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小下顎症を特徴とする症候群について

    
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小下顎症を特徴とする症候群

小下顎症を伴う症候群

  小下顎症は、「ヘルがゴローとネる」

    

  H:Hallerman-Streife症候群  

  E :Edwards症候群   

  Ru:Russell-Silver症候群  

  が  

  Go:Goldenhar症候群(片側)  

  Ro:Robinシークエンス  

  TTreacher Collins症候群    

  O:OFD症候群  

  ネ:ネコ鳴き症候群  

  る

1:ピエールロバン症候群 (Pierre Robin Syndrome)
1:概念
(1)特徴  
    小下顎症、舌根沈下、気道閉塞を特徴とする症候群です。

      


(2)歴史   
    1822年にE.G.SLHilaire(17721844)、1923年にPierreRobin(1867〜1950)が報告しました。

2:原因遺伝子と遺伝形式    
    17番染色体(17q24)の転写因子タンパク遺伝子SOX9の調節部位の欠失が一部で発見されています。   
    正確な原因・機序は不明ですが、単独例にはSOX9遺伝子近傍の遺伝子変異によって起こるものがあります。
    他の症候が連続的に続発することから、遺伝性であってもロバン連鎖(Robin sequence)と呼ばれる事もあります。   

3:疫学   
(1)出生頻度
    1/8500 ? 1/30,000

3: Pierre Robin症候群の症候・症状
(1)全身的特徴
  
    小顎症や下顎後退による舌根沈下、気道閉塞、気道狭窄、呼吸困難を特徴とします。    

     『スペシャルニーズデンティストリー障害者歯科 第2版』 から引用

(2)合併症   
    先天性心疾患---心房または心室中隔欠損症、心臓肥大、肺動脈高血圧症、動脈管開存症 
    知的能力障害
    軟口蓋裂
      口蓋裂を伴うことが多いため、滲出性中耳炎を高頻度に合併し、軽度〜中等度の難聴をきたしやすいです。

    近視、緑内障、チアノーゼ、不眠症   
    言語障害、運動機能障害 などを合併します。
    

4: Pierre Robin症候群と歯科医療
(1)歯科的特徴   
    小顎症、軟口蓋裂、歯列不正、小口症、摂食嚥下障害、発語障害など。   

(2)歯科的対応   
    呼吸障害には、酸素吸入とモニター管理を行います。   
    特にタービンや超音波スケーラーなど注水器具を使用するときには、呼吸状態に注意を要します。  
    小顎症や歯列不正には、矯正治療も考慮に入れる必要が有ります。


2:トリチヤー・コリンズ(Treacher Collins)症候群
1:概念
(1)特徴   
    第一と第二鰓弓の発生異常による顔面の低形成がみられます。  
    眼裂斜下、小顎症、耳介変形を特徴とする症候群です。 
    下顎顔面骨形成不全症とも言われています。

    

(2)歴史   
    1900年にE.TreacherCollins (18621932)が報告した。

(補足)鰓弓
    動物の初期発生で、魚類では(エラ)に分化する部分に相当する領域です。
    胎児期の初期に一時的に現れ、耳・鼻・咽頭・顎などの器官になります。
    ヒトでは、咽頭や中耳などに分化し咽頭弓といいます。    
    ヒトの場合、咽頭弓は全部で6つあるが、第5咽頭弓は往々にしてほぼ欠如しているか、痕跡的です。  

    第1咽頭弓 ---顎骨弓    
    第2咽頭弓 ---舌骨弓
    第3咽頭弓  
    第4咽頭弓  
    第6咽頭弓

    


2;原因遺伝子と遺伝形式   
    5番染色体(5q32-33.1)TOF1遺伝子の変異による。   
    常染色体優性遺伝。


3:疫学
(1)出生頻度
     5万人に1


4:トリチヤー・コリンズ症候群の症候・症状
(1)全身的特徴  
    眼瞼裂斜下、難聴、下瞼の施毛欠損、小耳変形など。  

      
    『スペシャルニーズデンティストリー障害者歯科 第2版』 から引用

(2)合併症  
    上下肢の異常や先天性心疾患があります。


5:トリチヤー・コリンズ症候群と歯科医療
(1)歯科的特徴   
    小顎症,口蓋裂、高口蓋、歯列不正、歯の形成不全など。    


(2)歯科的対応   
    乳幼児期は口蓋裂の対応と,形成不全歯へのう蝕予防処置を行います。   
    小顎症,開口障害による上気道閉塞に注意し,歯列不正には矯正治療を考慮します。   
    聴覚障害への対応も行います。


3:ハラーマン・ストライフHallermann-Streiff)症候群
1:概念
(1)特徴  
    低身長、疎な頭髪と、目や歯の異常を特徴とする.  
    眼・下顎・顔症候群(oculo-mandibulo-facial syndrome)ともよばれます。

    

(2)歴史  
    1948年にW.Hallermann(19011976),  1950年にE.B.Streif(19081988)が報告しました。


2:原因遺伝子と遺伝形式  
    責任遺伝子は同定されておらず、発症機序も不明です。


3:疫学
(1)出生頻度
    全世界で150例程度報告されています。
    日本では30〜50名程度の患者が存在すると推定されます。


4:ハラーマン・ストライフ症候群の症候・症状
(1)全身的特徴  
    小人症疎な頭髪  
    頭蓋縫合の癒合不全,大泉門の閉鎖不全、  
    短頭,耳介低位や頬骨部の低形成など。

     『スペシャルニーズデンティストリー障害者歯科 第2版』 から引用

(2)合併症  
    下顎の低形成により、新生児〜乳児期に哺乳障害や上気道の狭窄による呼吸障害・呼吸器感染症を合併しやすい。
    先天性白内障なども合併します。


