かぜ症候群 (Common Cold) |
1:風邪とは
最も頻度の高い呼吸器感染症で、上気道粘膜を中心とした急性炎症の総称です。
俗に「かぜ」とも言われ、約80%〜90%がウイルス感染によります。
通常は1週間以内に自然治癒します。
主な感染経路は飛沫感染や手指を介した接触感染で、予防が重要となります。

2:感染様式
(1)原因
原因としては、細菌よりもウイルスによる方が多く認められます。
一方で非感染性因子によるものも少数ではあるが挙げられています。
(2)原因ウイルス
@ライノウイルス (50 % - 75 %)
普通感冒の原因ウイルスのひとつです。
くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどが主症状で、年齢を選びません。
普通感冒とは、この症状のこと指します。
つまり、いわゆる鼻かぜ、のど風邪のことを普通感冒といいます。
Aコロナウイルス (15 %)
1960年より日本に存在し、冬に感染しやすい感冒ウイルスです。
外国ではSARSやMERS、COVID-19の症候群と呼ばれ、風邪(普通感冒)と区別されるケースもあります。
Bインフルエンザウイルス (10 % - 15 %)
風邪として扱われないことが多い。
Cアデノウイルス (5 %)
夏に流行します。
プールで感染する咽頭結膜熱(プール熱)として知られています。
Dパラインフルエンザウイルス
インフルエンザという名称が入っていますが、インフルエンザウイルスとは別のウイルスです。
喉頭と下気道に感染しやすく、子供がかかる場合が多い。
ERSウイルス
小児発症の原因病原体として最多であり、気管支炎や肺炎を起こしやすい。
乳幼児は重症になる場合もある。冬の感染が多い。
Fエコーウイルス
Gエンテロウイルス
下痢を起こしやすいく、夏に流行します。
(2)感染経路
多くは飛沫感染です。
あるいは手指を介して、口、目からの接触感染です。
3:疫学
かぜ症候群はあらゆる年齢層に発症し、健常な人の大半が罹患するごく普通の疾患です。
4:症状
(1)主要症状
鼻汁、くしゃみ、咽頭痛、咽頭乾燥感、咳、痰 など。
(2)重篤化した場合
風邪は上気道炎(鼻炎、咽頭炎)です。
しかし風邪をこじらせると、上気道から気管支炎、肺炎へと悪化します。
5:診断
(1)重症の診断基準
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、以下の場合には医療機関に受診すべきと勧告しています。
体温----38度以上の場合
症状----10日以上継続する場合
症状----深刻か、普通でない場合
(2)鑑別診断
@経過が短いもの(経過が短いものは急速に増悪し、治療が間に合わないこともある)
インフルエンザ
急性喉頭蓋炎 咽頭後壁膿瘍・口底蜂窩織炎
髄膜炎・脳炎 心筋炎 レミエール症候群(細菌性頸静脈炎)
慢性骨髄性白血病急性転化 糖尿病性ケトアシドーシス
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風邪とインフルエンザの症状の違い |
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風邪(Cold) |
インフル (Flu) |
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発熱 |
まれ |
頻出(37-38℃) |
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頭痛 |
まれ |
頻出 |
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疼痛 |
わずか |
大部分、重度となりえる |
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疲労・脱力 |
時々 |
大部分、2-3週続く |
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極度の疲労 |
無し |
大部分 |
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鼻汁 |
頻出 |
時々 |
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くしゃみ |
頻出 |
時々 |
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のどの痛み |
頻出 |
時々 |
A経過が長いもの(正しい診断に至るまで時間がかかることがある)
マイコプラズマ感染症 クラミジア感染症 肺結核、非結核性抗酸菌症 百日咳 伝染性単核球症
扁桃周囲膿瘍 組織球性壊死性リンパ節炎(菊池病) 感染性心内膜炎 心不全→心臓性喘息
気管支喘息 アレルギー性気管支 肺アスペルギルス症(ABPA)、夏型過敏性肺臓炎
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
リウマチ性多発筋痛症・RS3PE
巨細胞性動脈炎…原因不明の発熱、頭痛など感冒類似の症状がみられる。
原田病…感冒様症状に続きぶどう膜炎を発症する。
6:治療
通常は7日〜10日で自然治癒します。
快癒させる薬は有りません。
症状が強ければ薬物対症療法を行います。・・・薬は治癒を遅らせる場合があります
不必要な抗菌薬投与は包む氏べきとも言われています。 (薬剤耐性菌の増加を助長するため)

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かぜ症候群と口腔ケア |
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参考資料 |
『病気がみえる vol.6 免疫・膠原病・感染症』
『全ての病気は「口の中」から!』
『マンガでわかる感染症のしくみ事典』
絵でわかる感染症 with もやしもん (KS絵でわかるシリーズ)
『感染症 ウイルス・細菌との闘い』 (別冊日経サイエンス238)
『戸田新細菌学第34版』 南山堂 2013
『標準微生物学 第14版 (Standard Textbook)』 医学書院 2021
「厚労省感染症情報」 厚労省
「気道ウイルス感染症の疫学」 浦沢正三 日気食会報 33(2),1982 pp.86-09
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