腫瘍とは |
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細胞が「自律性」に無制限の分裂、増殖をなし、量的に増大するものを腫瘍といいます。 たとえば、手足などに傷を負った場合、極端に大きな損傷でなければ、自然治癒力によってほぼ元の状態に復元します。 これは、細胞のコントロールされた有限性の増殖によるものです。 しかし腫瘍の場合には、コントロールを受ないで勝手に自律的増殖が行われてしまいます。 特に悪性腫瘍では、この増殖が無限で、やがては宿主を死に導いてしまいます。
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口腔領域の腫瘍 |
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口腔領域に発生する腫瘍は、歯原性のもの、非歯原性のものとがあり、さらに非歯原性は、良性と悪性に分けることができます。 歯原性腫瘍 (上皮性、間葉性、混合性)
非歯原性腫瘍 (上皮性、間葉性、混合性)
1:歯原性腫瘍
〈良性腫瘍〉
A:外胚葉性腫瘍
エナメル上皮腫、腺様歯原性腫瘍、歯原性石灰化上皮腫
B:中胚葉性腫瘍
象牙質腫、セメント質腫、セメント質形成線維腫、
歯原性線維腫、歯原性粘液腫
C:混合腫瘍
エナメル上皮線維腫、エナメル上皮線維歯牙腫
歯牙エナメル上皮腫、歯牙腫(集合性、複雑性)
〈悪性腫瘍〉
A:歯原性癌腫
悪性エナメル上皮腫、原発性顎骨内癌、歯原性嚢胞からの癌腫
B:歯原性肉腫
エナメル上皮線維肉腫、エナメル上皮歯牙肉腫
2:非歯原性腫瘍
〈良性腫瘍〉
A:上皮性腫瘍
腺腫、乳頭腫
B:非上皮性腫瘍
線維腫、粘液腫、脂肪腫、筋腫、骨腫、軟骨腫、血管腫、リンパ管腫、神経腫
組織球性腫瘍、巨細胞腫、骨芽細胞腫、化骨性線維腫、その他(エプーリスなど)
〈悪性腫瘍〉
A:上皮性腫瘍 (癌腫)
扁平上皮癌(舌癌、歯肉癌、口底癌、頬粘膜癌)、基底細胞癌、腺癌、移行上皮癌、未分化癌
B:非上皮性腫瘍(肉腫)
線維腫肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、筋肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫、血管肉腫、リンパ管腫、
悪性神経鞘腫、Ewing肉腫、悪性線維性組織球腫、など
C:その他の悪性腫瘍
悪性黒色腫、悪性リンパ腫

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歯原性腫瘍(odontogenic tumor) |
歯の発生に関係する細胞から由来する腫瘍を歯原性腫瘍または歯系腫瘍といいます。 これには上皮性、間葉性、混合性の腫瘍があります。 一般的に、歯原性腫瘍は良性腫瘍であるが、まれに悪性化するものあります。
 45歳男性 エナメル上皮腫
 28歳女性 エナメル上皮腫
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非歯原性腫瘍 |
良性腫瘍 上皮性腫瘍−−−乳頭腫、腺腫 非上皮性腫瘍−−線維腫、血管腫、リンパ管腫、神経鞘腫 など
 繊維腫 血管腫
悪性腫瘍 上皮性腫瘍−−−癌腫 (舌癌、歯肉癌、唾液腺癌など) 非上皮性腫瘍−−肉腫 (骨肉腫、悪性リンパ腫など)

舌癌 悪性黒色腫 悪性黒色腫
参照: 口腔内の悪性腫瘍 TNM分類とステージ分類 進展度による呼称
口腔がんの診査方法 口腔内蛍光観察装置と口腔がんスクリーニング
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補足 |
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良性腫瘍と悪性腫瘍の相違点 |
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良性腫瘍 |
悪性腫瘍 |
発育速度 |
遅い |
速い |
増殖態度 |
膨張性(限局性) |
浸潤性 |
再発 |
ほとんどなし |
しばしばあり |
転移 |
なし |
あり |
潰瘍形成 |
なし |
あり |
放射線感受性 |
低い |
高い |
細胞異型の程度 |
少ない |
多い |
核分裂像 |
少ない |
多い |
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癌腫と肉腫の相違点 |
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癌 腫 |
肉 腫 |
母組織 |
上皮性 |
間葉性 |
発生率 |
多い |
少ない |
好発年齢 |
高年齢に多い |
全年齢層(若年者にも発症) |
潰瘍形成 |
多い |
比較的少ない |
腫瘤の増殖 |
潰瘍型、分葉状浸潤性 |
初期膨隆性、血管性に富む |
転移 |
リンパ行性(末期血行性) |
通常血行性(全身的で早期に迅速) |
悪性度、予後 |
悪い |
より悪い |
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参考資料 |
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「The Utility of Optical Instrument "Oralook " in the Early Detection of High-Risk Oral Mucosal Lesions.」 MORIKAWA・T、KOSUGI・A SHIBAHARA・T Anticancer Research 39:2519-2525 2019
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