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1:悪性黒色腫とは
表皮基底層の色素細胞(メラノサイト)、もしくはほくろ(色素性母斑)の細胞由来と考えられている悪性腫瘍です。
悪性度が高く、髪の毛以外の全身どこにでも生じます。

2:原因
明らかな原因は不明ですが、紫外線や機械的刺激の関与などが考えられています。
また、先天性の巨大な色素性母斑(黒あざ、青あざ)内に発生することもあります。
3:症状と分類
一般的には新たに出現した色素斑(シミ)や以前からあるホクロに似たシミが徐々に拡大し、ある時点から急に大きくなる
といった経過をたどる場合が多いです。
多くは皮膚に発生し、色や形,発生する部位などから以下の4つのタイプに分類されます。
(1)末端黒子型黒色腫
四肢末端、即ち手のひら、足の裏、爪部などに発生し,特に足の裏に好発します。
日本人の悪性黒色腫の40〜50%を占めます。
はじめは扁平な褐色や黒褐色の色素斑として発生し、拡大とともに色調が均一でなくなり,進行すると
しこりびらん・潰瘍が生じることがあります。
爪でははじめ黒褐色の縦の筋が生じ、拡大して爪全体からさらには周囲の皮膚へと拡大してゆきます。
「メラノーマ診療ガイドライン2019」から引用
(2)表在拡大型黒色腫
全身どこにでも発生します。
少し隆起したシミとして生じ、境界が不鮮明になり、濃淡のまじったまだら状の色調になります。
白人では最も多く見られるタイプですが、日本人でも増加してきています。
進行は比較的ゆるやかです
「メラノーマ診療ガイドライン2019」から引用
(3)悪性黒子型黒色腫
高齢者の顔面に多いタイプで、境界が不整、色調もまだら、黒褐色の平らな色素斑で、ゆっくりと成長
していきます。
高齢者の日光に曝露する部位に生じます。
「メラノーマ診療ガイドライン2019」から引用
(4)結節型黒色腫
黒色または濃淡の混じった結節ができますが、初期にはしこりの周囲にシミのような病変は生じません。
40〜50歳代に発生することが多く、がんの成長は速いのが特徴です。
「メラノーマ診療ガイドライン2019」から引用
4:早期発見のための診査方法
(1)視診
悪性黒色腫の早期発見のためには、下の表に示す5つの特徴(ABCDE基準)が役立つといわれています。
病変の大きさ、形、色、潰瘍や出血、感覚に変化がないか、大きさ(最も長いところ)が6mmを超えていないか
という点に注意が必要です。
Asymmetry(非対称性の病変) : 形態が非対称である。
Border irregularity(不規則な外形):端がギザギザしており,境目がはっきりと鮮明な部分と不鮮明な部分がある。
Color variegation(多彩な色調):黒褐色主体として色調にむらがある。
Diameter enlargement (大型の病変) :長径が6mmを越えたもの。
Evolving lesion (進行性の変化)) : 大きさ,形態,色調,表面の状態などの症状に変化が見られるもの。
大阪医療センターHPから引用
(2)ダーモスコピー検査
肉眼所見による診断の他に、現在ではダーモスコピーという拡大鏡を使用する検査が行われます。
これはエコージェルや偏光レンズなどで光の乱反射を抑え、強い光線を照射することにより皮膚病変を10〜30倍
に拡大して観察する機器(ダーモスコープ)を使った診断法です。
この検査によって皮膚の色素沈着や血管のパターンを調べることによって、他の疾患と悪性黒色腫との
鑑別がより容易になります。

5:診断
(1)鑑別診断
悪性黒色腫に類似した疾患があります。
代表的なものが、ほくろ(色素性母斑)です。
いぼ(疣、疣贅)も注意が必要な場合もあります。
ほくろは、集簇したメラノサイトまたは母斑細胞から構成される肌色から褐色の斑、丘疹、または結節です。
ほくろが大きな問題(整容面以外)となるのは、黒色腫と類似することです。
口の中では、メラニン色素沈着が鑑別の必要なものとなります。
これらは、メラニン色素の沈着です。

6:悪性黒色腫の病期
進行の度合いによって0期からW期に分類されます。
この病期は腫瘍組織の厚み,臨床症状(潰瘍の有無),リンパ節や周囲の皮膚および他の臓器への転移の有無など
によって決定されます。
この病期が治療や経過観察を決める目安となります。
0期:がん細胞が表皮内のみに存在する。
T期 リンパ節や他の臓器に転移が無く、
A:がんの厚みが1mm以下で表面に潰瘍がない
B:がんの厚みが1mmを越えるが2mm以下で潰瘍がない。
U期 リンパ節や他の臓器に転移が無く、
A:がんの厚みが1mmを越えるが2mm以下で潰瘍がある
がんの厚みが2mmを越えるが4mm以下で潰瘍がない
B:がんの厚みが2mmを越えるが4mm以下で潰瘍がある
がんの厚みが4mmを越えるが潰瘍がない
V期 所属リンパ節や原発部周囲の皮膚に転移がある
W期 他の臓器に転移がある
7:治療
(1)手術療法
悪性黒色腫では、手術によってがんを切除する方法が優先されます。
しかし、悪性黒色腫は、がんの周辺に小さな転移(衛星病巣)や目に見えないほど小さな転移が発生する
ことが多く、目に見えるがんだけを切除した場合、周囲に再発するリスクがあります。
手術ではこれらの小さな転移も取り除く必要があるので、がんの端から数cmほど外側を広めに切除します。
(2)補助療法
悪性黒色腫は、術後の早い時期に転移や再発が発見され、予後不良となることがしばしば起こります。
術後補助療法とは、術後の転移や再発を防ぐために行われるものです。
悪性黒色腫では、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬、インターフェロンなどによる治療が検討されます。
一方、病気が進行して手術による治療が難しい場合や、がんが再発した場合などは、全身療法として
化学療法(抗がん剤)、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬による治療が行われます。
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