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皮膚・毛髪・爪の異常を主徴とする症候群について

    
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皮膚・毛髪・爪の異常を主徴とする症候群

 皮膚・毛髪・爪の異常を主徴とする症候群

    T:無汗性外胚葉異形成症 (anhidrotic (hypohidrotic) ectodermal dysplasia)

    U:パピロン・ルフェーブル症候群( Papillon-Lefevre syndrome)

    V:基底細胞母斑症候群 (basal Cell nevus syndrome)

    W: シェーグレン・ラルソン症候群  (Sjogren-Larsson syndorome)

    X: エーラス・ダンロス症候群 (Ehlers-Danlos syndrome)


T:無汗性外胚葉異形成症 (anhidrotic (hypohidrotic) ectodermal dysplasia)
1:概念
(1)特徴
  
    外胚葉に関連した器官(皮膚,毛髪,エナメル質など)の異常を特徴とする症候群です。
(2)歴史  
    1966年にE.C.Passargeらが初めて報告しました。   
    1999年にA.W.Monreal, 2001年にD. J.Headonらが原因遺伝子を報告しました。  

(3)原因遺伝子と遺伝形式    
    2番染色体(2ql3)にあるEDAR遺伝子、1番染色体(1q42.2-q43)にあるEDARADD遺伝子の変異によります。  
    また, X染色体(Xql2-ql31)にあるEDA遺伝子の変異によるものもあります。
    常染色体劣性遺伝であるが,EDA遺伝子によるものはX染色体連鎖型劣性遺伝です。


2:疫学
(1)出生頻度
    10万人に1人。


3:無汗性外胚葉異型性症の症候・症状
(1)全身的特徴
  
    無汗症、疎な頭髪,低い鼻根、未発達な鼻翼、老人様顔貌、など。   

(2)眼の症状    
    涙の欠乏、涙の排出の障害、角膜障害、水晶体混濁、白内障。    

    

(3)合併症   
    白内障,視覚障害、聴覚障害、など。


4:無汗性外胚葉異型性症と歯科医療
(1)歯科的特徴
  
    部分無歯症、歯の形成異常、切歯や犬歯の円錐歯、タウロドント、   
    口腔鼻粘膜乾燥、口内炎や嚥下困難、など。

    

(2)歯科的対応   
    う蝕予防処置および無歯症に対する義歯の製作を行います。   
    口腔乾燥対策を行います。


U:パピロン・ルフェーブル症候群( Papillon-Lefevre syndrome)
1:概念
(1)特徴
  
    重度歯周炎と掌蹴角化症が特徴です。

     

(2)歴史   
    1924年にM.M.PapillonP.Lefevreが報告しました。   
    1999年にC.Toomesらが原因遺伝子を報告しました。  

(3)原因遺伝子と遺伝形式    
    11番染色体(11ql4.1-q14.3)にあるカテプシンCCZSC遺伝子の変異によります。   
    常染色体劣性遺伝です。


2:疫学   
(1)出生頻度
 
    10万人に1人。


3:パピヨン・ルフェーブル症候群の症候・症状
(1)全身的特徴
  
    掌蹴角化症
    硬膜の石灰化、皮膚の早期加齢、好中球機能障害および角化症などがあります。

     『スペシャルニーズデンティストリー障害者歯科 第2版』 から引用

(2)合併症   
    上皮内癌があります。

    上皮内癌(CIS:carcinoma in situ)
      上皮細胞と間質細胞(組織)を隔てる膜(基底膜)を破って浸潤していない腫瘍(癌)
      浸潤していないため、通常はがん(悪性新生物)には含めません

        


4:パピヨン・ルフェーブル症候群と歯科医療
(1)歯科的特徴
  
    重度歯周炎(乳歯と永久歯の動揺と早期脱落,歯槽骨吸収,口臭)、永久歯の早期萌出   
    口腔粘膜の潰瘍形成や舌乳頭の萎縮などがあります。    

(2)歯科的対応   
    限局性侵襲性歯周炎の原因菌とされるAggregatibacter actinomycetemcomitansの関与が疑われている.   
    急速な歯周組織の破壊を防ぐために抗菌薬などを適切に用いる.


 
V:基底細胞母斑症候群 (basal Cell nevus syndrome)
1:概念
(1)特徴  
 
    ゴーリン(Gorlin)症候群とも呼びます。  
    基底細胞癌、骨格異常、歯原性角化嚢胞が特徴です。

(2)歴史   
    1960年にR.J.Gorlin (1923〜2006) とR.W.Goltz(1923〜2014)が報告しました。  
    1996年にR-L.Johnsonが, 1999年に1.Smythが原因遺伝子を報告しました。   

(3)原因遺伝子と遺伝形式    
    9番染色体(9q22.32)にあるPTCH1遺伝子、あるいは1番染色体(1p34.1)にあるPTCH2遺伝子の変異によります。   
    常染色体優性遺伝であるが,、20〜30%は散発性です。
    母体の年齢にも影響を受けます。


2:疫学   
(1)出生頻度

    6万人に1


3:基底細胞母斑症候群の症候・症状
(1)全身的特徴   
    多発性母斑様基底細胞腫、消化管ポリープ、基底細胞癌(発症平均年齢30)、手掌と手背の点状小窩などが
    あります。

    

