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ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症とエイズ(AIDS)ついて

   

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ヒト免疫不全ウイルス感染症 (HIV:Human Immunodeficiency Virus infection)
後天性免疫不全症候群 (AIDS:Acquired immune deficiency syndrome)
  1:HIV感染症
 (1)HIVとは    
  @HIVウイルス
     人の免疫細胞に感染してこれを破壊し、最終的に後天性免疫不全症候群 (AIDS)を発症させるウイルスです。
     エンベロープを持つプラス鎖の一本鎖RNAウイルスであるレトロウイルス科レンチウイルス属に属します。   
     球状の粒子であり、直径は約100nmです。

     


  AHIVの種類
    HIV-1
     Group M (Major)
       世界的に分布しているウイルスの多くがグループMに属しています。

     Group O (Outlier)
       西アフリカや中央アフリカで主に認められるHIVです。

     Group N (non-M/non-O)
       1998年にカメルーンでの感染者に発見された。

     Group P (pending)
       2009年、フランス在住のカメルーン人女性に、ゴリラ由来のHIV-1とみられる新種が発見されました。


  B増殖
     HIVは、まずヘルパーT細胞に侵入します。
     逆転写酵素を使ってRNAからHIVのDNAを合成してT細胞のDNAに組み込み、潜伏します。
     しばらくしてヘルパーT細胞が活性化すると、HIVのDNAが発現し新たなHIVが作られます。

      Wikipedia 「ヒト免疫不全ウイルス」

     その際、ヘルパーT細胞の膜がそのまま新たなHIVの膜に使われるため、ヘルパーT細胞は細胞膜が破壊されて
     死にます(これは免疫力の極端な低下の原因でもある)。

      Wikipedia 「ヒト免疫不全ウイルス」
     
     HIV-1に感染し細胞変性効果 (CPE:cytopathic effect) によって多核巨細胞化したT細胞(矢印)


  CCD4陽性リンパ球
     血液中に流れている白血球の一種で、感染症から体を守る働き(免疫)の中心的役割をしている細胞です。
     健常人ではCD4陽性リンパ球数は700?1300/μl程度あります。
     HIVがCD4陽性リンパ球に感染し、徐々にCD4陽性リンパ球を破壊していくことにより免疫能が低下して
     しまいます。

     


 (2)HIV感染症とAIDS(後天性免疫不全症候群)
  @HIV感染症    
     HIV感染体の中にHIV(ヒト免疫不全ウイルス)が存在している状態をいいます。
     自覚症状がほとんどないので、本人が気づくことは困難です。

  Aエイズ(AIDS)
     エイズとは、HIVによって体の免疫力が低下し、その結果として、日和見(ひよりみ)感染症など様々な合併症が
     出た状態をいいます。
     ただし、その場合も合併症の治療を行い、また、HIV感染の治療により免疫力を回復させることができます。
 

2:感染様式
 (1)感染経路
     主な感染経路は性行為による感染血液による感染母子感染の3つです。
     現在8割以上の人が性行為による感染です。
 
  @性的感染
     性行為による感染では、性分泌液に接触することが最大の原因となります。
     女性は、精液が膣粘膜に直接接触し、血液中にHIVが侵入することで感染します。
     男性は、性交によって亀頭に目に見えない細かい傷ができ、そこに膣分泌液が直接接触し血液中にHIVが侵入する
     事で感染します。

     肛門性交では腸粘膜に精液が接触しそこから感染するとされています。
     腸の粘膜は一層であるため薄く、HIVが侵入しやすいため、膣性交よりも感染リスクが高いとされます。

     口腔で性器を愛撫する場合も、口腔内に歯磨きなどで微小な傷が生じていることが多く、そこに性分泌液が
     接触することで、血液中にウイルスが侵入するおそれがあります。


  A血液感染
     感染者の血液が、傷、輸血、麻薬の回し打ちなどによって、血液中に侵入することで感染が成立する。
     特に麻薬・覚醒剤中毒者間の注射器・注射針の使い回しは感染率が際立って高い。
     以前は輸血や血液製剤からの感染があったが、現在では全ての血液が事前にHIV感染の有無を検査され、
     感染のリスクは非常に低くなっている。
     医療現場においては、針刺し事故などの医療事故による感染が懸念され、十分な注意が必要となります。


  B母子感染
     母子感染の経路としては3つの経路があります。
     出産時の産道感染、母乳の授乳による感染、妊娠中に胎児が感染する経路です。

   1)産道感染
      子供が産まれてくる際、産道出血による血液を子供が浴びることで起こります。
      感染を避ける方法として、帝王切開を行い母親の血液を付着させない方法があり、効果を上げています。

   2)母乳による感染
      HIVに感染した母親の母乳を与えることは危険とされている。
      この場合は子供に粉ミルクを与えることによって、感染を回避することができます。

