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ビスフォスフォネート製剤について


     
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BP製剤とは
BP製剤の化学
ビスホスホネート系薬剤bisphosphonate、BP)とは
破骨細胞の活動を阻害し、骨の吸収を防ぐ医薬品。
骨粗鬆症、変形性骨炎(骨ページェット病)、腫瘍(高カルシウム血症の有無にかかわらず)の骨転移、多発性骨髄腫、骨形成不全症、その他骨の脆弱症を特徴とする疾患の予防と治療に用いられる。


化学構造
すべてのビスホスホネートは、P-C-P 構造を基本骨格とする。
この基本骨格で、2個のホスホン酸アニオン基(ホスホネート)が炭素と共有結合していることが「ビスホスホネート」の名称と、薬の作用の由来である。
長いほうの側鎖(略図でR2)は化学的性質、動作の形式、ビスホスホネートの薬としての強さを決定する。短いほうの側鎖(R1)はおもに化学的性質と薬物動態に影響する。
    第一世代:側鎖に窒素を含まない
    第二世代:側鎖に窒素を含む
    第三世代:側鎖に環状窒素を含む

    

薬物動態
ビスホスホネートは経口投与されるか、静脈内注射によって体内に入る。
およそ50%は変化せずに腎臓から排出される。
残りは骨組織に強い親和性を持ち、骨の表面に吸着する。

作用機序
骨組織に付着すると、ビスホスホネートは破骨細胞に取り込まれる。
これにより破骨細胞はアポトーシスをに陥り、自死する。
このため、骨の減少は遅くなる。


BP製剤の薬
1:適応症
  ビスホスホネートは、
     骨粗鬆症
     変形性骨炎(骨ページェット病)
     腫瘍(高カルシウム血症の有無にかかわらず)の骨転移、
     多発性骨髄腫
     その他骨の脆弱症を特徴とする疾患
  に対し用いられる。

(1)骨粗鬆症・ページェット病
骨粗鬆症やページェット病に対してはアレンドロネートやリセドロネートが第一選択薬として一般的である。
これらが効果がない場合や消化器官の異常を訴えるのならばパミドロネートの静脈注射が利用される。
ラネル酸ストロンチウムやテリパラタイドが難病に、選択的エストロゲン受容体モジュレーターのラロキシフェンが閉経後の女性に投与されることもある。

(2)悪性腫瘍の骨転移
高容量ビスホスホネートの静脈注射はいくつかの種類の癌特に乳癌の骨転移の進行を抑える効果がある。
メドロネートやオキシドロネートは放射性テクシチウムに混ぜることで、骨疾患を調べることに用いられる。
さらに、ビスホスホネートは骨形成不全症の子供の骨折率を下げるのに使用されるようになった。


2:禁忌症



3:副作用
(1)最も重要な副作用
   BP系薬剤関連顎骨壊死(BRONJ)

(2)その他の副作用
経口ビスホスホネートは胃の不調や食道の炎症、びらんを引き起こす。
これらはおもに窒素を含むビスホスホネートで主に発生する。
これらは内服後30から60分間まっすぐに座っていることで予防できる。

ビスホスホネートの静脈注射は初回に発熱やインフルエンザ様の症状が出る。
これはビスホスホネートが人のγδT細胞の活性化を引き起こすためであると考えてられている。
これらは以後は発生しない。

電解質平衡異常をわずかに増加させるリスクがある。
しかし、定期的なモニタリングが必要なほどではない。

慢性腎不全の場合、排出の速度の低下があるため、投与量の調整が必要となることがある。
高度の骨や関節、筋骨格系疼痛の報告が多数されている。

最近の研究で、ビスホスホネート(厳密に言うとゾレドロネートとアレンドロネート)は女性の心房細動のリスクファクターと報告された。
炎症反応やカルシウムの血中濃度の増減がその原因と考えられる。
ある研究は、心房細動の3%はアレンドロネートの使用によるものであると評価している。
しかしながら、たとえ心房細動の高いリスクを持っている集団(心不全・冠動脈疾患・糖尿病などの患者)でも、
今のところビスホスホネートの利益はこのリスクを上回っている。
また、この研究を否定し、リスクファクターであるとのエビデンスは得られなかったとする研究も存在する。

