ハンター舌炎 (Hunter Glossitis) |
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1:ハンター舌炎とは
ビタミンB12の欠乏で発症する舌炎で、舌表面の糸状乳頭が委縮して赤く、平滑になる病気です。
ビタミンB12が欠乏する疾患としては、悪性貧血です。
参考:「悪性貧血」へ
2:原因
(1)ビタミンB12の欠乏
ビタミンB12の欠乏によって発症します。
通常の栄養状態であれば、ビタミンB12の欠乏ということはありません。
しかし胃の全摘出手術などを行ったような特別な事情の場合には、ビタミンB12の不足を起こします。
それで舌に炎症を起こし、この病気を発症することになります。
(2)ビタミンB12の吸収機序
ビタミンB12 は消化管から吸収されるが,吸収するプロセスに異常が生じると生体内で欠乏状態となります。
ビタミンB12は食物中でタンパク質と結合しているため、そのタンパク質を分解する胃酸とペプシンが必要です。
遊離したビタミンB12はハプトコリンと結合して十二指腸に移動後,ハプトコリンが膵酵素によって分解される
ことで再び遊離します。
その後ビタミンB12 は胃壁細胞から産生された内因子と結合する。
内因子と結合することで分解されずに回腸遠位部まで到達し,腸上皮細胞から吸収されます。
(3)ビタミンB12 が欠乏する原因
胃全摘後、H2受容体拮抗薬,抗てんかん薬,メトホルミン塩酸塩、経口避妊薬,萎縮性胃炎,
慢性アルコール中毒,吸収不良症候群,プロトンポンプ阻害剤の長期投与,慢性膵炎,炎症性腸疾患、
盲端症候群、腸アミロイドーシス、など。
3:ビタミンB12
詳細は、「ビタミン類」へ
4:症状
(1)舌炎の症状
舌乳頭の萎縮と発赤、舌の平滑化がみられ、しばしば舌の灼熱感、疼痛があります。

(2)貧血症状
他の貧血と同じく息切れや易疲労感などを随伴します
(3)神経症状
振動覚や位置覚の低下、知覚障害、深部腱反射亢進、意識障害、認知症様症状などの症状を呈します。
5:診断
(1)問診
胃切除、萎縮性胃炎(Helicobacter pylori感染)の既往が診断のポイントになります。
(2)血液検査
赤血球数、ヘモグロビン(Hb)、ヘマトクリット(Ht)、血清ビタミンB12の低下がみられます。
大球性正色素性貧血:MCV↑、MCHC→、血清ビタミンB12↓。
平均赤血球容積(MCV)は高値を示します。(大球性)
平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)は正常値です。
骨髄中に核形態の異常を示す巨赤芽球を認める。
(3)鑑別診断
以下の病気との鑑別が必要になります。
カンジダ症による萎縮性舌炎
口腔乾燥症
鉄欠乏性貧血によるプランマー・ビンソン症候群
6:治療
(1)舌への局所的治療
舌粘膜の糸状乳頭が萎縮します。
糸状乳頭の機能としては、食物をなめとりやすくしており、また舌の感覚を鋭敏にする感覚装置である
とも考えられています。
この糸状乳頭が萎縮すると舌の防御機能も低下し、いろいろな刺激が痛みとなって感じます。
よって出来るだけ刺激を減らして、清潔に保つことが必要になります。
保清のための含嗽
刺激の少ない、アズノールうがい液R、ネオステリングリーンR などを使用します。
(2)悪性貧血への全身的治療
参考:「悪性貧血」へ
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参考資料 |
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「診断に苦慮されたHunter 舌炎の1 例」 任 智美、 耳鼻免疫アレルギー(JJIAO) 38(1): 9―12, 2020
「ハンター舌炎に対するビタミンB12内服療法の臨床的検討」 黒木 祐吾 他 、歯科薬物療法 Vol34 No1 2015
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