   3)胎内感染
      胎盤を通じ子宮内で子供がHIVに感染することで起こります。
      物理的な遮断ができないため、感染を回避することが難しい。
      感染を避ける方法として、妊娠中に母親が後述しますHAART療法により血中のウイルス量を下げ、子供に感染
      する確率を減らす方法がとられています。


 (2)潜伏期間
  @感染してから症状が出るまでの期間
     初期感染は、HIV感染から2〜6週間位です。
     2〜6週間位で、HIV感染者の50〜90%に症状が出ます。

  A無症候期
     その後、無症候な潜伏期間は5〜10年ほどです。
     ときに短期間でAIDSを発症する場合もあります。

      東京都福祉保健局HPから引用
        

3:疫学
 (1)感染者数
  @2016年の新規報告数
     新規報告者数=1448件(新規HIV感染者が1011例、新規エイズ患者は437例)

  A年次報告者数

      
       国立感染症研究所エイズ研究センター HP から引用


 (3)HIV感染症と感染症法
     HIV感染症は感染症法に基づき発生報告が義務づけられている第5類感染症です。
     国内HIV感染発生数は厚生労働省エイズ発生動向委員会に報告され、この報告数が新規HIV感染・エイズ報告件数
     として公開されています。


4:症状
 (1)感染初期(HIV感染から2〜6週間)
     HIV感染者の50〜90%に症状が出ます。
     インフルエンザに似た症状が出ます。
     発熱、リンパ節が腫れる、咽頭炎、皮疹(ひしん)、筋肉痛、頭痛、下痢のずれかの症状があらわれます。
     数週間程で症状が消えてしまい、5〜10年程の無症候期に入ります。
     症状が軽度の為、風邪やインフルエンザと自己判断してしまい、気がつかないことも多いとされます。


 (2)無症候期(5〜10年程)
     免疫力は徐々に弱くなっていきますが特に症状が出ない沈黙の期間があります。
     無症候期を通じてCD4陽性T細胞数は徐々に減少していってしまいます。
     無症候期にある感染者は無症候性キャリア(AC)とも呼ばれます。

     またこの期間に、自己免疫性疾患に似た症状を呈することが多いことも報告されています。
     ほかにも帯状疱疹を繰り返し発症する場合も多くあります。
     ときに短期間でAIDSを発症する場合もあります。

 (3)発病期
     AIDSを発症すると、さまざまな病気(日和見感染症)が併発します。
     症状も多様でいくつも併発します。
     代表的な症状として急激な体重の減少、著しい寝汗、下痢等が続きます。
     適切な治療を行わなければ数年で死にいたる事があります。

  @AIDS発病初期
     最初は全身倦怠感、体重の急激な減少、慢性的な下痢、極度の過労、帯状疱疹、過呼吸、めまい、発疹、口内炎、
     発熱、喉炎症、咳など、風邪によく似た症状のエイズ関連症状を呈します。
     また、顔面から全身にかけての脂漏性皮膚炎などもこの時期に見られます。
     大抵これらの症状によって医療機関を訪れ、検査結果からHIV感染が判明して来ます。

  A日和見感染
     その後、免疫担当細胞であるCD4陽性T細胞の減少と同時に、普通の人間生活ではかからないような多くの
     日和見感染を生じます。

     ニューモシスチス肺炎やカポジ肉腫、悪性リンパ腫、皮膚がんなどの悪性腫瘍、
     サイトメガロウイルスによる身体の異常など、生命に危険が及ぶ症状を呈して来ます。

  BHIV脳症
     HIV感染細胞が中枢神経系組織へ浸潤し、脳の神経細胞が冒されるとHIV脳症と呼ばれ、精神障害や認知症、
     記憶喪失を引き起こすこともあります。


 (補足−1)AIDS指標疾患
     通常、感染したと認められてから長期間経過したあとに、以下の23の疾患(AIDS指標疾患という)のいずれかを
     発症した場合にAIDS発症と判断されます。

  A.真菌症 
     1.カンジダ症(食道、気管、気管支、肺)
     2.クリプトコッカス症(肺以外)
     3.コクシジオイデス症 
       1)全身に播種したもの
       2)肺、頚部、肺門リンパ節以外の部位に起こったもの
     4.ヒストプラズマ症 
       1)全身に播種したもの
       2)肺、頚部、肺門リンパ節以外の部位に起こったもの
     5.ニューモシスティス肺炎(P. jiroveci)

  B.原虫症
      6.トキソプラズマ脳症(生後1か月以後)
      7.クリプトスポリジウム症(1か月以上続く下痢を伴ったもの)
      8.イソスポラ症(1か月以上続く下痢を伴ったもの)

  C.細菌感染症
     9.化膿性細菌感染症
       1)敗血症 
       2)肺炎 
       3)髄膜炎 
       4)骨関節炎 
       5)中耳・皮膚粘膜以外の部位や深在臓器の膿瘍
     10.サルモネラ菌血症(再発を繰り返すもので、チフス菌によるものを除く)
     11.活動性結核(肺結核又は肺外結核)     
     12.非結核性抗酸菌症 
       1)全身に播種したもの
       2)肺、皮膚、頚部、肺門リンパ節以外の部位に起こったもの

