お口と機能と口腔ケア                   
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お口の中の悪性腫瘍について

     
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「口腔がん」は、顎口腔領域に発生する悪性腫瘍の総称です。
口腔は歯以外の表面が扁平上皮からなる粘膜で被覆されているため、病理組織学的に口腔がんの90%以上は扁平上皮癌です。
その他としては小唾液腺に由来する腺系癌や,肉腫,悪性リンパ腫,転移性癌があります。
ここでは,最も頻度が高い扁平上皮癌を「口腔癌」として述べます。
 
 顎口腔領域に発生する悪性腫瘍
    癌腫(上皮性悪性腫瘍)  :  扁平上皮癌(90%以上) 基底細胞癌  腺癌  移行上皮癌 未分化癌
    肉腫(非上皮性悪性腫瘍  :  肉腫(6%) 悪性黒色腫(0.8%)  悪性リンパ腫  


  
口腔癌とは 
 
口腔癌とは
  頬粘膜,上顎歯槽と歯肉(上顎歯肉)、下顎歯槽と歯肉(下顎歯肉)、硬口蓋、舌、口底に発生した癌を口腔癌と定義
  されています。

  参照:舌癌(扁平上皮癌)   歯肉癌   口底癌   頬粘膜癌


口腔の特殊性

 口は消化器系の入り口として,喫煙や飲酒,食物などによる化学的刺激に曝露され,また齲歯や不良な歯科補綴物
 による機械的刺激があり、発癌にかかわる特殊な環境と危険因子が複数存在することが特徴です。
 口腔癌は直接見て触れることができるため,その検診は容易に行い得ます。


口腔癌検診の意義

 口腔癌のみならず白板症や紅板症などの前癌病変、扁平苔癬,鉄欠乏性嚥下困難症(Plummer-Vinson 症候群),梅毒
 などの前癌状態を含めて,早期に診断し治療することにあります。
    口腔癌検診での口腔癌と前癌病変の検出率は0.99%と報告されています。


            


口腔癌の危険因子 
 
口腔癌の危険因子
  癌の原因を同定することは極めて困難であるが、いくつかの危険因子は確認されています。
  口腔癌の危険因子としては,喫煙,飲酒,慢性の機械的刺激,食事などの化学的刺激,炎症による
  口腔粘膜の障害,ウイルス感染,加齢などが挙げられているが,疫学的あるいは科学的根拠のあるものは少ない。
  発癌には複数の発癌因子が作用して,多段階的に癌に移行すると考えられ、口腔癌も外的慢性刺激により
  遺伝子異常が生じ、これらが蓄積して初めて生じるものと考えられています。

 @喫煙
    口腔癌における最大の危険因子と考えられている
    南アジア諸国では全癌の約30%を口腔癌が占めていますが、これは檳榔子(ビンロウジ)などの噛みタバコの
    習慣によるものが大きいとされています。
    喫煙と癌については多くの研究が行われ,タバコの煙に含まれる約4,000 種類の化学物質の中に発癌の
    イニシエーターおよびプロモーターとなる物質が存在することが明らかとなっています。
    最近では,CYP1A1 やGSTM1 など発癌物質の活性化や解毒にかかわる酵素についてそれぞれ
    遺伝子多型(SNP)を認めることから,喫煙に対する発癌リスクは個々人で異なると考えられています。

 A飲酒
    飲酒も口腔癌の危険因子である。アルコールそのものには発癌性はないが,間接的に発癌に関与するとされ,
    また,アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドに発癌性があると報告されています
    口腔内にも生じたアセトアルデヒドが蓄積することにより発癌するとの報告もある
    アセトアルデヒド分解酵素2 遺伝子(ALDH2)に遺伝子多型(SNP)が認められることから,飲酒による
    発癌リスクにも個人差があるとの報告もあります。
    米国では歯科医師により過度の飲酒を避けることが指導されている
    また,洗口液に含まれるアルコールが口腔癌の発癌リスクを高めることも報告されています

 B飲酒と喫煙
    飲酒と喫煙は口腔癌の発生に相乗的に作用し,アルコールはタバコ中に含まれる発癌物質の溶媒として
    作用すると考えられています。

 C慢性の機械的刺激
    傾斜歯、齲歯、不良充填物、不適合義歯などが挙げられる。
    これらがDNA 修復能に異常をもたらし発癌するとされているが,不適合義歯そのものは口腔癌の
    直接的な原因にはならないとする意見もある

 D炎症性サイトカイン
    炎症性細胞の浸潤によりDNA 損傷や細胞増殖因子を供給することで,発癌、腫瘍の増大や浸潤に関与します
    口腔では歯肉炎が,他因子と複雑に絡み合いながら発癌にかかわっている可能性があります。

 Eウイルス感染
    特にヒトパピローマウイルス(HPV)が中咽頭癌と同様に口腔癌の発癌にも関与すると報告され,
    口腔癌では正常口腔粘膜より4.7 倍高率に検出されたと報告されています


口腔癌の好発部位 
 
 2002年の日本頭頸部癌学会の集計より
    舌60.0%,頬粘膜9.3%,口底9.7%,上顎歯肉6.0%,下顎歯肉11.7%,硬口蓋3.1%と報告されています。

 米国
    舌35.2%,口底28.0%,上・下顎歯肉10.4%,硬口蓋8.9%,頬粘膜2.9%と報告されています。


臨床診査 
 
 口腔癌の治療にあたって,最初に行わねばならないのは問診,視診,触診などの診査です。
 これら診査を通して腫瘍の進行状態をある程度把握し,次にどのような画像検査,組織検査を行うか検討します。

 臨床診査
    腫瘍の大きさ(T),頸部リンパ節転移(N),遠隔転移(M)を明らかにします。
    参照:TNM分類とステージ分類

 画像診断

 血液検査

 病理組織検査
    参照:日本臨床口腔病理学会-口腔病理基本画像アトラス


治療 
 
 1)外科的療法
    部分切除(腫瘍全摘出術)、全部切除(臓器全切除)、顎骨連続離断術など

 2)
放射線療法

    X線、コバルト照射、ラジウム針、コバルト針、ラドン・シード刺入
     リニアック超硬X線、ベータートロン電子線

 3)化学療法
    アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗生物質、副腎皮質ステロイド・ホルモン

 4)癌免疫療法
    特異的なものに放射線照射癌細胞の自家移植、抽出TSAによる免疫、
    非特異的なものにBCG、丸山ワクチン、タンパク多糖体PS-K、化学物質DNCBおよびTEIBなど


 通常の癌治療は、以上の三者あるいは四者を組合わせた併用療法が行われています。
 最近では凍結外科療法、光凝固療法、温熱療法などが用いられている場合もあります。
 

参考資料 
 
日本癌治療学会 「がん診療ガイドライン  口腔がん」


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