単純疱疹 (HSV:Herpes Simplex Virus 感染症) |
1:単純疱疹とは
顔面や性器の皮膚症状などを呈する感染症です。
初感染後に知覚神経節に潜伏感染し、免疫能低下に再活性化して再発を繰り返します。

『病気がみえる vol.6 免疫・膠原病・感染症 第6版』 から引用
2:原因と誘因
単純疱疹ウイルス(HSVT)が宿主に潜伏、持続して感染し、熱性疾患、胃腸障害、過労、日光照射、寒冷などで誘発され発症します。
初感染発症例では、急性疱疹性歯肉口内炎として激しい症状を呈することがあります。
3:疫学
(1)好発部位
口唇および口囲に発現することが最も多い。
単純性疱疹の約50%、顔面、頸部、口腔領域における発症の65%を占めています。
(2)性差
発症に性差はみられません。
(3)好発年齢
年齢分布には2〜5歳(おもに初感染例)と20〜39歳(おもに再感染例)の2峰性を示しています。
4:臨床症状
(1)ヘルペス性歯肉口内炎
HSV-1の初感染により発症し、主に6ヵ月〜6歳頃までの小児にみられます。
成人でも発症することがあります。
感染経路:口から口への接触によって伝播します。
潜伏期:感染から2〜7日
症 状:発熱と口腔内粘膜や舌、口唇などに白苔を付着したびらん・潰瘍が多発します。
所属リンパ節が腫脹し、口腔内の痛みにより、摂食・飲水が困難となり入院する症例もあります。

(2)口唇ヘルペス
皮膚粘膜に生じるHSV感染症で最も多く、そのほとんどが再発型です。
主にHSV-1の再活性化により発症します。
口唇ヘルペスは口唇と皮膚の境界部に好発します。
典型例では、数日前から前駆症状が出て、その後水疱が出現します。
顔面ヘルペスは、眼部近傍に病変があると角膜にヘルペスを呈することがあります。

誘因:発熱、ストレスや過労、日光による刺激
症状:口唇やその周囲に有痛性の水疱
(3)性器ヘルペス
@潜伏期間
性行為から2〜10日後に発症します。
A感染経路
接触感染 産道感染
B症状
外陰部に疼痛を伴う水疱、左右対称性の浅い潰瘍性病変 排尿困難、歩行困難など。
産道感染により新生児ヘルペスをきたす場合があります
妊婦の性器ヘルペス発症例では帝王切開や、抗ヘルペスウイルス薬の予防投与を考慮します。
*新生児ヘルペス
産道感染で発症し、死亡または重篤な後遺症をきたしうる新生児感染症の一つです。
予後不良なので新生児ヘルペスの疑いがあれば診断を待たずに治療を開始します。
4:HSVによるその他の病気
(1)ヘルペス性ひょう疽
指尖の傷口などからHSVが感染して発症します。
初感染で発症することが多いが、口腔内のHSVから感染することもあり、 指しゃぶりをする乳幼児などに好発します。
主にHSV-1により発症しますが、性行為が原因と考えられるHSV- 2による発症もあります。
症状は指尖・爪囲、手掌にもみられ、痛みが強く、ときにリンパ管炎を起こすこともあります。

(2)角膜ヘルペス
眼の充血や眼の痛み、光が眩しいといった症状を認めます。
角膜上皮が障害を受けている状態を樹枝状角膜炎と呼びます
角膜上皮の損傷からさらに内部にあたる実質が損傷を受けると、角膜が白く濁ったり、目の中にぶどう膜炎と
呼ばれる炎症が波及したりすることもあります。
こうして角膜の実質が障害を受けている状態を、円板状角膜炎と呼びます

(3)カポジ水疱様発疹症
単純疱疹が経皮的に拡大し広範囲に病変を引き起こす疾患です
単純ヘルペスウイルス1型による病気です。
掻くことによって広がるためアトピー性皮膚炎の患者などに多くみられます。
疲労やストレスが遠因となることがあります
顔面に発疹が出た場合は、傷跡の一時的な色素沈着により、まるでそばかすのようになりますがが、徐々に消えて
いきます。
顔面以外も同様です。

6:治療法
対症的治療と二次感染に対する予防と治療が本疾患の治療の主体となります。
重篤例は少なく、抗生剤軟膏の局所的塗布および抗生剤の全身的投与などにより、10〜20日前後ですみやかに治癒
する場合が多いとされています。
ヘルペスウイルスの治療薬
一般ヘルペスウイルス
アシクロビル(ゾビラックス)
バラシクロビル(バルトレックス)
ペンシクロビル(デナビル)---日本では未承認
ファムシクロビル(ファムビル)
帯状疱疹
ビダラビン(アラセナ-A、カサールクリーム)
イドクスウリジン(IDU点眼液) 単
純ヘルペス性角膜炎
ソリブジン(ユースビル)承認取下
ブリブジン
サイトメガロウイルス
ガンシクロビル(点滴製剤)
バルガンシクロビル (経口内服製剤)
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