(2)合併症   
    分岐肋骨、側湾症、胸の奇形、Sprengel変形,   
    水頭症、短指症、卵巣腫瘍(癌.線維腫)、髄芽腫  
    心線維腫、肺嚢胞、脳性巨人症、大頭症、眼間隔離,   
    大脳鎌の石灰化   
    眼異常(斜視,白内障,緑内障、虹彩の部分欠損)   
    潰瘍性大腸炎、などがあります。


4:基底細胞母斑症候群と歯科医療
(1)歯科的特徴
 
    歯原性角化嚢胞を含む顎嚢胞.   
    大きな顎,口唇裂、口蓋裂,埋伏歯,転位歯   
    無痛性開口障害、下顎骨筋突起の肥厚、があります。

    

(2)歯科的対応   
    口腔外科的な嚢胞摘出が必要となります。


W: シェーグレン・ラルソン症候群  (Sjogren-Larsson syndorome)
1:概念
(1)特徴
  
    皮膚やエナメル質の形成異常が特徴である.    

(2)歴史   
    1957年にK、G.T.Sjogren(1896〜1974)とT.K.L.Larsson(1905〜1998)が報告しました。  
    1997年にG.R.Rogersらが原因遺伝子を報告しました。

(3)原因遺伝子と遺伝形式   
    17番染色体(17p11.2)にある脂肪アルデヒド脱水素酵素ALDH3A2遺伝子の変異によります。  
    中鎖脂肪酸の摂取調整により症状が改善します。   
    常染色体劣性遺伝です。 


2:疫学   
(1)出生頻度
    25万人に1.


3:シェーグレン・ラルソン症候群の症候・症状
(1)全身的特徴
  
    角質増多(先天性魚鱗癬様紅皮症に類似し、首と下腹部に多い)
    けいれん性四肢麻揮
    歩行障害および網膜の白斑や黄斑がある髪、爪や汗には影響がありません。    

(2)合併症   
    網膜色素変性症,てんかんや低身長があります。


4:シェーグレン・ラルソン症候群と歯科医療
(1)歯科的特徴
  
    エナメル質形成不全があります。

    

(2)歯科的対応   
    早期からの餓蝕予防処置が重要となります。
     てんかんへの対応も行います。


X: エーラス・ダンロス症候群 (Ehlers-Danlos syndrome)
1:概念
(1)特徴  

    先天性結合組織代謝異常症で、6型に分類されています    
    古典型、関節型、血管型、後側湾型,多発関節弛緩型、皮膚脆弱型
 
    皮膚の過弾力伸展、皮膚毛細血管の脆弱性、関節の過可動を特徴とします。

(2)歴史   
    紀元前400年頃にヒポクラテスが,本症候群を記述したといわれています。  
    1657年にJ.JvanMeekeren (1611〜1666),、1901年にE.L.Emers (1863〜1937)
    1908年にH.ADanlos (1844〜1912)が報告しました。

(3)原因遺伝子と遺伝形式    
    古典型はV型コラーゲンCOL5AI遺伝子(9q34.3), COZ,5A2遺伝子(2q32.2)の変異.   
    血管型はV型コラーゲンCOL3AI遺伝子(2q32.2)の変異があります。  
    関節型は原因遺伝子は不明です。   
    後側湾型はコラーゲン修飾酵素リシルヒドロキシラーゼPZ,ODI遺伝子(1p36.22)の変異。
    多発関節弛緩型はI型コラーゲンCOZ,JAI遺伝子(17q21.31-q22) とCOLIA2遺伝子(7q22.1)に変異。   
    皮膚脆弱型はプロコラーゲン1N-プロテイナーゼADAMT1S2遺伝子(5q35.3)に変異があります。  


2:
疫学
  
(1)出生頻度
    5千〜1万人に1人.    


3:エーラス・ダンロス症候群の症候・症状
(1)全身的特徴
  
    皮膚が.痛みなしに数cmつまみあげられるほど薄く,弾力性に富んでいます。
    関節が極度に軟らかく,習慣性脱臼や動揺関節があります。   
    皮膚は外力により裂けやすく、創傷治癒が遅い。  
    血管が脆弱で皮下出血や紫斑、など。  

(2)合併症   
    眼症状(青色強膜、近視、緑内障、網膜剥離、水晶体脱臼)   
    脊柱側脅、低身長   内反足、外反足、股関節脱臼   
    頭蓋内動脈瘤、
    心房中隔欠損、大動脈弓異常、僧帽弁狭窄ヘルニア(鼠径,膳横隔膜)   
    直腸脱や副腎機能不全、など。


4:エーラス・ダンロス症候群と歯科医療
(1)歯科的特徴
  
    歯肉出血歯肉炎や顎関節炎があります。   

    古典型では,歯の高い咬頭と深い裂溝.歯根の異形.歯髄結石などがあります。
  
    関節型では,高口蓋,叢生,歯周炎がある.血管型では,歯肉退縮の報告があります。
  
    多発関節弛緩型では、歯肉肥大や歯の先天欠如、エナメル質形成不全、歯の石灰化遅延、永久歯の早期脱落
    歯根膜腔拡大、歯髄狭窄、狭窄歯列弓および上下顎劣成長など。

(2)歯科的対応   
    齪蝕予防処置と歯肉損傷を生じない清掃法の指導が重要となります。   
    創傷治癒不全があるため,外科的処置は慎重に行います。   
    関節の動揺に対して,支持装具をつけていることが多い.   
    チェアへの移乗時に打撲などを起こさないよう注意する必要が有ります。
 

参考資料










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