な抗生剤に対して耐性を獲得します。

     オーラルセックスで浸入した淋菌は、親戚である口腔内のナイセリア菌と遺伝子組み換え(交差現象)を行い、
     容易に抗生剤耐性を獲得すると考えられています。


  参照:

淋菌感染症と口腔ケア
口内洗浄液で「淋病」を抑制できる可能性の研究 2016年 英医学誌 性感染症 (Sexually Transmitted Infections)

オーストラリアの研究チームは、淋菌を実験室内で培養し、アルコール含有のリステリン2種のさまざまな濃度の希釈液を塗布した。
実験の結果、リステリンは培養皿上の菌量を「著しく減少させた」一方、食塩水を塗布した場合は変化がみられなかった。 

研究チームは次に、淋病に感染した男性を対象とする試験を実施し、リステリンでうがいをする前後で、喉の細菌濃度を調べた。 
その結果、リステリンを使用した被験者は、食塩水でうがいをした被験者に比べて、うがいから5分後の時点でのどに存在する淋菌の量が少なかったという。

「マウスウォッシュのリステリンは、淋菌の増殖を抑制する安価で簡単に使える有効な薬剤であり、今後さらに慎重な検討と研究が必要だ」と、研究チームは記している。

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参考資料

「性行為感染症の検査」




「性感染症 診断・治療 ガイドライン 2016」 日本性感染症学会




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