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上顎骨骨折について

     
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 上顎骨骨折 ()
 
1:上顎骨とは
上顎骨は、顔面の中心において大部分をなし、左右対称に1対存在し、正中で縫合している骨の事です。
上顎骨は下顎骨を除いた顔面頭蓋骨の中で最も大きく、上顎の大部分を占めています。
上顎骨には上顎の歯牙が植わっており、左右の頬骨と繋がり、硬口蓋前部と鼻腔側壁および鼻腔底、眼窩底を形づくります。
上顎骨を構成するものは上顎骨体(上顎体)とそれに付随する前頭突起、頬骨突起、口蓋突起、歯槽突起の4つの骨突起です。

         


2:上顎骨骨折とは
 上顎骨骨折は周囲の頬骨、鼻骨、涙骨、前頭骨、側頭骨、口蓋骨、蝶形骨に併発骨折している事が多く、
 これら周辺骨を含めたLe Fort (ルフォー)I、II、III 型骨折と、矢状骨折に大別されます。
 実際は外力の作用部位・方向・ 強度などにより各型の併存や他 顔面骨の合併骨折が少なくありません。


2:分類とその症状
 骨折部位により次のように分類されます。

 LefortT型骨折
   梨状孔下部−犬歯窩−上顎洞壁−翼口蓋裂−翼状突起下部に達する骨折です。
   鼻腔底より上方レベルでの水平骨折で、Lefortの3型の中では最も頻度は少ない骨折です。
   
   鼻出血、顔面腫脹、咬合不全が特徴です。
   上顎歯列が一塊として動来ますが、、上唇知覚異常はありません。
   頬骨・上顎骨複合体(ZMC:Zygomatico maxillary complex)骨折の合併をみる場合もあります。

               


 LefortU型骨折
   鼻骨−上顎骨前頭突起−涙骨−篩骨−眼窩底−上顎骨頬骨縫合部−翼口蓋窩−翼状突起に達する骨折です。

   症状としては、一時的意識喪失、眼窩周囲皮下出血、非出血、顔面腫脹、眼窩下部に段差、複視、上唇知覚異常、
   咬合不全、上顎歯列 がー塊として動くなどです。
   術前評価としての高分解能CTは必須です。

             


 LefortV型骨折
   鼻骨を横断し、眼窩後壁を経て下眼窩裂、頬骨の前頭突起を通り後方へ向かい、上顎骨と蝶形骨の間を通過する
   骨折です。
   顔面骨が頭蓋底と分離します。

   眼窩下神経(頬部・上唇の知覚鈍麻(脱失))、眼窩損傷、鼻出血、などを生じます。

             


 矢状骨折
   上顎骨が水平ではなく縦方向に折れた骨折です。
   口唇、口蓋粘膜の軟組織損傷、歯列変位や咬合不全を生じます。


4:上顎骨骨折と合併しやすい骨折
 (1)眼窩底骨折
     ブローアウト骨折とも呼ばれます。
     眼を下から支える薄い骨の骨折で、眼を殴られた等、眼球に衝撃が加わることで起こります。
     眼の周りの脂肪や眼を動かす筋肉が下にある上顎洞という空間に落ち込むため、次の様な症状が現れます。
       @物がだぶって見える(複視)、
       A目がくぼむ(眼球陥没、
       Bほお・上唇・歯茎のしびれ など。
  
     CTやMRIで診断を行います。
   
     手術するかどうかは眼球陥没の有無と複視の程度で判断します。
     眼球陥没がある場合は原則的に手術の対象になります。
     複視は腫れが引くに従って改善する場合も多いので、数週間様子を見てから、改善がない場合に手術を行います。
     例外的に骨折部に眼を動かす筋肉が挟み込まれてしまった場合は緊急手術になります。
     眼窩底の骨の欠損が大きい場合は再び眼窩内容が落ち込まないように、自分の骨や軟骨を移植して、眼窩底を
     作り直します。

        

         「特定非営利活動法人交通事故110番」から引用


 (2)頬骨骨折
     ほおの高まりを形成する骨の骨折で、殴打、転倒、交通事故等、比較的強い力で起こります。
     通常、2-3か所が同時に折れて骨がずれます。

     次の様な症状が現れます。
       @ほおの平坦化、
       A口が開けにくい(開口障害)
       B物がだぶって見える(複視、ふくし)
       C目がくぼむ(眼球陥没、がんきゅうかんぼつ)
       Dほお・上唇・歯茎のしびれ

     上のような症状とレントゲン写真とCTで診断を行います。

     手術するかどうかは症状の程度で決まりますが、咬合の異常が有る場合には必要です。
     複視・しびれの回復には数週間〜数か月かかります。

          


 (3)頬骨弓骨折
     頬骨骨折のうち、頬骨弓と呼ばれる部分だけが折れた場合は症状・治療方針・手術方法が異なります。
     主な症状は
        @口が開けにくい(開口障害)
        A耳の前のへこみが生じます。

        

     レントゲン写真やCTで診断を行います。
     手術するかどうかは症状の程度で決まります。


5:診 断
 上記症状と X線撮影や CT が有効です。
 特に 3D-CT が有益な場合が多いとされています。
 診断にさいしてはX線のみに頼らず問診、視診、触診によって骨折部位を推定する習慣をつけておくことが大切です。


6:治療法
 顎骨骨折の治療の目的は、たんに骨をひっつけることではなく、咬めるように治すことです。
 すなわち正常咬合への回復、審美性の回復が目的となります。

 上顎骨の骨折では、次の症状が強い時に手術を行います。
    視覚の異常、
    歯の噛み合わせの変化、
    あごが完全に開かない、
    眼球の陥没、
    顔面のしびれ、
    受け入れがたい容貌の変化、など。
 
 典型的な手術は、ねじとプレートであごを固定することです。
 術後はあごを動かさないようにする必要があります。
 多くの場合は数日で十分であり、その後数週間は柔らかいものを食べるようにします。






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