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新型コロナウイルス感染症ついて

      
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新型コロナウイルス感染症 (COVID-19:Corona Virus Disease-19)
1:新型コロナウイルス感染症とは
 (1)新型コロナウイルス感染症とは    
     SARS-CoV-2と呼ばれるウイルスが原因で起きる感染症です。
     2019年の終わりごろに発生したのを皮切りに、あっという間に世界中に感染が拡大しました。
     2020年1月7日世界保健機関( WHO) は、中国武漢で発生している疾患の原因であるウイルスを
     2019-nCoV2019 novel coronavirus の略称)と暫定的に命名しました。

        
           2020年1月29日 日経新聞から引用


 (2)原因ウイルス SARS-CoV-2について
     一本鎖プラス鎖RNAを持つSARS関連コロナウイルス (SARSr-CoV) に属するコロナウイルスです。

     しかし、SARS-CoV-2は、重症急性呼吸器症候群 (SARS) の原因ウイルスではありません。
     SARSの名を冠しているのは、SARS-CoV-2が2002年から2003年にかけて流行したSARSの原因ウイルスである
     SARSコロナウイルス(SARS-CoV、あるいはSARS-CoV-1)と同種で、SARS関連コロナウイルス(SARSr-CoV) の
     株の一つと考えられているためです。

     ウイルス粒子は、50〜200 nm(ナノメートル)ほどの大きさです。
     一般的なコロナウイルスと同様に、S(スパイク)タンパク質、N(ヌクレオカプシド)タンパク質、
     M(膜)タンパク質、E(エンベロープ)タンパク質として知られる4つのたんぱく質と、RNAにより構成
     されています。

          


 (3)受診の目安
     風邪の症状や37.5℃以上の発熱が4日以上続いている。(解熱剤を飲み続けなければならない時を含みます)
     強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある。  

     ※ 高齢者や基礎疾患等のある方は、風邪の症状や37.5℃以上の 発熱が2日程度続く場合、
       又は強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある場合は受診の対象となります。


2:感染様式
 (1)感染経路
     飛沫感染が主であり、一部接触感染でも感染します。

 (2)潜伏期間
     潜伏期間は1〜14日で、平均約5日です。(平均値=4.82日±2.71
     インフルエンザは約2日とされており、比較すると長い潜伏期と言えます。
   
     最も早く出現する症状は発熱(平均4.78日)です。
     倦怠感(5.3日)、咽頭痛(5.4日)、咳嗽(5.7日)と続きます。
     味覚・嗅覚障害(6.9日)、呼吸困難感(7.1日)は、感染から1週間ほど経過して出現していることが多い
     ようです。


 (3)SARS-CoV-2の感染力
     基本再生産数 (R0) の多くの研究が有りますが、数字の差異があり、また評価が分かれています。
     しかし、R0は、1.4から3.9 と推定されています。
     これは無防備な状態では、SARS-CoV-2は通常、感染者1人当たり1.4人から3.9人の新規感染者を生じさせる、
     という意味です。
     これにより、SARS-CoV-2は少なくとも4人を連鎖的に感染させることが確認されています。
     他の未査読の研究では、R0を3.30から5.47とするもの2.13から4.82とするものもあります。


 (4)COVID-19と感染症法
   @臨床現場での取り扱い     
      COVID-19は新型インフルエンザ等感染症の1〜5類に属さない、「指定感染症」に分類されています。
      SARSとMERSは感染症法において2類感染症の「重症急性呼吸器症候群」、「中東呼吸器症候群」にそれぞれ
      分類されています。 (参照:「感染症について」

      実際には、COVID-19は2類(あるいは1類)として扱われています。

        


   A実験室内でのウイルスの所持について
      SARS-CoVは二種病原体、
      MERS-CoVは三種病原体、
      SARS-CoV-2は四種病原体、に分類されています。

      所持の許可「教育訓練、滅菌の管理」において、SARS-CoVやMERS-CoVの方が、SARS-CoV-2よりも
      厳しく管理されています。


3:疫学
 (1)日本における感染者数等 (2022/1/10現在)
     感染者数----1,764,280人
     死亡者数------18,399人  (致命率=1.04%

           
        グラフは、2020/4/19現在


 (2)世界における感染者数等 (2022/1/10現在)
     感染者数----307,155,337人 
     死亡者数------5,488,628人 (致命率=1.79%


4:症状
 (1)初期症状
     症状は特異的ではなく、症状のないもの(無症候性)から重症の肺炎、死亡まで幅広い。
     初期症状はインフルエンザ普通感冒と似ており、発症早期の段階では鑑別が困難である

