お口大全 (お口の機能と病気と口腔ケア) All the Oral-functions and Care
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聴覚障がいについて

       
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聴覚障がい
  1:聴覚と聴覚障がい
 (1)聴覚とは    
  @聴覚器
     伝音系---外耳、中耳.      
     感音系---内耳(蝸牛)、聴神経からなる.      

        


  B音の伝導      
     音は外耳道を通って鼓膜に届きます。      
     その振動は中耳の耳小骨(ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨)を介して増幅されます。 
     蝸牛内リンパ液に伝わった振動は,周波数により特定の場所で共鳴し、その場所の有毛細胞を興奮させます。      
     この興奮が神経電位として聴神経(第[脳神経)を介して脳幹から脳聴覚野に伝わります。
     これで音として認知されます。  


 (2)聴覚障害 (身体障害者等級表より)
  @定義
     聞こえの不自由な人で、       
     両耳の聴力レベルが70dB以上のもの。  
     または一側耳の聴力レベルが90dB以上で、他耳の聴力レベルが50dB以上のもの、を聴力障害者と言います。

    


2:聴力障害者の分類  
 (1)使用言語・所属コミュニティによる難聴者の分類
  @ろう(あ)    
     音声言語を習得する前に失聴した人たちです。  
     日本手話を母語とするグループです。  
     国内に6〜10万人の方が居るとされます。 
     独自の言語と文化をもつコミュニティを形成しています。  

  A難聴者    
     補聴器を使用しつつ音声言語を母語とするグループです。  
     日本語を母語とするコミュニティに属します。

  B中途失聴者    
     音声言語を獲得した後に失聴した人たちです。
     話すことが可能です。

      


 (2)難聴の種類による分類  
  @伝音性難聴    
     伝音系の障害や病気を原因とします。    
     音が小さくなるため、補聴器による聞こえの改善が容易です。    

  A感音性難聴    
     感音系の障害や病気を原因とします。    
     内耳(蝸牛と有毛細胞)が正常に機能していない状態です。   
     音が歪んで聞こえるため、補聴器による改善には限界があります。    
     重症例では人工内耳も応用されます。     

    1)突発性難聴       
       突然に原因不明な内耳性の感音性難聴が発症する疾患です。      
       男女差はなく、50〜60歳代に多いが全年齢で発症します。     

     突発性難聴=突然、耳の聞こえが悪くなる原因不明の疾患です。

    2)老人性難聴       
       高齢者にみられる聴力の生理的な年齢変化で、内耳性の感音性難聴を主とします。       
       聴力の低下は高音域から発生し、徐々に会話音域低音域へと広がります。   

  B混合性難聴    
     伝音性難聴と感音性難聴の両者を併発したものです。
    


 (3)聴力損失程度による分類  
  @軽度難聴:25dB以上40dB未満    
      小さな声や騒音下での会話の聞き間違いや聞き取り困難を自覚します。    
     会議などでの聞き取り改善目的では,補聴器の適応となることもあります。    

  A中等度難聴:40dB以上70dB未満    
     普通の大きさの声の会話の聞き間違いや聞き取り困難を自覚します。    
     補聴器の適応となります。    

  B高度難聴:70dB以上90dB未満    
     非常に大きい声か補聴器を用いないと会話が聞こえない状態です。
     聞こえても聞き取りには限界があります。   

  C重度難聴:90dB以上    
     補聴器でも、聞き取れないことが多い状態です。   
     人工内耳の装用が考慮されます。

    


3:聴力障害の原因
 (1)先天的原因   
  @遺伝など
     遺伝性難聴、奇形Treacher Collins症候群、LEOPARD症候群   
  
  A胎生期の感染症
     先天性風疹症候群、先天性サイトメガロウイルス感染症、など


 (2)後天的原因   
  @伝音系(外耳,中耳)の障害や病気の原因     
     中耳炎、耳硬化症など。    
     Down症候群では中耳炎から難聴になることが多くなります。  

  A感音系(内耳,聴神経,脳)の障害や病気の原因     
     騒音     
     ウイルス感染---水痘帯状庖疹ウイルスへルペスウイルスムンプスウイルスなど    
     Ramsay Hunt症候群
     薬の副作用---アミノグリコシド系抗菌薬, シスプラチン     
     聴神経腫瘍     
     脳血管障害後遺症   突発性難聴   老化など。