長期間にわたるビスホスホネートの使用が特に大腿骨の転子下で骨代謝回転の過剰な抑制を引き起こすことが懸念されている。
これにより骨の小さなひびが治らず、最終的にはそのひびがつながり、非定型の骨折をすると考えられている。この種の骨折は不完全に治癒し、骨移植などの治療が必要となる。
この合併症は一般的でなく、骨折の減少の利益は大きい。



BP製剤の分類
化学構造からの分類
窒素を含まないビスホスホネート
第一世代
    エチドロネート
        ダイドロネルR(経口製剤・大日本住友製薬)
    クロドロネート
    チルドロネート

窒素を含まないビスホスホネートは細胞の中で代謝され、アデノシン三リン酸(ATP)末端のピロリン酸構造を機能しない形の分子に置き換え、細胞のエネルギー代謝の中でATPを競合的に阻害する。
これにより破骨細胞はアポトーシスに至る。
このため、骨の減少は遅くなる。


窒素を含むビスホスホネート
第二世代
    パミドロネート   
        アレディアR(注射用製剤・ノバルティスファーマ)
    ネリドロネート
    オルパドロネート
    アレンドロネート
        オンクラストR(注射用製剤・万有製薬)
        テイロックR(注射薬・帝人ファーマ)
        フォサマックR(経口製剤・万有製薬)
        ボナロンR(経口製剤・帝人ファーマ)
    イバンドロネート


第三世代
    チルドロネート
    インカドロネート  
        ビスフォナールR(注射用製剤・アステラス製薬)
    リセドロネート  
        アクトネルR(経口製剤:味の素/エーザイ)
        ベネットR(武田薬品工業/ワイス)
    ミノドロネート
    ゾレドロネート  
        ゾメタR(注射用製剤・ノバルティスファーマ)

窒素を含むビスホスホネートの骨代謝での活動はメバロン酸経路内でのファルネシル二リン酸合成酵素(FPPS)の結合と阻害である。
これらは、細胞膜を作るいくつかの小さなタンパク質を結合させる際に必要となる。
この現象はプレニル化として知られていて、亜細胞タンパク質の輸送に重要である。

プレニル化の阻害により破骨細胞内の多くのたんぱく質に影響を与えている上に、Ras,Rho,Racの脂質修飾の崩壊が、ビスホスホネートの作用の基礎にあると考えられている。
これらのたんぱく質は、破骨細胞形成・生存・細胞骨格の動態それぞれに影響を与えている。


用法からの分類
注射薬(主に悪性腫瘍の骨転移で使用される)
  第二世代
     アレディアR(ノバルティスファーマ社)
     オンクラストR(万有製薬)
     テイロックR(帝人ファーマ)
  第三世代
     ビスフォナールR(アステラス製薬)
     ゾメタR(ノバルティスファーマ社)

経口薬(主に骨粗しょう症で使用される)
  第一世代
     ダイドロネルR(大日本住友製薬)
  第二世代
     フォサマックR(万有製薬)
     ボナロンR(帝人ファーマ)
  第三世代
     アクトネルR(味の素/エーザイ)
     ベネットR(武田薬品工業/ワイス)



参考資料
日本骨代謝学会骨粗鬆症診断基準検討委員会 原発性骨粗鬆症の診断基準(2000年度改訂版) 日本骨代謝学会雑誌2001;18:76-82

骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会(代表 折茂 肇)編:骨粗鬆症による骨折の危険因子.骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン.東京:ライフサイエンス出版、2006. p34-5.

「骨量測定」 日産婦誌53巻12号 p424-431

日本口腔外科学会資料

ウキペディア 「ビスホスホネート」





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