5:ハレルマン・ストレフ症候群と歯科医療
(1)歯科的特徴
  
    先天性歯、乳歯晩期残存,永久歯の先天欠如,   
    倭小歯、狭窄歯列弓、開咬、高口蓋、   
    上下顎骨の発育不全や下顎の運動障害など。  

(2)歯科的対応   
    ウ蝕罹患率が高いため、予防処置を行います。   
    上下顎が小さいため、開口による気道閉塞に注意が必要です。  
    できるだけ小さな器具を使用します。


4:歌舞伎症候群(Kabuki syndrome)
1:概念
(1)特徴   
    歌舞伎役者様の顔貌、骨格異常、知的能力障害と低身長を主症状とする症候群です。
    切れ長の目が特徴で、下眼瞼外側1/3が外反(裏返って眼瞼が外にめくれている様子)していて、
    歌舞伎役者の化粧(隈取(くまどり))を連想させることから、この名前がつけられています。

    

(2)歴史   
    1981年に我が国で見いだされた先天異常症候群です。
    1981年に新川詔夫らと、黒木良和らが、別々に報告しました。   


2:原因遺伝子と遺伝形式   
    12番染色体(12ql2-14)にあるMLL2遺伝子の変異によります。   
    ほとんどが散発性です。
    常染色体優性遺伝の報告もあります。


3:疫学
(1)出生頻度
    3万4千人に1人。
    性差はありません。
    国内外から約400例の報告があります。


4:歌舞伎症候群の症候・症状
(1)全身的特徴   
 @特徴的顔貌     
    長い眼瞼裂、長い睫毛、下眼瞼外反、内眼角賛皮、     
    眼瞼の閉鎖不全、斜視、突出した耳、     
    耳前煙孔,平らな鼻尖,大きな外鼻孔,鼻中隔短縮,     
    広い人中と後頭部毛髪線低位   

 A骨格異常(矢状椎骨裂や第V指短小)   
    皮膚紋理異常,   
    軽度〜中等度の知的能力障害や成長障害。

     『スペシャルニーズデンティストリー障害者歯科 第2版』 から引用


5:治療法
    てんかんに対しては必要に応じて薬物療法が必要です。
    心疾患に対しては必要に応じて手術や薬物療法を行います。
 
6:予後
    主に難治性けいれんの併存及び合併する心疾患により生命予後が左右されます。


7:歌舞伎症候群と歯科医療
(1)歯科的特徴   
    口唇裂,口蓋裂,下口唇中央での陥凹   
    円錐歯、エナメル質形成不全、下顎乳前歯の早期萌出。
    先天性欠如歯、歯列不正。   
    高口蓋、上顎骨発育不全、小顎症,空隙歯列弓、開咬や上唇小帯異常など。    

(2)歯科的対応  
    乳幼児期は口蓋裂への対応と歯の成形不全への齪蝕予防処置を行いあmす  
    知的能力障害と先天性心疾患の対応を行います。  


5:工リス・ファン・クレフェルト(Ellis-van Creveld)症候群
1:概念
(1)特徴   
    軟骨外胚葉性異形成症とも呼ばれたいます。   
    軟骨や外胚葉の形成不全.
    多指症と先天性心疾患を特徴とする症候群です。  

(2)歴史   
    1933年:L.E.Holt,Jr. (18951974) R.Mclntosh(18941986) が小児科の教科書に初めて記述しました。  
    1940年:R.W.B.Ellis (1902〜1966) とS.vanCreveld(18951971)が報告しました。  


2:原因遺伝子と遺伝形式   
    4番染色体(4p16) にあるEVC遺伝子とEVC2遺伝子の変異によ離ます。   
    常染色体劣性遺伝.


3:疫学
(1)出生頻度   
    14万人に1人.


4:Ellis-van Creveld症候群の症候・症状
(1)全身的特徴  
    先天性心疾患として約60%に心房中隔欠損や心内膜床欠損を認めます。
    多指症はほぼ必発です。
    

    骨と軟骨形成異常、短い手足,短い肋骨,多指症  
    爪の形成異常、無汗症や多汗症涙腺,  
    咽頭腺や唾液腺の障害、萎縮性鼻炎や骨の変形があります。  
    
(2)合併症   
    半数以上に先天性心疾患があります。   
    水頭症やDandy-Walker症候群などの合併があります。

(補足)Dandy-Walker症候群
    後頭蓋窩嚢胞、第4脳室の嚢状拡張、小脳虫部の形成不全および小脳テントの挙上を特徴とする先天性の脳奇形です。  
    患者は、しばしば運動能力の発達の遅れ、低血圧、運動失調などの運動障害が見られます。
    およそ半数に精神遅滞があり、水頭症の場合もあります。
    ZIC1 ZIC4 遺伝子のヘテロ接合性消失が、本疾患の原因になることが示唆されています。
    本疾患の治療法として嚢胞の切除から CSF の迂回まで 様々な方法が報告されています。
    脳室腹腔(VP) および膀胱腹膜(CP) シャント挿入が最も一般的な選択であります。

    


5:Ellis-van Creveld症候群と歯科医療
(1)歯科的特徴   
    下顎前歯部の骨欠損, タウロドント、エナメル質形成不全,歯の先天欠如,先天性歯早期萌出。   
    円錐歯,小舌,二分舌.小帯異常,浅い口腔前庭溝、歯肉肥厚、狭高口蓋   
    二分口蓋垂、口唇裂、口蓋癒合不全や下顎角の開大、ながあります。  

     『スペシャルニーズデンティストリー障害者歯科 第2版』 から引用

(2)歯科的対応   
    先天性心疾患の対応。   
    欠損歯の補綴処置。
    歯の形成不全への餓蝕予防処置を行います。   
    矯正治療も検討する必要が有ります。


 
参考資料



  










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