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睡眠時無呼吸症候群について

     
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睡眠時無呼吸症候群 (SAS:Sleeping Apnea Syndorome )

 
睡眠時無呼吸症候群とは

睡眠時に呼吸停止または低呼吸になる疾患。

無呼吸・低呼吸指数」(Apnea Hypopnea Index; AHI)
 5以上かつ日中の過眠などの症候を伴うときを睡眠時無呼吸症候群とする定義が多い(米国睡眠医学会の提唱する基準より)。

無呼吸 
 口、鼻の気流が10秒以上停止すること。

低呼吸 
 10秒以上換気量が50%以上低下すること。

無呼吸・低呼吸指数(AHI) 
 1時間あたりの無呼吸と低呼吸を合わせたものを指す。


SASの分類
閉塞性睡眠時無呼吸症候群 (OSAS, Obstructive SAS) 
上気道の閉塞によるもので呼吸運動はある。
肥満者は非肥満者の3倍以上のリスクがあるとされる。
また、顎が小さい骨格であるほど発症のリスクも高い。

中枢性睡眠時無呼吸症候群(central SAS,CSAS) 
呼吸中枢の障害により呼吸運動が消失するもの。

混合性睡眠時無呼吸症候群(mixed SAS,MSA) 
閉塞型と中枢型の混合したもの。

ほとんどは閉塞型で中枢型は少ない。


睡眠時無呼吸症候群の臨床
原因
発症原因としては,そのほとんどは舌や咽頭軟部組織(軟口蓋や扁桃など)、顎顔面形態などの異常による上気道(咽頭腔)の解剖学的な狭小化に基づいている

閉塞性睡眠時無呼吸症候群 (OSA:Obstructive Sleeping Apnea) 
 睡眠中の筋弛緩により舌根部や軟口蓋が下がり気道を閉塞することが主な原因である。

中枢性睡眠時無呼吸症候群 (CSA:Central Sleeping Apnea) 
 脳血管障害・重症心不全などによる呼吸中枢の障害で呼吸運動が消失するのが原因である。

混合性睡眠時無呼吸症候群
 閉塞型と中枢型の混合したもの。

 OSAが84%、CSAが0.4%、混合型が15%を占める


疫学 
  有病率
SAS の有病率は30〜60 歳の男性の4%,女性の2% と言われており,女性は閉経後に増加する傾向にある。
わが国でも,潜在的患者数は200 万人と欧米に匹敵する患者数が報告されていて,決して少ない病気ではない。

好発年齢・性差など
成人で1-6% 、小児で2%ほど。
男女で有病率に差はない。すべての年齢で起こり得るが、もっとも一般的なのは55-60歳である。


症状
  主症状
就寝中の意識覚醒の短い反復、およびそれによる脳の不眠
昼間の傾眠傾向  抑うつ  頻回の中途覚醒  集中力の低下

睡眠時の無呼吸状態  激しい鼾(いびき)  夜間頻尿(2型糖尿病になりやすくなる)
起床時の頭痛  インポテンツ  月経不順  呼吸性アシドーシス  こむら返り  糖尿病性昏睡 など


合併症
肥満、高血圧、高脂血症、不整脈、多血症、虚血性心疾患、脳血管障害、糖尿病など。
動脈硬化性疾患の危険因子である。 


SASの検査・診断
  検査
睡眠ポリソムノグラフィ検査
睡眠ポリソムノグラフィ検査は、睡眠ポリグラフ (PSG) 検査とも呼ばれる。
入院して下記のようなデータ収集を行なうものである。携帯型の簡便な装置(アプノモニター)で在宅検査を行なう場合もある。

  脳波、眼電図、頤筋筋電図による睡眠ステージ
  口・鼻の気流、胸・腹部の動きによる呼吸パターン
  パルスオキシメーターによる経皮的動脈血酸素飽和度 (SpO2)




スクリーニング検査 
男性 4点、 女性 0点

BMI:
  <21.0・・・ 1点  21.0〜22.9・・・;2点、 23.0〜24.9・・・3点  25.0〜26.9・・・4点、 27.0〜29.9・・・5点、 30.0以上・・・6点

血圧(収縮期血圧 SBP)
  <140 かつ 拡張期血圧(DBP)<90・・・1点、140≦SBP<160または90≦DBP<100・・・2点
  160≦SBP<180または100≦DBP<110・・・3点、 SBP≧180またはDBP≧110・・・4点

