梅毒 (Syphlis) |
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1:概念
スピロヘータの1種であるTreponema pallidumによる感染症。
先天性梅毒:垂直感染すなわち母子感染(経胎盤感染)による
後天梅毒 :接触感染主に性行為により皮膚や粘膜から感染する。 (現在ではほぼ後天梅毒)
2:原因菌
スピロヘータの1種であるTreponema pallidum。
らせん状形態、グラム陰性であり、活発に運動する。
梅毒トレポネーマは生体外で容易に死滅し、性行為などの直接感染でしか感染しない。(STD
)
自然界における唯一の宿主はヒトであ、宿主がいなければ数日も生きられない。

3:感染経路
主に性行為、オーラルセックス、キスにより、生殖器、口、肛門から感染、皮膚や粘膜の微細な傷口から侵入し、
進行によって血液内に進む。
米国における新規症例の感染経路は、男性同士の性行為が半数以上を占める。
これ以外にも母子感染、輸血血液を介した感染もある。
母子感染の場合、子供は先天梅毒となる。
血液製剤については、多くの国々で検査が行われるため、感染経路となるリスクは小さい。
この病原体は体外に排出されると急速に死ぬことから、物を介した感染は難しい。
日常生活における、食器や衣類の共有、トイレの便座、入浴からの感染は不可能であると言われている。
4:疫学
近年、著しく増加傾向にある.
日本における感染者は、2010年頃より増加している。
2018年の患者報告数は6923人(暫定値)で、現行の集計方法が採用された1999年以降では最多となった。
2010年までは500例から800例で(人口10万当たり発生率は0.47〜0.6程度)推移していたが、2012年以降は増加に
転じた。
2013年には1,226例、2014年には1275例が報告され、人口10万当たり発生率は 0.96 と上昇している。
また感染者の約8割は男性で、男性の人口10万当たり発生率は1.6である。
なお、様々な診療科で鑑別診断が行われず、梅毒患者が見逃されていることを指摘する医師もいる。
男性は25〜29歳、女性は20〜24歳の感染者が多い。若い女性に感染が広がるのと同時に、「先天性梅毒」の赤ちゃん
の出生も増加した。

5:症状
症状は4段階で観察され、先天性での発症も起こる。
その多様な症例から、ウイリアム・オスラーから偽装の達人 ("the great imitator") と呼ばれた。
例:皮膚症状以外の症状として、
頭痛、脳腫瘍(の疑い)、認知症、飛蚊症・霧視、ラムゼイ・ハント症候群(の疑い)、難聴、大動脈瘤破裂、
左側腹部痛、胃潰瘍(の疑い)、急性肝炎、ネフローゼ、悪性リンパ腫(の疑い)」などが報告されている。
第1期と第2期が感染しやすく、感染後約1週間から13週間で発症する。
現代においては先進国では、抗生物質の発達により、第3期、第4期に進行することはほとんどなく、死亡する例は稀である。
第1期梅毒の最初の数週間は抗体発生前で、検査において陽性を示さない。
また、第1期と第2期の症状が全く出ないこともあるので、注意が必要である。
1期:3週間後----初期硬結 硬性下疳
トレポネーマが侵入した部位(陰部、口唇部、口腔内)に塊(無痛性の硬結で膿を出すようになり、これを硬性下疳と言う)
を生じる。
塊はすぐ消えるが、稀に潰瘍となる。
また、股の付け根の部分(鼠径部)のリンパ節が腫れ、これを横痃(おうげん)という。
6週間を超えるとワッセルマン反応等の梅毒検査で陽性反応が出るようになる。

2期:3ヶ月後----ばら疹
全身のリンパ節が腫れる他に、発熱、倦怠感、関節痛などの症状がでる場合がある。
バラ疹と呼ばれる特徴的な全身性発疹が現れることがある。
赤い目立つ発疹が手足の裏から全身に広がり、顔面にも現れる。
特に手掌、足底に小さい紅斑が多発し、皮がめくれた場合は特徴的である。
治療しなくても1か月で消失するが、抗生物質で治療しない限りトレポネーマは体内に残っている。
潜伏期
前期潜伏期:第2期の症状が消えるとともに始まる。
潜伏期が始まってからの2年から3年間は、第2期の症状を再発する場合がある。
後期潜伏期:不顕性感染の期間で数年から数十年経過する場合もあるが、この期間は感染力を持たない。
3期:3年後----ゴム種 全身の炎症
皮膚や筋肉、骨などにゴムのような腫瘍(ゴム腫)が発生する。
(医療の発達した現代では、このような症例をみることは稀である)

