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粘膜疾患の診かたについて


     
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膜疾患の診察方法
口腔粘膜病変の診かた 

 口腔粘膜病変は多彩な様相を呈するためその診断には熟練を要すると言われています。
 しかし以下の手順で進めれば 比較的客観的な診断が可能であると思われます。
 ポイントは、どこに、どんな変化があるかを確認することです。

1)臨床診査

 @問診
    問診によって、主訴、現病歴、既往歴などを聴取します。
    すなわち経過、再発性、持続期間などを確認します



 A現症の把握 (視診・触診)
   1)部位の把握
      病変の主体が次のどの部位にあるかを把握します
         口唇 舌 頬粘膜 歯肉 口蓋 口底 他

   2)色調の把握
      病変が平坦の場合
      表面に隆起も陥凹もない平坦な場合には、色調、病変の大きさ、形と範囲、境界などを認識することになる。

     1:白斑(White patch)
        本来の定義からすると、斑(Macule)とは限局性の色の変化で、表面は平坦で盛り上がりのないものを
        意味する。
        しかし、ある程度までのわずかな隆起や場合によって陥凹があっても色の変化があれば斑と呼ぶことが
        ある。
        色が白色や灰白色であれば白斑と呼ぶ。
           
     2:紅斑(Erythema)
        盛り上がりのない赤い色の変化のことで、多くは細血管の炎症性充血によるものである。
        または炎症はなくても粘膜上皮が薄くなった結果、毛細血管網を反映して赤くなっていることもある。
            
      3:紫斑(Purpura)
        上皮下の出血による紫紅色の盛り上がりのない色の変化としてみられる。
        小さなものは点状出血(petechia)、大きなものは斑状出血(Ecchymosis)という。
        たとえば血小板減少性紫斑病の斑状出血。           
        色素斑(Pigmentary macule)
        メラニン色素保有細胞の集積による黒褐色の限局性の変化である。
        単発のことも多発することもある。
           
     4:色素沈着(Pigmentaton)
        メラニン色素の沈着による黒褐色のびまん性の変化である。
        有色人種ではある程度まで生理的なものである。

   3)形態(病変の種類)
     病変の形態が、平坦、隆起、陥凹しているかどうかを確認します。
     表面に隆起も陥凹もない平坦な場合には、色調、病変の大きさ、形と範囲、境界などを認識することになる。
     表面は平坦でもその基部から粘膜全体がはれている場合がある。腫脹や肥大はその代表である。
           
     1:小水疱(Vesicule)
        上皮と上皮細胞間の浮腫や上皮細胞の壊死による水疱で、直径5mm程度のものまでの小さなものをいう。
        たとえばウイルス性口内炎など。
 
     2:大水疱(Bulla)
        上皮内あるいは上皮下に組織液の貯留した洞としてみられるもの。
        組織所見では上皮内水疱(天疱瘡)と上皮下水疱(類天疱瘡、火傷など)が区別される。

     3:アフタ(Aphtha)
        粘膜の円形または類円形の比較的浅い潰瘍をいう。
        通常は潰瘍底は灰白色で、周囲に多少の発赤を伴う。たとえば再発性アフタなどがある。

     4:びらん(Erosion)
        原則的には上皮層内、場合により上皮下乳頭層程度までの組織の欠損である。
        粘膜では種々の原因で起きるので、その頻度はきわめて高い。

     5:潰瘍(Ulcer)
        粘膜固有層または粘膜下組織にまで達する組織欠損である。
        場合によっては潰瘍底は筋組織や骨まで達することがある。

     6:腫脹(Swelling)
        病変の局所が腫れていることである。
        外傷や炎症の場合は局所の循環障害であり、腫瘍では実質組織の増殖による。
 
     7:肥大(Hypertrophy)
        組織構成成分の体積がそれぞれで増大したものである。たとえば歯肉肥大など。
        一構成成分だけの増大では肥大とは言わない。