いびき:
  いびきをかかない、時々、たまに、わからない;・・・0点  いびきをよくかく、いつも;・・・4点

以上4項目の合計点数が11点以上でOSASの可能性が高いと判断される。
14点以上ではさらに特異度があがる。


 
診断
睡眠1時間あたりの「無呼吸」と「低呼吸」の合計回数をAHI(Apnea Hypopnea Index)=無呼吸低呼吸指数と呼び、この指数によって重症度を分類する。

なお、低呼吸(Hypopnea)とは、換気の明らかな低下に加え、動脈血酸素飽和度(SpO2)が3〜4%以上低下した状態、もしくは覚醒を伴う状態を指す。

無呼吸が一晩(7時間の睡眠中)に30回以上、 もしくは1時間あたり5回以上確認されると睡眠時無呼吸症候群と診断される。


アメリカ睡眠学会(AASM,1999年)によるOSASの診断基準
閉塞型呼吸イベントおよび呼吸努力関連覚醒(RERA)イベントの定義,重症度の定義
1.診断基準:
 以下のA+ CあるいはB+ Cを要する

 A.日中傾眠があり,他の因子で説明できないこと.

 B.下記のうち2つ以上あり,他の因子で説明できないこと.
     睡眠中の窒息感やあえぎ呼吸.
     睡眠中の頻回の覚醒.
     熟睡感の欠如.
     日中の倦怠感.
     集中力の欠如.

 C.終夜モニターで睡眠中に1時間に5回以上の閉塞型呼吸イベントがあること,閉塞型呼吸イベントは閉塞型無呼吸/低呼吸あるいは呼吸努力関連覚醒(RERA)のいずれかの組み合わせによる.

2.閉塞型睡眠時無呼吸/低呼吸の定義
 以下のA+ BあるいはB+ Cを要する.無呼吸と低呼吸を区別する必要はない.

 A.呼吸振幅がベースラインから50%より大きく減少.

 B.呼吸振幅の低下が50%未満であっても,3%より大きい酸素飽和度の低下が覚醒を伴う.
 
 C.イベントの持続は10秒以上.

3.呼吸努力関連覚醒(RERA)イベントの定義
 呼吸努力の増加により覚醒を来たすが無呼吸や低呼吸の基準を満たさないもので,以下のA+ Bを要する.
 
 A.徐々に食道内圧が低下し,突然陰圧の程度が小さくなり,覚醒とともに終了する.

 B.イベントの持続は10秒以上.


 
SASの治療
  SASの初期治療指針
初期介入は行動療法であり、酒や睡眠薬の中止などを行う。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群治療法
減量療法
患者が肥満者の場合、減量により上気道周辺の脂肪の重さによる狭窄を改善する。


スリープスプリント
睡眠時無呼吸症候群の歯科的な治療器具である。
睡眠時に着用して、下顎を前進させた状態を固定することにより、上気道の閉塞を防ぐ効果がある。
軽度の睡眠時無呼吸症候群に適用する。(重度の場合はCPAPを適用する。)
残存歯が少ない場合は適用できない。
口を完全に閉じた状態にするタイプの場合は、鼻腔の通りが悪い場合には適用できない。


持続陽圧呼吸療法(nasal CPAP:nasal continuous positive airway pressure)
装置よりチューブを経由して鼻につけたマスクに加圧された空気(陽圧の空気)を送り、その空気が舌根の周囲の軟部組織を拡張することで吸気時の気道狭窄を防ぐ方法。

(1)固定CPAPは
 患者があらかじめ検査入院するか計測器を自宅で取り付けて適切な圧力を測定し、それを医師が装置に設定し、患者が使うもの。
 設定値が高い場合、患者の入眠が妨げられることもあるため、始動時からある程度の時間は弱い圧力で作動し、徐々に設定した圧力に変わるようになっているものがある。

(2)オートCPAP
 設定を必要とせず、患者の状態に合わせてリアルタイムで圧力が変化するようになっている。
 また、オートCPAPにはデータを記録するための機能を持っており、そのデータを医師が回収して分析することも可能である。


外科的治療(口蓋垂軟口蓋咽頭形成術)
口蓋垂、口蓋扁桃、軟口蓋の一部を切除し、気道を広げる。


中枢性睡眠時無呼吸症候群
原因となる脳疾患、心疾患(虚血性心疾患など)などの治療。
在宅酸素療法。
BiPAP(バイパップ)療法が有効であるとの報告あり。


参考資料

『睡眠時無呼吸症候群』 本間栄 克誠堂出版 2009年12月

『睡眠時無呼吸症候群診療ハンドブック』 榊原 博樹 医学書院 2010年07月

「睡眠時無呼吸症候群の診断と治療」 村田朗 日医大医会誌 2007; 3(2) p96-p101







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