平滑舌 (Smooth tongue) |
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1:平滑舌とは
平滑舌とは、舌にある糸状乳頭が萎縮して舌背表面が平滑となり、光沢を呈する状態です。
赤色を呈し、灼熱感あるいは痛みを伴うことがあります。

2:原因
各種の貧血に伴って発症する場合が多いとされています。
鉄欠乏性貧血によるプランマー・ビンソン(Plummer-Vinson)症候群、
悪性貧血によるハンター(Hunter)舌炎、
シェーグレン症候群による口腔乾燥症がもたらす場合、
ビタミンB複合体欠乏によるペラグラ
口腔カンジダの増加に伴って出現する場合、などが挙げられます。
3:症状
(1)口腔内所見
舌背部全域にわたり表面の糸状乳頭が消失し平滑を呈します。
肉眼的には萎縮性病変であり、組織、細胞の縮小で体積が減少した状態となります。
灼熱様疼痛や、しみるといった症状が発現します。
時に味覚異常や嚥下障害が認められることがあります。

(2)全身症状を伴う場合
匙状爪(spoon nail)がみられます。
また,鉄欠乏性貧血が亢進すると,舌炎,口角炎,食道粘膜の萎縮性変化に伴う嚥下障害がみられ、
これらの症状を併せてプランマー・ビンソン(Plummer-Vinson)症候群と呼ばれています。

4:各種の全身疾患と平滑舌
(1)鉄欠乏性貧血によるプランマー・ビンソン症候群
最も高頻度にみられる貧血であり、女性に多く、月経過多や胃潰瘍などで鉄分が喪失することにより生じます。
貧血が高度になると平滑舌を呈する様になります。
鉄欠乏性貧血によるPlummer-Vinson症候群では、鉄の吸収および代謝異常に起因して鉄欠乏性貧血、口内炎
および食道ウェッブ(食道粘膜の萎縮によって生ずるヒダ状の狭窄で,ほとんどが上部食道に生ずる)が出現し、
嚥下障害を伴います。
詳細は、血液疾患 「鉄欠乏性貧血」へ
(2)悪性貧血によるハンター(Hunter)舌炎
ハンター舌炎はビタミンB12の欠乏によっておきる舌の炎症で、舌が平らになったり、赤くなります。
自覚症状としては舌が痛んだり、ヒリヒリしたり、灼熱感が生じるほか、味覚障害がおきたり、食べ物が
しみたり、舌が乾燥するなどの症状がみられます。
ハンター舌炎は、胃炎や胃がん手術後によるビタミンB12の吸収障害、偏った食生活など、ビタミンB12の
摂取不足によって発症します。
最近では逆流性食道炎、胃潰瘍の薬の長期服用によって発症する人も増えています。
詳細は、血液疾患 「悪性貧血」へ
(3)シェーグレン症候群による口腔乾燥症がもたらす平滑舌
シェーグレン症候群により著しい口腔乾燥が起こると、平滑舌が見られる様になります。
これは、カンジダ症の関与に寄る綿もあると思われます。
詳細は、「シェーグレン症候群」 および、「口腔乾燥症」へ
(4)口腔カンジダの増加に伴って出現する平滑舌
萎縮性カンジダ症の場合、平滑舌が発症する事があります。
詳細は、 「口腔カンジダ」 へ
5:診断
(1)検査所見
鉄欠乏性貧血:小球性低色素性貧血
ヘモグロビン(Hb):酸素分子と結合する性質を持つ血色素量---------------------↓
ヘマトクリット(Hct):血液中に占める赤血球の体積の割合-----------------------↓
平均赤血球容積(MCV):赤血球1個当たりの平均的な大きさ--------------↓
平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC):赤血球1個当たりの平均ヘモグロビン濃度---↓
血清鉄--------↓。
悪性貧血:大球性正色素性貧血
骨髄中に核形態の異常を示す巨赤芽球を認めます。
MCV↑
MCHC→
血清ビタミンB12↓
6:治療
原疾患の治療により症状が軽快することが多いといわれています。
鉄欠乏性貧血の場合は、貧血の原因疾患の治療、鉄剤の投与を行います。
またHunter 舌炎の場合は、ビタミンB12の注射を行います。
シェーグレン症候群の場合は、口腔乾燥に対する対症療法(口腔保湿剤や唾液腺マッサージなど)や人工唾液、
含嗽剤、漢方等を検討します。
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