顎骨異常を主徴とする症候群 |
顎骨異常を主徴とする症候群
T:Williams (ウィリアムズ)症候群
U:de Lange (デ・ランケ)症候群
V:Rubinstein-Taybi
(ルビンシュタイン・テイビ)症候群
W:口・顔・指症候群1型 (oral-facial-digital syndrome type1)
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T:ウイリアムズ症候群 ( Williams Syndrome) |
1:概念
(1)特徴
成長障害、知的能力障害、妖精様顔貌、心臓血管の奇形、などを特徴とします。

(2)歴史
1961年にJ.C.P.Williamsが報告し、1963年にA.JBeurenが症候群として確立させました。
2:原因遺伝子と遺伝形式
7番染色体(7p11.23)にあるエラスチン ELN遺伝子、
空間認知関連のLIM-kinase1 LIMK1遺伝子,
複製因子CサブユニットRFC2遺伝子などの、微小欠失による隣接遺伝子症候群です。
常染色体優性遺伝です。

3:疫学
(1)出生頻度
2万人に1人。
4:ウィリアムズ症候群の症候・症状
(1)全身的特徴
知的能力障害、発育遅延
妖精様顔貌(elfin face) 、腫れぼつたい眼、平らな鼻根、上向きの鼻孔、厚い口唇、長い人中と下膨れの頬,
視覚・認知障害(立体配列が困難),
関節運動制限 」
心血管系異常(大動脈弁狭窄,末梢性肺動脈狭窄)など.
幼児期の多弁
陽気で社交的な性格(カクテルパーティー様性格)もあります。
『スペシャルニーズデンティストリー障害者歯科 第2版』 から引用
(2)合併症
心室中隔欠損、動脈管開存、脳血管狭窄.腎血管狭窄、
膀胱憩室、
鼠径ヘルニア(半数以上),
乱視、斜視、乳児期の哺乳障害、
一過性高カルシウム血症,不機嫌や音への過敏など.
5:ウィリアムズ症候群と歯科医療
(1)歯科的特徴
エナメル質低形成(齪蝕が多い)、矮小歯など.
(2)歯科的対応
早期からの齪蝕予防処置が重要である.
音刺激の過敏への配慮,知的能力障害や心疾患への対応を行う.
(補足)ウイリアムズ症候群と自閉症
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U:デ・ランケ(de
Lange)症候群 |
1:概念
(1)特徴
Brachmann-deLang症候群とも呼ばれています。
特徴的な顔貌、知的能力障害、上肢奇形を特徴とします。
(2)歴史
1916年にW.R.C.Brachmann(1888〜1969)が最初に報告しました。
1933年にCorneliaC. deLange (1871〜1950)が報告しました。
(3)原因遺伝子と遺伝形式
5番染色体(5p13.2)にあるコヒーシン複合体の構成要素NIPBL遺伝子のほか、同様の働きをするX染色体上の
SMCILI遺伝子や、10番染色体上のSMロヲ遺伝子の変異によります。
ほとんどが散発性です。
2:疫学
3〜5万人に1人とまれな症候群です。
3:デ・ランケ症候群の症候・症状
(1)全身的特徴
知的能力障害、成長発育遅延、大理石様皮層紋理、小頭,短頭、短い手足、短趾症、多毛症、肘関節の伸展制限、
母指の近位位置異常、小指内簿、単一手掌屈曲線、第2.3趾間の翼状膜形成 、など。
(2)特徴的顔貌
低い前頭毛髪線、濃い眉、上向きの鼻孔,
長い人中、口角下垂、長い腱毛や耳介低位、など。
『スペシャルニーズデンティストリー障害者歯科 第2版』 から引用
(3)合併症
新生児期の哺乳障害および呼吸障害、
てんかん、停留睾丸、胃食道逆流症.
3:デ・ランケ症候群と歯科医療
(1)歯科的特徴
上唇小帯の強直、高口蓋、 口蓋裂、 口蓋垂裂、
萌出遅延、小顎症や薄い口唇、など.
(2)歯科的対応
