1:HAV感染症
(1)A型肝炎ウイルス
エンベロープを持たない一本鎖RNAウイルスで、直径約27nmの正二十面体の粒子です。
耐酸性であり、蛋白分解酵素にも抵抗性です。
一度摂取すると主に肝臓で増殖し、糞便中に排出されます
HA抗体にはIgM型HA抗体とIgG型HA抗体があります。

(2)A型肝炎
A型肝炎ウイルス(HAV)が原因のウイルス性肝炎の一種です。
多くは一過性の急性肝炎症状で終わり、治癒後は強い免疫を獲得し、終生免疫となります。
症状消失後、1か月から2か月間はウイルスの排出が続きます。
2:感染様式
(1)感染経路
@ 経口感染
糞便を介した経口感染は、糞便に汚染された器具、手指等を経て感染します。
ウイルスに汚染された水や野菜、魚介類などを生や加熱不十分なまま食べることによっても感染します。
日本での主な感染源は、カキ、二枚貝で、輸入野菜が感染源になった例も報告されています。
A性行為感染
食物を介さずに、性行為による感染も報告されています。
男性間の性行為による感染者も増加してます。
国立感染症研究所 2003
(2)潜伏期間
通常15-50日(2?6週間)です。
平均で28-30日(約4週間)です。
3:疫学
(1)発生数
A型肝炎については、最近では2018年の急激な増加が目立ちます。
横浜市HPから引用
4:症状
(1)黄疸に先立つ前触れ症状
感染4週後位から、食欲不振、嘔気、嘔吐、腹痛、気分不快、発熱、頭痛などの症状が見られます。
前触れ症状の期間は、平均的には5-7日ですが1日から2週間以上にわたることもあります。
しかし、15%の場合では、黄疸に先立つ前触れ症状は見られません。
(2)黄疸
通常、前触れ症状に続いて、黄疸が現れます。
黄疸が明らかになる前に暗色の尿に驚かされることがあります。
黄疸の出現とともに、前触れ症状は消える場合もありますが、長引く場合もあります。
黄疸では、体全体が黄色く染まって見えます。
普段は白い眼球の白目の部分が黄色く染まるのが目立ちます。
患者は疲労を訴えることがあります。黄疸の期間は数日から1ヶ月間と人によってまちまちです。

(3)不顕性感染
症状が出るか出ないかは、年齢に左右されます。
6歳未満のこどもでは、通常は症状が見られず、黄疸が見られるのは10%程度です。
おとなでは、通常症状があり、70%以上で黄疸が見られます。
(4)合併症
合併症として、急性腎不全、貧血、心筋障害等が生じます。
(5)A型肝炎の臨床経過

(6)予後
予後は良好で、日本では死亡例はまれです。
5:診断
(1)検査
@肝臓の腫大
触診、腹部エコーでの肝臓の腫大が認められます。
A血液検査
肝機能検査、
血清中のIgM型HA抗体(高IgM血症)、血清中のウイルス分析など。
IgM型HA抗体---発症初期に上昇し、発症中であることを示す。
IgG型HA抗体---回復期に上昇し、HAV既感染やHAワクチン投与歴を示す.
(2)確定診断
血清中のIgM型HA抗体により確定診断とします。
しかし、感染初期には約5%が陰性と診断されます。
6:治療
(1)対症療法
特異療法は無く、対症療法が行われます。
7:予防
(1)衛生管理
手洗いなどの感染対策。
十分な加熱処理、塩素剤、ホルマリンなどによる消毒。
生ものや海外渡航先での生水の摂取を避ける、など。
(2)ワクチン
投与された人のおよそ95%に効果があります。
その効果は少なくとも15年間続き、人によっては生涯効果がみられます。
投与する場合、1歳を過ぎてからの2度の投与が勧められています。
投与法は筋肉注射です。

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