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嚢胞性疾患について

     
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T:嚢胞とは? 
 
 嚢胞とは、固有の壁をもっていて内面が上皮で裏装され、そのなかに液体または半流動体を入れている病的な嚢様構造物をいいます。

         

U:嚢胞の発生論および分類 
 
顎口腔領域での嚢胞の頻度はきわめて高く、顎口腔病変の約1/4〜1/3を占めます。
また身体の全体から嚢胞の頻度を見ても、顎口腔領域に発生するものが最も多い吐されています。
この理由として、同部が歯や唾液腺など他部位にみられない特殊な組織を含んでおり、発生および解剖学的に複雑な様相を示すことがあげられています。

したがって顎口腔に発生する嚢胞は多種に及び、その成り立ちもそれぞれ異なります。
嚢胞の発生論および分類についても古くから多く報告があるが、いまだ完全に統一されていません。

しかし、一般的に嚢胞は顎骨に発生するものと、軟組織に発生するものに大別されます。
さらに顎嚢胞は上皮性嚢胞壁を有するものとして歯原性嚢胞と非歯原性嚢胞とに分類されます。

上皮性嚢胞壁をもたない単純性骨嚢胞や脈瘤性骨嚢胞あるいは静止性骨空洞などは、偽嚢胞などとよばれています。


1.顎骨嚢胞
   A:歯原性嚢胞  
       歯根嚢胞含歯性嚢胞(濾胞性歯嚢胞)、原始性嚢胞、
       歯原性角化嚢胞、石灰化歯原性嚢胞、歯肉嚢胞

   B:顔裂性嚢胞  
       鼻口蓋管嚢胞、正中口蓋嚢胞(切歯管嚢胞、口蓋乳頭嚢胞)
       鼻歯槽嚢胞、球状上顎嚢胞、正中下顎嚢胞

   C:その他の嚢胞性病変
       術後性上顎嚢胞、単純性骨嚢胞、脈瘤性骨嚢胞、静止性骨空洞


 2.軟組織の嚢胞
    A:粘液嚢胞    
       粘液瘤、ガマ腫
     B:類皮嚢胞および類表皮嚢胞
     C:鰓嚢胞(リンパ上皮性嚢胞)
     D:甲状舌管嚢胞
     E:胃または腸粘膜を含む異所性嚢胞


V:嚢胞の診断法
 
診断のポイント
   診断には各種嚢胞の性状を理解することが必要であるが、嚢胞は概して以下の特徴をもちます。
     ・無痛性。
     ・限局性。
     ・発育緩慢
     ・ほぼ球形に近い腫瘤状を呈する。
     ・軟組織内にあれば波動を触れる。
     ・骨内で増大すれば羊皮紙音感じる。
     ・穿刺により内溶液を吸引しうる。
     ・嚢胞の発生部位は診断に大きな指針を与える。


肉眼的所見

   嚢胞の臨床診断に他の疾患と同様に視診、触診で得られる肉眼的所見が基本となり、
   嚢胞は上記の特徴を示します。

   しかし顎嚢胞の場合は肉眼的所見に異常を認めないことも多く、X線所見によってはじめて
   発見されることもあります。

   顎嚢胞では歯原性のものが多いので、歯の状態(埋伏あるいは萌出状態、生活歯あるいは失活歯、打診痛、
   動揺度)を必ず精査し、同時に触診にて腫脹などの顎骨異常の有無を精査します。

   増大した顎嚢胞あるいは軟組織の嚢胞では、嚢胞腔内容物の状態が触診にて推察する事が出来ます。


X
線所見

   顎嚢胞におけるX線検査は不可欠である。
   X線的特徴としては、境界が比較的明瞭でX線不透過像を示す細い線状のいわゆる
   cystic margineで囲まれたX線透過像として描写されます。

   疾患の大きさ、形態、部位、辺縁の状態、歯との関係は診断のために重要な事項です。
   疾患の解剖学的位置関係にはCTが、充実性腫瘍と嚢胞と鑑別には超音波エコーが便利です


内容液の穿刺

   一般に嚢胞は固有の壁をもっていて内面が上皮で裏装され、そのなかに液体(流動体)または
   半流動体を入れている病的な嚢様構造物を指しています。
   ゆえに内容物の穿刺は診断に重要な指針を与えます。

   内容物は一般的に淡黄色で漿液性または粘稠な液体であるが、感染などによって種々の修飾をうけます。
   粥状の内容物を含むときは角化嚢胞や、類表皮嚢胞を疑う必要があります。

   通常の顎嚢胞とエナメル皮腫の鑑別ではγ−globlin、LDHの測定で、顎嚢胞では高い値を示し、
   エナメル上皮腫では血清値にほぼ近い値を示します。
   エナメル上皮腫あるいは他の顎嚢胞と歯原性角化嚢胞との鑑別では内容物のTP、グルコース、
   ChEを測定し角化嚢胞のTPが4g/dl以下でグルコース、ChEも低値を示すことで鑑別ができるといわれています。
   しかし嚢胞に感染を認める場合はそれぞれの値が変動するので、鑑別は困難であるといえます。
   また歯根嚢胞、濾胞性歯嚢胞、各種顔裂嚢胞の鑑別は内溶液のみでは区別できないともいわれています。


W:嚢胞の治療法 
   
一般的な治療法
   嚢胞の治療法は、従来よりPartschT法とPartschU法とが行われています。
   現在も原則的にこの方法に準じて外科的手術が行われています。

   抗生物質のない時代は術後感染を考慮して多くの嚢胞がPartschT法にて手術されましたが、消毒法
   ならびに抗生物質の発達と
   ともに比較的大きな嚢胞に対してもPartschU法にて摘出手術が行われるようになりました。

   手術方法は嚢胞の種類、性状、大きさ、位置、嚢胞と歯との関係などを考慮して適切な術式が選択されます。

       
           Partsch1法                     Partsch2法



その他の方法
   巨大な再発症例あるいは病巣が下顎骨下縁にも及ぶ大きな嚢胞症例に対しては顎骨離断が
   行われることもあります。

   顎嚢胞に対して手術前に嚢胞腔の内容を穿刺し、その後腔内をリンゲル液や抗生物質、ヒアルロニダーゼ
   などを組み合わせた洗浄を行うことにより嚢胞の縮小させ、そのあとに摘出術などの観血的手術を試みる
   こともされています。




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