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お口の天疱瘡について

     
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天疱瘡 (てんぽうそう) (Penphigus)
  1:天疱瘡とは
 自分の上皮細胞を接着させる分子に対する抗体により、皮膚や粘膜に水疱(みずぶくれ)やびらんを生じる
 自己免疫性水疱症です。

          

        MSDマニュアル 「尋常性天疱瘡」 から引用


2:分類
 (1)尋常性天疱瘡(じんじょうせいてんぽうそう) (Pemphigus vulgalis)
     表皮内基底層直上に水疱ができる疾患です。
     天疱瘡のうち65%を占め、中高年に多い。
     口腔内病変が非常に多いのが特徴です。
     口腔のほか、咽頭、外陰部がよく侵されます。
     Nikolsky現象陽性、Tzanck試験陽性となります。
     蛍光抗体直接法で、表皮細胞間にIgGやC3の沈着を見ます。
     蛍光抗体間接法でも表皮細胞間に陽性となる。
     デスモグレイン1、デスモグレイン3に対する自己抗体(抗デスモゾーム抗体)によっておこる自己免疫疾患と
     考えられている。
     治療は副腎ステロイドの内服(40-60mg/日)となる。
     治療抵抗性のものでは、免疫抑制剤や血漿交換を行う。

 (2)落葉状天疱瘡(らくようじょうてんぽうそう)
     角質層下に水疱ができる疾患ですが、すぐ破損して浅いびらんと紅斑のみとなっていることが多いとされます。
     デスモグレイン1に対する自己抗体のみを血清中に有し、口腔粘膜病変はほとんど有りません。
     Nikolsky現象陽性、Tzanck試験陽性で蛍光抗体直接法では表皮細胞間にIgG/C3の沈着があります。
     治療は尋常性天疱瘡に準ずる。

 (3)増殖性天疱瘡(ぞうしょくせいてんぽうそう)
     尋常性天疱瘡と同様の部位に同様の症状で始まるがびらん面が再上皮化することなく次第に隆起してきます。
     表面が乳頭状、しばしば小水疱や小膿疱を有する。治療は尋常性天疱瘡に準じます。

 (4)紅斑性天疱瘡(こうはんせいてんぽうそう)
     顔面正中部を中心とした紅斑を特徴とし体幹にも小水疱・紅斑を主体とする天疱瘡様の皮疹を生じます。
     デスモグレイン1に対する自己抗体を有し、落葉状天疱瘡に移行することがあります。
     (そもそも落葉状天疱瘡の亜型であるとも言われています)。

 (5)腫瘍随伴性天疱瘡(しゅようずいはんせいてんぽうそう)
     悪性腫瘍や血液系腫瘍(とくにリンパ球系)に合併して生じます。
     口腔、眼粘膜が強く侵され(鼻腔、外陰部も)皮疹は多彩ですが、比較的限局して生じます。
     肺疾患を合併することがあり、予後に大きく影響します。

 (6)IgA天疱瘡
     小水疱、小膿疱よりなる皮疹で、血中に表皮細胞間物質に対するIgA抗体を有します。
     蛍光抗体直接法で、表皮細胞間にIgAの沈着を認めます。
      (間接法は抗体価によっては陽性とならないこともあります)


3:原因
 本来は体に生じないはずの自己抗体が産生され、自己抗体が水疱をつくる自己免疫性水疱症です。
 表皮細胞をつなぐタンパク(デスモグレイン:Dsg)に対する抗体(抗デスモグレイン抗体:抗Dsg抗体)が原因です。
 
 デスモグレインは、表皮、小腸、乳腺気管、膀胱、肝臓、心臓、胸腺などの臓器で細胞接着の機能を果たしていますが、
 抗体がこれを阻害し、細胞間の接着機能が損なわれて、発症します。

 IgGが蛋白の接着機能を抑えるため、水疱ができ、その水疱が簡単に破れてびらんが生じてしまいます。

        