   @典型的な症状・徴候
      発熱、空咳、疲労、喀痰、息切れ、咽頭痛(のどの痛み)、頭痛、下痢などがある。
      くしゃみ、鼻水、のどの痛みなどの上気道症状は少ない

      この病気は下気道に親和性が強く、排ウイルスのピークは発症日から2日〜4日後くらいとされています。

        
        京都大学 ヒト生物学高等研究拠点(ASHBi)HPから引用


   Aその他の初期症状
      下痢や吐き気頭痛や全身のだるさなど、消化器系や神経系の症状の場合もあります。


 (2)進行症状
     感染後1週間から2週間以内に発症した肺炎はウイルス性のものが多いと見られています
     二次的な細菌性肺炎も存在します。

     重症化すると急性呼吸窮迫症候群 (ARDS) や急性肺障害 (ALI) などを起こします。(特徴=息切れ)
     その時には体外式膜型人工肺適応となる場合が多い様です。

     高齢者の場合には基礎疾患の重症化が観察される。
     また、若年層の場合には栄養不足などによる体力の低下に伴う強度の発熱症状が観察されます。

        


 (3)神経学的症状
   @嗅覚喪失
      2020年6月のシステマティックレビューでは、嗅覚障害の有病率は29%から54%でした。
      2020年8月の米国ペンシルベニア大学の研究では、患者の96%に何らかの嗅覚障害がありました。
      2020年7月の欧州CDCの報告では、嗅覚喪失の有病率は約70%とされています。
      嗅覚や味覚の攪乱は、若い患者に多く確認されました。

   A味覚消失
      一部の人々はCOVID-19により、一時的に食物の味の変化(味覚障害または味覚消失)を経験します。
      2020年6月のシステマティックレビューでは、味覚障害の有病率は24%〜54%と報告されました。
      別の2020年の6月のシステマティックレビューは、味覚減退の有病率は1% - 8%と報告されました
      2020年7月の欧州CDC報告では、味覚障害の有病率は約54%であるとされています。


 (4)重症化リスクの差
     原因ウイルスに感染して重症化するかどうかは、以下の要因が影響します。
     
     素因-------年齢、ABO式血液型や人種などに関連する遺伝子
     持病-------慢性閉塞性肺疾患(COPD)、がん、2型糖尿病、高血圧、
     生活習慣---肥満、喫煙などの生活習慣、
     その他-----医療へのアクセス(居住地域や所得、医療保険の種類)。


 (5)経過
     80%=軽症のまま治癒   20%=重症化し入院   1%=死亡

        
        「新型コロナウイルス感染症 COVID-19 診療の手引き 2021 第5版」  から引用


5:変異株について
  一般的にウイルスは増殖や感染を繰り返す中で徐々に変異をしてくことが知られており、新型コロナウイルスについても
  少しずつ変異をしています。
  大半の変異はウイルスの特性にほとんど影響を及ぼしません。

  しかし一部の変異では、感染・伝播性、重症化リスク、ワクチン・治療薬の効果、診断法などに影響を及ぼすことが
  あります。
  国立感染症研究所では新型コロナウイルスの変異株について迅速リスク評価を行い、つぎの3つに分類されます。
     
 (1)懸念される変異株(VOC)
     公衆衛生への影響が大きい感染・伝播性、毒力、及び治療・ワクチン効果の変化が明らかになった変異株。
     
     アルファ株----2020年9月英国------感染性=1.32倍、重篤度=1.4倍
     
     ベータ株-----2020年5月南アフリカ--感染性=5割程度高い可能性、重篤度=入院時死亡リスク 高い可能性
     
     ガンマ株-----2020年11月ブラジル--感染性=1.4-2.2倍高い可能性、重篤度=入院リスクが高い可能性
     
     デルタ株-----2020年10月インド-----感染性=高い可能性、重篤度=入院リスクが高い可能性 
     
     オミクロン株--2021年11月南アフリカ--感染性=極めて高い可能性、重篤度=弱い可能性
                              潜伏期間の中央値は3日、スパイク蛋白に30カ所の変異
     BA2株-------


 (2)注目すべき変異株(VOI)
     公衆衛生への影響が見込まれる感染・伝播性、毒力、及び治療・ワクチン効果や診断に影響がある可能性がある、
     又は確実な変異株で、国内侵入・増加の兆候やリスクを認めるもの。    
        
