1:お口について
お口は、消化管の最前端で、食物を取り入れる部分です。
同時に、鼻腔と並んで呼吸器の一部でもあります。
お口は生体内と外界との境界にあたり、ここを経て色々な物が入って来ます。
一つは身体にとって必要不可欠な食物と酸素です。
もう一つは、入って来て欲しくない様々な病気です。
病は口から入り、禍は口から出てしまいます。
また、お口の病気は、様々な身体の病気と相互に関係していることが分かってきました。
歯周病と糖尿病の関係は以前から取り沙汰されていましたが、心臓や腎臓の病気もお口の病気との関連が言われる
ようにもなりました。
口腔機能とフレイルの密接な関係も明らかにされて来ています。
お口の事と、身体の健康や病気について、改めて考えて見たいと思います。
2:お口から入る病気
動物は口からエネルギーとなる食べ物を取ります。
その中には病原菌と呼ばれる招かざる物も含まれているかもしれません。
食べ物だけでは、何か口に触れただけでも病気がなることもあります。
自分の手に付いた何か、あるいは口にする食器や器具などの事もあるかもしれません。
また、激しく動いた時には口で息をする事もあります。
その時にも、病気は忍び寄ってきます。
お口は外の世界との玄関でがある故、様々な病気の門戸にもなってしまう訳です。
(1)経口感染する主な病原体
腸管出血性大腸菌やノロウイルス、ロタウイルスなどは、病原体を含む水や食 べ物を介して感染します。
赤痢やコレラ等も経口感染といえます。
いわゆる食中毒は経口感染といえます。
また病原体を含む糞が手指を介して口へ入る経路を特に糞口感染と言います。
@細 菌
黄色ブドウ球菌、腸管出血性大腸菌、カンピロバクター、赤痢菌など
Aウイルス
ロタウイルス、ノロウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルスなど
(2)接触感染する主な病原体
感染源である人に触れることで伝播する直接接触感染(握手、だっこ、キス 等)と、
汚染されたものを介して伝播する間接接触感染(ドアノブ、手すり、 遊具等)があります。
皮膚や粘膜との接触、または患者周囲の物や手を介して病原体が伝播し、感染します。
@細菌
黄色ブドウ球菌、MRSA、腸管出血性大腸菌、など
Aウイルス
RSウイルス、エンテロウイルス、アデノウイルス、ロタウイルス、ノロウイルス、
水痘・帯状疱疹ウイルス、など
(3)飛沫感染する主な病原体
感染している人が咳やくしゃみをした際に口から飛ぶ、病原体がたくさん含 まれたしぶき(飛沫)を、近くにいる
人が吸い込むことで感染します。
飛沫 が飛び散る範囲は 1〜2m です。
なお、飛沫感染するものは、接触感染も起こりえます。
@細 菌
A群溶血性レンサ球菌、百日咳菌、インフルエンザ菌、マイコプラズマ、など
Aウイルス
かぜ症候群のウイルス、従来のコロナウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、風しんウイルス、
ムンプスウイルス、
SARS、MERS、新型コロナウイルス、など
(4)空気感染する主な病原体
感染している人が咳やくしゃみをした際に、口から飛び出した飛沫が乾燥し、 その芯(飛沫核)となっている
病原体が感染性を保ったまま空気の流れによっ て拡散し、近くの人だけでなく、同室(閉じられた空間)にいる
人もそれを吸い込んで感染します。
@細菌
結核菌
Aウイルス
麻しんウイルス、水痘、帯状疱疹ウイルス
3:お口の病気と身体の病気
最近、お口の病気は単に局所的問題だけで無く、色々な全身疾患と相互に関係していることが分かってきました。
歯周病と糖尿病や心筋梗塞は、相乗作用で良くなったり悪化したりするという事も解明されつつあります。
また、口腔細菌と誤嚥性肺炎、口腔機能とフレイルや認知症など、お口の状態が良くなれば予防や治療の助けになる病気
についても多くの知見が寄せられています。
その観点から、改めて全身疾患についても考えてみたいと思います。
|