知的能力障害への対応を行う必要が有ります。
小顎や小帯強直でブラッシング困難であることが多い.
定期的な清掃指導やPMTCを行います。
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V:ルビンシュタイン・テイビ (Rubinstein-Taybi)症候群 |
1:概念
(1)特徴
知的能力障害,特徴的な顔貌,低身長,幅広い栂指趾を伴う症候群です。
(2)歴史
1963年にJ.H.Rubinstein(1925〜2006)と、H.Taybi (1919〜2006)が報告しました。
(3)原因遺伝子と遺伝形式
16番染色体(16p13.3)にあるコアクチベータ転写因子CREB結合タンパクCRFBRP遺伝子の欠失.
もしくはナンセンス変異によります。
また、22番染色体(22q11.3)にあるERW遺伝子の変異も原因として考えられています。
ほとんどが散発性です。
2:疫学
(1)出生頻度
12万5千人に1人.
3:ルビンシュタイン・テイビ症候群の症候・症状
(1)全身的特徴
中等度から重度の知的能力障害、低身長小頭症、大泉門開大.
幅の広い母指趾、小さな指、斜視、多毛、停留睾丸、歩行障害、皮層紋理、単一手掌屈曲線など.
(2)特徴的顔貌
目立つ前額部,濃い眉毛、長い腱毛,
眼瞼裂斜下、内眼角賛皮、眼間開離、前上顎部の低形成広い鼻稜、低く付着した鼻柱、鼻中隔簿曲、
小さい口や尖ったオトガイ、耳介変形、後頭部毛髪線低位、など。
『スペシャルニーズデンティストリー障害者歯科 第2版』 から引用
(3)合併症
哺乳障害、呼吸器感染の反復、先天性心疾患,
脳梁欠損骨折、思春期早発、白内障、緑内障、など。
4:ルビンシュタイン・テイビ症候群と歯科医療
(1)歯科的特徴
犬歯舌側に距錐咬頭(talon cusp)がみられる.
小顎症,叢生高口蓋や狭口蓋などがある.
(2)歯科的対応
知的能力障害への対応を行う事が必要です。
口腔清掃困難になりやすいことから,清掃指導やPMTCを行います。
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W:口・顔・指症候群1型 (OFD-1:oral-facial-digital
syndrome type1)
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1:概念
(1)特徴
口腔内、顔面、指の奇形を特徴とします。
(2)歴史
1961年にR.JGorlin (1923〜2006)が報告しました。
(3)原因遺伝子と遺伝形式
X染色体(Xp22.2)にあるQFDI遺伝子の変異が原因です。
X連鎖性優性遺伝.
2:疫学
(1)出生頻度
4万4千人に1人. ほぼ全例が女性です。
3:口・顔・指症候群1型の症候・症状
(1)全身的特徴
内眼角賛皮、眼間開離、広い鼻梁、平らな鼻尖、
未発達な鼻翼、脅指症、合指症、短い指,
乾燥皮膚、頭部脱毛斑や疎な頭髪、など.
『スペシャルニーズデンティストリー障害者歯科 第2版』 から引用
(2)合併症
知的能力障害、多発性嚢胞腎、水頭症、
水無脳症や脳梁欠損があります。
4:口・顔・指症候群1型と歯科医療
(1)歯科的特徴
頬粘膜歯槽堤間の小帯過剰、正中唇裂、小顎症、口唇裂,口蓋裂、
分葉舌、舌に過誤腫ができることがあります。
(2)歯科的対応
口唇裂,口蓋裂,小帯過剰や過誤腫に対する口腔外科的処置を行います。
知的能力障害への対応も行う必要が有ります。
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参考資料 |
スペシャルニーズデンティストリー
ダウン症の全てが分かる本
ダウン症ハンドブック

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