     イプシロン株---2020年5月米国
        
     シータ株-------2021年1月フィリピン
        
     カッパ株-------2020年10月インド


 (3)監視下の変異株(VUM)
     公衆衛生への影響が見込まれる感染・伝播性、毒力、及び診断・治療・ワクチン効果に影響がある可能性がある
     変異を有する変異株。
        
     アルファ株
     カッパ株(旧)
     ラムダ株
     ミュー株


6:診査・診断
 (1)血液検査
     血液検査での確定診断は現時点で困難だとされています。
     約8割にリンパ球減少が、約3割に血小板減少、白血球減少がみられます。
     CRP上昇、AST上昇、ALT上昇、LDH上昇、D-dimer上昇などもみられることがあります。
     重症例ほど異常値が現れやすい傾向にあります。


 (2)画像診断
     胸部X線撮影からの診断は、難しい場合が多い様です。

     CT所見において一般的に両側性のすりガラス陰影と浸潤影を呈することが分かっています。
     他の早期診断に有用と思われる特徴として、結節性陰影、網状影、病変の辺縁性分布が挙げられています。
     一方、空洞、不連続な結節、胸水貯留、リンパ節腫脹は明らかではありません。

          


 (3)PCR検査 (PCR:polymerase chain reaction)
   @PCR検査とは
       DNAサンプルから特定領.域を数百万〜数十億倍に増幅する一連の反応またはその技術です。
       検体は鼻腔咽頭拭い液、鼻腔拭い液、唾液を用います。

   A原理  
        DNAサンプルの加熱と冷却の繰り返しサイクルの中で、二本鎖DNAの乖離、プライマーの結合、酵素反応
        によるDNA合成、という3つの反応が進みます。  
        最終的に特定領域のDNA断片が大量に複製されます。  
        極めて微量なDNA溶液で目的を達成できます。

        


   BCOVID-19とPCR検査
      ウイルスの遺伝子(DNA)を増幅させて検出する技術です。

      抗原検査より少ない量のウイルスを検出できるので、感染初期でも検査が可能です。
      検査機関に出向くか、献体を検査機関に運ぶ必要があります。
      判定には数時間を要する上に、移送時間もかかかります。

        


 (4)抗原検査
   @抗原検査とは     
      検査したいウイルスの抗体を用いてウイルスが持つ特有のタンパク質(抗原)を検出する検査方法です。
      PCR検査に比べ検出率は劣りますが、少ない時間で結果が出せます。
      特別な検査機器を必要としないことから速やかに判断が必要な場合等に用いられることが多いです。
      検体は鼻腔咽頭拭い液、鼻腔拭い液、唾液を用います。

   ACOVID-19と抗原検査
      ウイルスを特徴づけるたんぱく質(抗原)を調べます。

      検出には一定以上のウイルス量が必要で、感染初期では検査が出来ません。
      検査キットを用いれば、どこでも検査が出来ます。
      検査に要する時間は、15〜30分です。

          


 (5)抗体検査
   @抗体検査とは
      過去にそのウイルスに感染していたかを調べる検査です。
      ウイルスに感染すると形成されるタンパク質(抗体)が、血液中に存在するかを調べます。
      体内に抗体ができるまでには時間がかかり、現在そのウイルスに感染していないことの検査に用いることは難しい
      とされています。
      ウイルスに感染した場合だけでなく、ワクチンを打ったことによって抗体ができた場合にも陽性となります。
      検体は血液を用います。

      ウイルス感染後に人の免疫系は急性期免疫グロブリン抗体のIgMを分泌します。
      その後に長期免疫グロブリン抗体のIgGを分泌します。

        

        IgM抗体()、IgG抗体()の場合→未感染もしくは感染のごく早期です。   
        IgM抗体()、IgG抗体()の場合→ ウイルスも存在する可能性が高い事を示します。
        IgM抗体()、IgG抗体()の場合→治癒後の可能性が高い.