      耳硬化症=アブミ骨が動きにくくなる伝音性難聴です。


4:疫学
 (1)2011(平成23年)生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児.者等実態調査)   
     聴覚障害児・者数----約24.2万人
     実際に生活の場で補聴器が必要な人---1,000万人  


5:臨床症状
 (1)先天性もしくは言語獲得期前に高度の聴覚障害のある人   
  @小児の場合    
     人工内耳や補聴器により、聴覚活用している人が多いとされています。    
     発語は不明瞭になりやすいが、訓練で明瞭な発音を獲得する人もいます。   
     ろう者では手話や筆談が用いられるが,日本語の読解力(リテラシー)に個人差があります。   
     なかには筆談や文字によるコミュニケーションが苦手な人もいます。   

  A高齢者の場合    
     不就学者も存在し, 日本語はもちろん手話も通じないことがあります。  


 (2)先天性もしくは言語獲得期前に軽度〜中等度の聴覚障害のある人   
     補聴器を介し音声で日常生活を送る難聴者が多いとされています。   
     おもに補聴器.筆談や口話が用いられます。   
     発音はやや不明瞭〜明瞭です。  


 (3)後天的に高度の聴覚障害になった人   
     補聴器や人工内耳を装着する人もいれば.その効果がなくほぼ聞こえない状態の人もいます。   
     おもなコミュニケーションは筆談であり,手話や口話を習得し使M1する場合もあります。   
     発音は明瞭であるが失聴期間が長くなると機能性構音障害が生じます。  


 (4)老人性難聴の人   
     徐々に高音から聴力が低下するため,当初は自覚されにくいとされています。   
     おもなコミュニケーションは補聴器大きな声や筆談となります。


 補足:聴覚障害のある人のコミュニケーションを決める因子

    


6:聴覚障害者の支援機器や設備
 (1)聴力を補うもの   
     補聴器 人工内耳 人工中耳 聴性脳幹インプラントなど.


 (2)生活のなかでの設備   
     音を光,振動やにおいなどに変えるシステム.   
     テレビの字幕機能や電光掲示などの情報を文字で伝えるシステム.


 (3)コミュニケーション支援   
     透明マスク 簡易筆談器 音声文字変換技術など.


 (4)遠隔地との会話   
     FAX、メール、チャット、テレビ電話など       
     遠隔文字通訳や遠隔手話通訳など


 (5) 障害者総合支援法における意思疎通支援事業   
     市町村の手話通訳者および要約筆記者の派遣事業など.


7:聴覚障害者のコミュニケーション方法
 (1)手話
     手指や口の動き,表情および体の動作を同時に使う視覚言語です。   
     筆談よりも、手話での対応のほうが緊張や不安が少ないとされています。   
     手話通訳者が随伴しているときでも聴覚障害のある人に顔を向けて話をすることが肝要です。

  @日本手話  
     独自の文法をもつ言語です。  
     聾学校で使用されています。  
     使用者:ろう者の方です。  

  A日本語対応手話  
     日本語の語順です。  
     手話単語は同じですが、文法が異なります。
     使用者:難聴者 中途失聴者の方に使用されています。 

      
       ・・・・?か:敬意表現の疑問詞「?ですか」

  補足:手話のいくつかの例

     こんにちは    ご苦労様    どういたしまして
     

     おしまい   勉強をする   頭が良い


 (2)口語 (読話.読唇)
    聴覚障害のある人が,話し手の唇の動きや口形を読みとって言葉を理解する方法です。  
    話し手にとっては楽な方法です。   
    しかし聴覚障害のある読み手にとっては神経を集中しなければならず長時間の会話には適しません。

    


 (3)筆談
    文字を書いて意思疎通をはかる方法です。   
    紙に書く、簡易筆談器のボードに書く、パソコン画面に入力するなどの方法が有ります。     
    スマートフォンなどの音声認識技術を利用するなどの方法もあります。   
    手話を用いない中途失聴者や難聴者では、最も多く利用されます。  
    なお、同じ量の情報を伝えるには,筆談では音声会話の5倍ほどの時間が必要となります。

    


 (4)指文字
    指の形で五十音を表現するもので、手話にない単語に用いられています。

    


