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腸炎ビブリオ感染症(infection with Vibrio parahaemolyticus)について

     

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腸炎ビブリオ感染症 (infection with Vibrio parahaemolyticus )

1:腸炎ビブリオ感染症とは

 (1)腸炎ビブリオとは    
     ビブリオ属に属する好塩性グラム陰性桿菌の一種です。
     コレラを起こすコレラ菌と同じビブリオ科に属す細菌です
     主に海水中に生息する細菌であり、本菌で汚染された魚介類を生食することで、ヒトに感染して腸炎ビブリオ食中毒
     を発症させます。

        

     Wikipedia 「腸炎ビブリオ」から引用
       左:コレラ菌の模式図。典型的なビブリオの特徴であるコンマ状の桿菌で太い単毛性鞭毛(極鞭毛)を持つ。
       右:腸炎ビブリオの模式図。形状は真っ直ぐで極鞭毛の他に細い周毛性鞭毛を持つ。

     腸炎ビブリオは沿岸の海水海泥中汽水域に分布しています。
     水温が 15℃以上の環境(至適温度域 35〜37℃)になると活発化します。
     好塩性細菌であり、食塩濃度が高い1〜8%の環境下(増殖至適塩分濃度は2〜3%)で増殖します。

     一方で真水に弱い特徴があります。
     また、10℃以下では発育せず、熱にも弱いため、なるべく低温におくこと、真水(流水)で良く洗って菌を洗い流すことや
     十分な加熱調理が有効です。      


 (2)腸炎ビブリオ食中毒
     腸炎ビブリオを摂取すると、しばしば腹痛・吐き気・嘔吐・発熱・悪寒をともなった水のような下痢が起こります。
     摂取してから24時間以内に起こるのが通常です。
     患者が他の人を感染させることは少なく、症状は三日間続きます。
     重症となることはまれです。   


2:感染様式
 (1)感染様式
  @経口感染
     主に経口感染で伝播します。
     生や未調理の海産物、特にカキ、カニ、エビを食べることにより感染します。
     人から人にうつることはありません。

  A接触感染
     傷口から海水が侵入したり、汚染された貝類を扱うことで感染する場合もあります。


 (2)潜伏期間
     8時間〜24時間(短いと2、3時間)の後に、激しい腹痛、水様性の下痢などを主症状とし、発症します。
     発熱(37℃〜38℃)、はき気、おう吐等の症状が表れる場合もあります。


3:疫学
 (1)発症時期
     8、9月に集中的に発生しており、特に夏場に注意が必要といえます。

 (2)発症数
     1980年代前半までは細菌性食中毒のおよそ半数を占め、発生数並びに患者数とも常に第1位でした。
     しかし、1980年代後半からは減少傾向となりました。


4:症状
 (1)一般的な症状
     6-12時間の潜伏期の後に、激しい腹痛を伴う下痢(ときに血便を伴う)を主症状として発症し、
     嘔吐、発熱(高熱ではない)を伴うことがあります。
     2-3日で回復し、一般に予後は良好です。


 (2)重症例
     高齢者など免疫の低下した患者では、まれに毒素による心臓毒性によって死亡する例もあります。
     感染部位は小腸であり、上腹部痛を訴えることが多いとされます。
     食中毒以外に、傷口からの感染(創傷感染)や、それに伴う敗血症を起こした例もまれに報告されています。


5:診断
 (1)病歴聴取
    夏に生の魚介類など食べた 6-12時間後、激しい腹痛と水様性の下痢があれば、kの病気を疑います。

 (2)細菌検査
     確定診断は糞便検査にて抗原や毒素の検出が必要です。
     結果が出るまでに時間がかかるため、すでに症状が良くなっている場合もあります。

     1週間を超えても症状が良くならない場合は、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎クローン病)などほかの疾患の可能性
     もあり大腸内視鏡検査が必要です。

     検査キット:サン化学 サンコリ簡易菌検出紙 (腸炎ビブリオ用)


6:治療
 (1)軽症の場合
     腸炎ビブリオによる食中毒では、軽症で治療を必要としない場合がかなりあります。
     腸炎ビブリオ食中毒では、抗菌薬治療を行わなくても数日で回復する症例が多い。

 (2)薬剤の使用
  @止瀉薬
     ぜん動抑制をするような強力な止瀉薬は、菌の体外排除を遅らせるので基本的に使用しない。
     ロペラミドなどは迷走神経を抑制しますので、使用しないようにします。

      良く効きますが、使用には注意が要ります。


  A抗菌薬の使用
     抗菌薬を使用する場合は、ニューキノロン薬等を投与します。
     重症例では、テトラサイクリン、アンピシリン、などの抗生物質が使われることがあります。

  B脱水症状に対する治療
     下痢による脱水症状に対しては輸液を行います。

     


7:腸炎ビブリオ食中毒の予防方法
 (1)洗浄
  @真水での洗浄
     調理前の魚介類は真水(流水)でよく洗います。
     腸炎ビブリオは真水に弱いため、魚介類の表面に付着している菌を真水(流水)で洗い流しましょう。

  A手洗いと器具の管理
     調理の変わり目には良く手を洗う事が大事です。
     特に魚介類を扱う前後にはよく手を洗い、他の食材に腸炎ビブリオが付着するのを防ぎましょう。
     使用する調理器具は専用のものを使用するか、他の食材に使用する前に良く洗い消毒します。


 (2)温度による管理
  @低温管理---10℃以下の低温で保存する
     腸炎ビブリオは10℃以下で発育しないため、10℃以下の低温で保存しましょう。B

  A加熱
     食腸炎ビブリオは通常の加熱調理で死滅します。
     中心部まで十分に加熱しましょう。
     中心部を75℃で1分以上加熱することが目安です。


腸炎ビブリオ感染症検査キット

 サン化学 サンコリ簡易菌検出紙 (腸炎ビブリオ用)



参考資料

 『腸炎ビブリオ〈第4集〉


 『絵でわかる食中毒の知識 (KS絵でわかるシリーズ)





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