     8:角化亢進(hyperkeratosis)
        粘膜上皮最上層の角化層の増加で、通常は白斑を呈する。
        本来は組織学的な所見である。組織像では過正角化と過錯角化とがあるが、臨床所見では鑑別できない。

     9:丘疹(Papule)
        粘膜固有層での炎症性浸潤細胞の増加に基づく限局した盛り上がりである。
        苔癬型丘疹では固有層上部での細胞浸潤のため上皮の角化異常を伴う。

    10:結節(Nodule)
        境界明瞭な限局性の盛り上がりで、腫瘤との区別は必ずしも明確ではない。
        たとえば腫瘍、肉芽腫性炎などである。

    11:腫瘤(Tumor)
        局所の組織の限局した増大で、境界が明瞭なものであるが、結節よりは広い意味で言う。
        たとえば腫瘍やエプーリスなどである。

    12:ポリープ(polyp)
        有茎性の粘膜表面の突出物で、通常境界は明瞭で良性の過形成物である。
        たとえば頬粘膜のポリープなどが代表である。

    13:膿疱(Pastule)
        上皮内に白血球が貯留したもので、皮膚では多いが口腔粘膜ではまれである。

    14:膿瘍(Abscess)
        上皮下多くは粘膜下組織などに膿汁の貯留した状態になっているもの。
        たとえば歯肉膿瘍、歯槽膿瘍、頬部膿瘍である。

    15:嚢胞(Cyst)
        内面に上皮の壁を有する組織内の洞で、多くは液体で満たされるが、固形物であることもある。
        たとえば、粘液嚢胞、皮様嚢胞なと。

   4)表面性状
       角化、平滑、粗造、偽膜形成などを確認する。

   5)病変の大きさ・範囲・個数
       粟粒大、小豆大、大豆大、小指頭大、母指頭大、鶏卵大などで大きさを表現する。
       しかし、直径、短径を計測して「○mm×○mm」というのがより正確である。
       病変と周囲健常部粘膜との境が明確か、不明瞭となっているかなどの確認を行う。
       明確であれば範囲、大きさ、などの認識は容易となる。
       不明確であったり、びまん性の変化では認識が難しくなる。
       病変は1個か、複数か、現在何個確認できるか、または口腔粘膜の全体に多発しているかなどを調べる。
       
   臨床的に以上を確認し、必要に応じて下記の検査を行います。  


(2)臨床検査


  パッチテスト、Tzank Test 、ニコルスキー(Nykolsky)現象

(3)病理組織検査 

参考:WHO方式による口腔粘膜診査方法

口腔粘膜は、上下口唇からはじまり、後方は舌根部粘膜から前口蓋弓のみえる範囲、さらに軟口蓋に連なる範囲までの粘膜部分を意味しています。
    
これらの粘膜に見られる所見の記載のために、WHOでは口腔粘膜を13番から56番までの44区画に番地を定めて分類し、以下の手順での診査を推奨しています。
WHOの口腔粘膜疾患の診断ガイドによると、診察には歯鏡(デンタルミラー)を2本使用することを勧めています。
義歯が使用されているときは診察の前に取り外します。


診察は次の順に行います。

口唇
  赤唇縁をまず閉口、次いで開口させて診察する。

下口唇と唇溝
  口を半開きにして下顎前庭を診る。

唇交連、頬粘膜、頬溝
  ミラーを鉤として用いて大きく開口させて頬粘膜全体を唇交連より前口蓋弓)まで診察する。
 
歯肉および歯槽突起
  頬側、口蓋側、舌側から診察する。


  安静位で舌骨をさらに舌を前方に突出させてミラーあるいはガーゼで舌尖部を保持して舌縁部を診察。
  次いで舌を挙止させて舌下面を診察する。

口底
  舌を挙上したままで左右と中央部の口底を診察する。

硬口蓋と軟口蓋
  大きく開口して一方のミラーで舌根部を適度に圧迫して硬口蓋、次いで軟口蓋を診察する。





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