 (5)身振り表情
    ジェスチャーやキューサイン(話し言葉を視覚化するツール)なども応用されます。

    



聴覚障害者と歯科医療・口腔ケア
  (1)口腔内の特徴   
   聴覚障害のある人に特有の口腔の特徴は有りません。   
   しかし、歯科保健情報不足による清掃不良を起こしやすいと言われています。
   コミュニケーション不足による治療の中断や,長期の無受診による雛蝕や歯周炎の発症をみることもあります。 
   Down症候群Treacher Collins症候群など基礎疾患がある場合、それぞれの症候群の口腔の特徴を示します。  


(2)歯科治療、口腔ケアを行う上の注意点   
 @環境設定     
   問い合わせや緊急時に対応するため、FAXやメールなどの連絡先を公開すると良いとされています。     
   筆談用具を用意し、耳マークなどを掲示します。    
   カルテに聴覚障害とわかるように示しておきます。   
   待合室のテレビに字幕をつけ、番号呼出しや振動式呼出し器などで待ち時間の負担を減らします。  


(3)コミュニケーション時の配慮   
   雑音の少ない環境を確保します。   
   聴覚障害のある人と正面で向き合い、マスクを取り口元をみやすくします。   
   聴覚障害のある人からみて逆光にならないようにします。   
   補聴器の使用者には通常の音量で話します。   
   筆談は、ていねいに書くよう心がけ,書いた用紙はコピーして渡すとよいと思われます。   
   説明を要するときは、予約時間を長めにとります。   
   日本語の苦手な人には、文字で通じない内容があることも考慮します。   
   この場合、手話通訳を用意するか帯同を依頼します。   
   通訳者の位置はできるだけ医療者側に設置し、視線は意識的に患者に向けます。  


(4)心理的配慮   
   ろう者の診療をする際には,簡単な手話を覚えるとよい.  
   患者の前でひそひそ話をしないようにします。
   遠慮していることが多いため、言いやすい雰囲気をつくります。   
   大きな声で話しかけるときや、FAXでの連絡時には、プライバシーにも配慮します。  


(5)人工内耳装用者での注意事項   
   モノポーラ電気メスは使用できません。   
   バイポーラ電気メスは、直近でなければ使用できます。   
   MRIは、磁場の強さや人工内耳の種類により使用できないため、耳鼻科医に確認が必要です。

       
     誘導電流が発生し電極を通し内耳組織を損傷したり,植え込んだ装置を破損します。


(6)実際の歯科治療・口腔ケア時の配慮
   診療用いすを動かすときや、器具を口腔内に入れるときには,前もって知らせます。
   治療中は、手鏡で処置をみてもらうなど、視覚的な情報提供を行います。
   口を開ける、口を閉めるなどはサインで伝えます
   問いかけるときは、できる限りマスクをはずし、説明には絵写真や模型などの視覚素材を用います。

          
     口を開く            口を閉じる    


補足:実際の配慮点
   雑音を少なくします。
   正面で向き合う 逆光にならない
   マスクを取り、口元を見やすくする
   補聴器の人には通常の音量で話す
   患者の前でひそひそ話をしない
   聞こえないのでわかりませんと言える雰囲気
   FAX番号を提示  

  @難聴者の方は、会話時に顔や口をみます
   →可能ならば、マスクを外す    

     

  Aうなづくは、理解でなく、ことばがわかった、という印です  

     


  B腕を組む=一生懸命聞いているというサインです。    

     


補聴器 
  補聴器について  
     音を増幅する器具で、伝音声難聴の方が適応となります。
     耳かけ型、挿耳型、箱型があります。
     雑音も増幅させるため、会話はできるだけ静かな環境で行うようにします。  

         



耳掛け型補聴器

 集音器  耳掛けタイプの集音器 集音姫 デジタル 左右両用 HA-1


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 補聴器  耳掛け型デジタル シーメンス シグニア FUN-P 中度〜高度難聴用



挿耳型

 ONKYO OHS-D21R 耳あな型補聴器 右耳用



参考資料 
 
 『難聴・耳鳴りの9割はよくなる (脳を鍛えて聞こえをよくする「補聴器リハビリ」)


 『耳鳴り・難聴 自分で治す速効療法



  22-3-21



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