4:疫学
 日本全国で5500人ほど(平成25年度)となっています。
 世界での報告を見ると、年間発生率が100万人あたり1人から100人までと、人種および地域による差は大きいようです。
 南米やアフリカの一部には、落葉状天疱瘡を風土病として持つ地域があることも知られています。

 発病年齢は40〜60歳代に多く認められます。
 性別では女性にやや多い傾向があります。


5:症状
 (1)全身症状
     高熱が出現し、脱水、全身倦怠感、食欲低下などが認められ、非常に重篤感があります。

 (2)皮膚病変
      大小さまざまな滲出性(浮腫性)紅斑、水疱を有する紅斑〜紫紅色斑が全身に多発散在し、急速に拡大します。
      一見正常にみえる皮膚に軽度の圧力をかけると表皮が?離し、びらんを生じます(ニコルスキー現象)。

 (3)粘膜病変
     口唇・口腔粘膜、鼻粘膜に発赤、水疱が出現し、血性痂皮を付着します。
     口腔〜咽頭痛がみられ、摂食不良をきたします。
     天疱瘡のなかで口腔粘膜に最も多く生じるのが尋常性天疱瘡です。

 (4)眼
     眼球結膜の充血、偽膜形成、眼表面上皮(角膜上皮、結膜上皮)のびらん(上皮欠損)などが認められ、
     重篤な眼病変では後遺症を残すことが多い。


6:診断
 (1)臨床検査
    @ニコルスキー現象
       一見正常にみえる皮膚に軽度の圧力をかけると表皮が?離し、びらんを生じる現象です。

    Aツァンク(Tzanck)試験
       ツァンク細胞を探すために、小水疱を擦過して採取する試験です。
       ツァンク細胞(多核巨細胞)は、以下の疾患で見られます。
         単純疱疹
         水痘と帯状疱疹
         天疱瘡
         サイトメガロウイルス

       手順
         小水疱の底部および側面から擦過して検体を採取し、潔なガラスの上に乗せます。
         ライト染色またはギムザ染色で染色します。
         油液浸レンズを使って顕微鏡検査。(多核巨細胞があれば陽性)

    B蛍光抗体法
       尋常性天疱瘡患者さんの皮膚をもちいて、直接蛍光抗体法で観察します。
       表皮細胞の表面にIgG自己抗体が沈着し網目状に見えます。


 (2)病理組織検査
     自己抗体(IgG)により棘融解を生じ、水疱が形成されます。
     粘膜固有層に基底層細胞が残存します。
     水疱内に、剥離した上皮細胞が浮遊します(棘融解細胞、Tzanck cell)。
     棘細胞間にIgG沈着がみられます。

     参照:日本口腔病理学会 「口腔病理基本アトラス 尋常性天疱瘡」   


7:治療
 天疱瘡は自己免疫疾患です。
 自己抗体を産生するB細胞は、骨髄、脾臓、リンパ節などの、皮膚、粘膜とは異なる全身に存在します。
 従って、治療には自己免疫反応を抑えるための、全身療法が必要です。

 全身療法として、最も中心的に用いられているのが、ステロイド内服です。
 他に、免疫抑制剤、血漿交換療法、大量γグロブリン療法などがあります。
 軽症を除いて、入院して治療することが必要です。

 (1)ステロイド内服
     投与量は、重症、中等症には、プレドニゾロン1.0mg/kg/日(体重60kgの人は、1日に60mg)が標準的です。
     軽症においては、0.5mg/kg/日(体重60kgの人は、1日に30mg)で効果が認められることもあります。

 (2)免疫抑制剤
     ステロイド単剤で治療効果が不十分な場合、あるいは、ステロイドの減量ができない場合に、免疫抑制剤を
     加えます。
     免疫抑制剤には、アザチオプリン、シクロスポリン、シクロフォスファミドなどがあります。
 
 (3)その他の治療法
     また、速効性の期待できる療法として大量γグロブリン療法、血漿交換療法、ステロイドパルス療法などが
     あります。
     これらの治療法をステロイド内服療法をうまく組み合わせて、病勢のコントロールを目指します。





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