4期:10年後 神経梅毒 脳梅毒
感染後10年以降の状態。
多くの臓器に腫瘍が発生したり、脳、脊髄、神経を侵されて麻痺性痴呆、脊髄瘻を起こしたりして(脳(脊髄)梅毒、脳梅)、
死亡する。
現在は稀である。

補足:先天梅毒
妊娠中胎盤を通じ、または出産時に産道を介して感染する症例である。
感染した幼児の2?3は症状が現れない状態で産まれてくる。
生後数年で、一般的に、肝臓、脾臓の増大、発疹、発熱、神経梅毒、肺炎といった症状が現れる。
治療がなされない場合、鞍鼻変形、ヒグメナキス徴候、剣状脛、クラットン関節といわれる後期先天性梅毒の
症状が現れる。

先天性梅毒の症状には以下のものが挙げられる。
ハッチンソンの三徴候----実質性角膜炎、感音性難聴、ハッチンソン歯
口囲の放射状瘢痕〔Parrot(パロー)凹溝]
鞍鼻
桑実状大臼歯

補足:HIV感染症との合併例
HIV感染症との合併例が多く、どちらの検査も行うことが推奨される.
HIV感染症合併例では皮疹の重篤化や、中枢神経への感染による神経梅毒の早期発症が生じることがある.
梅毒の臨床経過が1〜3期に分けられる中で、神経梅毒はどの段階でも感染しうる。
6:検査
(1)検査法
@STS :Serologic test for syphilis(ウシ脂質抗原を使う、ガラス板法、RPR、カード法、緒方法、定量法)
A梅毒トレポネーマ抗原を使うもの(TPHA法、FTA-ABS法)
B家庭・自宅でできる簡易検査
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詳細は、「性行為感染症の検査」へ
(2)注意すべきこと
STSは治療後陰性化するが、TPHAは陰性化しません。
感染直後はIgMを使うFTA-ABSが陽性になります。
STS陽性でも、生物学的偽陽性(他の疾患で陽性になる)があり、TPHA陽性でも治療が必要ない場合もあります。
7:治療
(1)使用薬剤
日本国外ではペニシリンGの筋注単回投与である。
日本国内ではペニシリンGが副作用への懸念から使用できないため、ペニシリン系の抗菌薬を複数回投与して
治療を行う。
キノロン系抗菌薬は用いられない。
(2)投与期間
第1期で2〜4週間、第2期では4〜8週間、第3期以降は8〜12週間。
ただし、ペニシリン系抗菌薬に対してアレルギーがあ場合など
テトラサイクリン系のミノサイクリンや、マクロライド系のアセチルスピラマイシンなどを使用する。
しかし、ペニシリン耐性は無いとされているがマクロライド耐性が報告されている。
(3)治療上の注意点
胎児(母体)に対し、エリスロマイシンを使用した場合には、新生児は出産後改めて治療する必要がある。
なお、感染してから1年以内の梅毒を治療した場合、治療初期に38度台の高熱が出ることがある
(ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応)。
菌が一気に死滅するための反応熱であり、初回治療の場合は、病院でしばらく観察する必要がある。
かつて、クロラムフェニコールが使用されたが、副作用が強いため現在では使用されない。
男性の場合は泌尿器科・性病科、皮膚科、女性の場合は産婦人科、皮膚科、性病科を受診。
患者に伝染させたと思われる人も、梅毒の検査とエイズの検査を受けるべきである。
保健所であれば無料、かつ匿名で検査が行えます。
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参考資料 |
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『誰も教えてくれない 性病対策ハンドブック (SANWA MOOK)』
『怖くて眠れなくなる感染症』
「性感染症報告数 2004年〜2020年」 厚労省
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