  D.ウイルス感染症   
     13.サイトメガロウイルス感染症(生後1か月以後で、肝、脾、リンパ節以外)
     14.単純ヘルペスウイルス感染症
       1)1か月以上持続する粘膜、皮膚の潰瘍を呈するもの
       2)生後1か月以後で気管支炎、肺炎、食道炎を併発するもの
     15.進行性多巣性白質脳症

  E.腫瘍
     16.カポジ肉腫    
     17.原発性脳リンパ腫 
     18.非ホジキンリンパ腫 
     19.浸潤性子宮頚癌

  F.その他
     20.反復性肺炎
     21.リンパ性間質性肺炎/肺リンパ過形成:LIP/PLH complex(13歳未満)
     22.HIV脳症(認知症又は亜急性脳炎)
     23.HIV消耗性症候群(全身衰弱又はスリム病)

 (補足−2)感染後経過
     HIV-1 PCR法によるウイルス量測定と、フローサイトメトリー法によるCD4陽性細胞数検査が行われます。
     CD4数は現在の病態を反映する数値です。
     正常ならば800 - 1200個/μLですが、HIVに感染すると徐々に低下していきます。

     500個/μL程度では帯状疱疹、結核、カポジ肉腫、非ホジキンリンパ腫、

     200個/μL程度ではニューモシスチス肺炎、トキソプラズマ脳症、

     100個/μLではクリプトコッカス髄膜炎、

     50個/μLではサイトメガロウイルス、非定型抗酸菌症を起こしやすいとされています。

     
       国立感染症研究所エイズ研究センター HP から引用


5:検査・診断
 (1)検査
  @HIV-1/2抗体の検査
     HIV抗体を検査します。
     ただし、HIV抗体は中和抗体ではありませんので、抗体があったも治癒には至りません。


 (2)診断基準
     CD4陽性細胞数が200個/μLを下回った場合、
     極端な体重減少がみられる場合、
     ある種の重篤な日和見感染症やがんを発症した場合、にエイズと診断されます。


6:治療
 (1)多剤併用療法(HAART療法:Highly Active Anti-Retroviral Therapy)
     基本的には多剤併用療法で治療が行われます。
     ただ、完治・治癒に至ることは現在でも困難です。
     抗ウイルス薬治療は開始すれば一生継続する必要があります。


7:予後
 (1)予後
     AIDSは急性経過をとって致死に至るより、むしろ慢性化する感染症となりました。
     予後には個人差があり、CD4陽性細胞数とウイルス量の測定が経過の予測に有用とされています。

 (2)無治療の場合の予後
     無治療の場合、平均生存期間は9年から11年と見積もられています。
     AIDSと診断されてなお治療がなされない場合、生存期間は6か月から19か月の間となります。

 (3)治療した場合の予後
     HAART療法と適切な日和見感染症の予防が行われると死亡率は最大80パーセント減少します。
     余命は新規に診断された若い成人で20年から50年に延長されます。
     この数値は健常者の余命と比べても3分の2からほぼ同等の水準です。

 (4)治療が送れた場合の予後
     治療開始が遅れると予後は悪化します。
     たとえばAIDSの診断後に治療を開始すると、余命は最大で10年から40年となります。
     HIVの感染とともに産まれた新生児に関しては、無治療の場合、その半分が2歳までに死亡します。


8:予防
 (1)衛生管理
     今度無を使用した性行為でほとんど予防出来ます。


 (2)HIV感染予防薬
     2018年現在、HIV感染を予防する方法・薬剤が存在します。
     
  @曝露後予防内服(PEP:Post Exposure Prophylaxis)
     医療従事者などが針刺し事故で感染の危険がある場合に、事後的に薬剤を投与する方法です

  A曝露前予防内服(PrEP、Pre Exposure Prophylaxis)
     HIV感染リスクの高い業務に従事していたり(性的サービスを行うソープランド従業員)、コンドームを用いないで
     不特定多数と性行為を行うライフスタイルを営む者に対して、事前に薬剤を投与しておきます。

     曝露前予防内服(PrEP)は、ゲイやバイセクシュアルの男性において高い予防効果と安全性が報告されており、
     怠薬なく毎日の服用を続けることができれば、90パーセント以上の予防効果があると考えられている

  曝露前予防内服(PrEP)も曝露後予防内服(PEP)も、ツルバダ(TruvadaR)という商品名の抗HIV薬を1日1回内服
  する方法が用いられる

  ツルバダ(TruvadaR)----テノホビル・エムトリシタビン合剤薬剤)



HIVウイルス感染症と口腔ケア
 


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参照:「性行為感染症の検査」



参考資料
 
 『抗HIV/エイズ薬の考え方、使い方、そして飲み方 ver.2


 『長期療養時代のHIV感染症/AIDSマニュアル






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 22-04-16