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1:悪性リンパ腫とは
悪性リンパ腫は、血液中のリンパ球が癌化した疾患であり、主にリンパ節、脾臓および扁桃腺などのリンパ組織に
発生しますが、リンパ組織以外にも多く発生します。
胃、腸管、甲状腺、肺、肝臓、皮膚、骨髄および脳など、体のあらゆる臓器に発生する可能性があり、発生した部位により
症状および診断の契機が異なります。
「日本口腔外科学会HP 悪性リンパ腫」 から引用
2:分類
悪性リンパ腫は病理所見から、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に大別されます。
また、腫瘍細胞の性格から、T細胞性、B細胞性、NK細胞性に分類されます。
近畿大学病院HPから引用
3:疫学
日本人の悪性リンパ腫は、非ホジキンリンパ腫が圧倒的に多く、かつB細胞性リンパ腫が多いのが特徴です。
悪性リンパ腫では、リンパ節に発生したものを節性、リンパ節以外の臓器組織に発生したものを節外性と区別しています。
わが国では節外性リンパ腫が40〜50%を占め、組織学的にはび漫性大細胞型B細胞性リンパ腫が多く、
ホジキンリンパ腫や濾胞性(ろほうせい)リンパ腫はまれです。
顎口腔領域では節外性リンパ腫の占める割合が高く、歯肉、上顎洞、顎骨に多くみられます。
4:症状
臨床症状は多彩で、腫脹あるいは腫瘤、潰瘍を形成したり、疼痛、歯の動揺、鼻づまりなどを伴います。
節性では頸部や顎下リンパ節が無痛性、孤立性あるいは多発性に腫大します。
これらは急速に腫大し、大きな腫瘤となります。
また周囲組織と癒着したり、極度に増大すると嚥下障害や呼吸困難などの症状を呈します。
進行すると全身の衰弱、DIC(播種性血管内凝固症候群)、多臓器不全などから死に至ります。
5:病期分類:Ann Arbor 分類
進行度によって次の様に分類されます。
通常の癌と異なり、0期という分類はありません。
T期
単独リンパ節領域の病変 (I)。
またはリンパ節病変を欠く単独リンパ外臓器または部位の限局性病変 (IE)。
U期
横隔膜の同側にある2つ以上のリンパ節領域の病変 (II)。
または所属リンパ節病変と関連している単独リンパ外臓器または部位の限局性病変で、横隔膜の同側にある
その他のリンパ節領域の病変はあってもなくてもよい (IIE)。
病変のある領域の数は下付きで、例えばII3のように表してもよい。
V期
横隔膜の両側にあるリンパ節領域の病変 (III)。
それはさらに隣接するリンパ節病変と関連しているリンパ外進展を伴ったり (IIIE)、
または脾臓病変を伴ったり (IIIS)、あるいはその両者(IIIES)を伴ってもよい。
W期
1 つ以上のリンパ外臓器のびまん性または播種性病変で、関連するリンパ節病変の有無を問わない。
または隣接する所属リンパ節病変を欠く孤立したリンパ外臓器病変であるが、離れた部位の病変を併せ持つ場合。
6:治療
リンパ系組織は全身を巡っているため、肉腫及び癌腫の癌、いわゆる固形癌とは異なり、外科手術による切除は行いません。
ただし、腫大による圧迫などを緩和するため姑息的な減量手術を行うことはあります。
よって、主に放射線療法および化学療法を行います。
症例
舌に発生した悪性リンパ腫

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