紅板症とは
紅板症は以前、紅色肥厚症(erythroplasia of Queyrat)とよばれていた病変と同様な疾患です。
WHOの診断基準によれば「臨床的にも病理組織学的にも他の疾患に分類されない紅斑」とされています。 典型的な紅板症は鮮紅色の紅斑で、組織学的には種々の程度の上皮性異形成から上皮内癌までの所見を示す前癌病変です。
臨床的特徴
性差
性差については男女差を認めていません。
好発部位
Shafer and Waldron の58例の検討では、口底、ついで臼後部に好発するとされていますが、他の報告では舌に多く(53%)、ついで軟口蓋、口底、歯肉の順でした。 そのほかの文献では頬粘膜や扁桃の例が報告されています。
好発年齢 年齢については50〜70歳代に多いとされていますが、一般的に50歳代以上の高齢者が全体の80%を占めています。
臨床症状
症状
肉眼的所見については境界明瞭な鮮紅色の紅斑が典型的で、境界は明瞭なものが多いです。 表面は平滑なものが多いですが、中には一部肉芽状や潰瘍を伴うこともあります。 疼痛については、ほとんどの症例が刺激痛を自覚しており、初発症状として重要です。 疼痛発現の理由としては、病巣の粘膜上皮が薄いことによります。
診 断
病理組織学的所見
口腔の紅板症は種々な程度の上皮性異形成を示します。 しかし、典型的な紅板症では高度な上皮性異形成で上皮内癌の状態であり、この状態は先に述べたように陰茎や外陰部におけるErythroplasia of Queyratと同様の状態です。 上皮性異形成以外の所見としては間質内の血管の肥厚、増生が見られ、また間質乳頭上皮は薄く、角質層の発達は悪いです。
予後(悪性化および転帰)
紅板症の50%前後が悪性化すると言われています。
治療法
組織学的に上皮内癌を含む上皮性異形成を有すること、また悪性化症例が高頻度に見られることから、外科的に切除するのが望ましいとされています。 放射線療法や化学療法も有効なことが多いですが、治療後の経過観察には注意を要します。
症例ノート
症例1
50歳男性の左頬粘膜から後臼歯隆起部に発症した紅板症。
術前の組織検査では、癌化(扁平上皮癌)がありました。
症例2
舌下部の紅板症。
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