           


   ACOVID-19と抗体検査
      過去に感染していたか、抗体ができているかを調べます。
      抗体があれば、感染しにくい、感染しても軽症で済む可能性があります。

        


 (6)酸素飽和度検査 (Saturation サチュレーション)
   @酸素飽和度とは
       赤血球中のヘモグロビンのうち、酸素と結合しているヘモグロビンの割合のこと。
       血液の中にどの程度の酸素が含まれているかを示す指標。
         SaO2 : 採血した血液サンプルをガス分析して得た動脈血酸素飽和度。
         SpO2 : パルスオキシメータを用いて測定した動脈血酸素飽和度。

  (2)酸素飽和度と動脈血酸素分圧の関
      SpO2(%)      100   96   90   85   80   60
      PaO2(mmHg)    96   80   60   50   40   30

          PaO2 55mmHg以下は呼吸不全です。(静脈血酸素分圧は40mmHg ) 

        


   Bパルスオキシメータ
      プローブは発光部と受光部(センサー)で構成されています。
      発光部は赤色光と赤外光を発し、これらの光が指先等を透過(または反射)したものを受光部(センサー)で
      測定します。

      血液中のヘモグロビンは酸素との結合の有無により赤色光と赤外光の吸光度が異なるので、センサーで透過光や
      反射光を測定して分析することによりSpO2を測定することができます。
      
        

   CCOVID-19と酸素飽和度
      血中酸素飽和度は通常96~99%が理想的な値とされています。
      新型コロナウイルスのような肺炎や気管支喘息など呼吸器に関わる疾患にかかっていると95%以下になることが
      多く、その診断の目安として利用されることがあります。

      新型コロナウイルスにかかった人の診断の目安としては
        99〜96%を軽症、
        96〜93%を中等症T、
        93%以下を中等症U、
        90%を下回る場合、呼吸不全として速やかに対応すべき状態で重症と判断されることがあります。


7:治療−1:重症度による治療
  COVID-19に対する特定の効果的な治療法や治療法は現在未だ存在しません

  そのためマネジメントは対症療法、輸液療法、酸素支持、体位管理などであり、必要に応じて臓器を守るために医薬品や
  医療機器が使用されます。

  COVID-19のほとんどは軽症であり、その場合の支持療法には、症状緩和(発熱、体の痛み、咳)のための薬剤、
  またはNSAIDなどの薬物療法、水分の適切な摂取、休息、および鼻呼吸などがあります。

  適切な衛生管理と健康的な食事も推奨されます。

  重症の場合は、病院での治療が必要になりえます。

  酸素レベルが低い患者にはデキサメタゾンが強く推奨され、死亡リスクを減少させることができます。

  呼吸支援が必要となれば、非侵襲的換気、そして最終的には人工呼吸器を付けて集中治療室への入室が必要になる
  場合もあります。

  体外式膜型人工肺(ECMO)は呼吸不全の問題に対処するために使用されることもあります。

  また凝固異常も病態に関わっていることから、ヘパリンなどの抗凝固薬を併用することも一般的となっています。

        


 (1)軽症
     特別な医療によらなくても、経過観察のみで自然に軽快することが多い。
     内服による解熱薬や鎮咳薬などの対症療法は,必要なときにのみ行います。
     飲水や食事が可能なら、必ずしも輸液は必要ではありません。
     診察時は軽症と判断されても、発症2週目までに急速に病状が進行することがあります

     病状悪化はほとんどの場合、低酸素血症の進行として表れます。
     病状が進行しているにもかかわらず,呼吸苦低感受性の症例(silent hypoxia)があることに留意します。
     このため自覚症状のみでなく,可能な限りパルスオキシメーターによるSpO2測定が求められる.

     自宅療養や宿泊療養とする場合、体調不良となったらどのように医療機関を受診したらよいか、あらかじめ患者に
     説明しておく必要があります。

     軽症患者は発症前から感染性があるため、人との接触はできるだけ避けることが必要です。
     同居家族がいる場合には、生活空間を分けること、マスク着用や手洗いの励行を指導します。


 (2)中等症T-呼吸不全なし
     安静にし、十分な栄養摂取が重要です。
     また, 脱水に注意し、水分を過不足なく摂取させるよう留意します。

     バイタルサインおよび酸素飽和度(SpO2)を1 日3 回程度測定します。
     低酸素血症を呈する状態に進行しても呼吸困難を訴えないこともあります。
     
     中等症では肺炎を有するが, 以下のリスク因子を有する場合, 重症化しやすいことが知られており注意が必要です。
        高齢者、
        基礎疾患(糖尿病・心不全・COPD・高血圧・がん)
        免疫抑制状態
        妊婦

     喫煙者は禁煙が重要となります。
     血液検査や肺炎の画像所見から細菌感染の併発が疑われる場合は、喀痰検査ののち, 抗菌薬を開始します。

     発熱、呼吸器症状や基礎疾患に対する対症的な治療を行います.
     レムデシビルの投与が考慮される 。

     現時点では,酸素投与が必要のない患者では、ステロイド薬は使用すべきではないとされています。
     中等症II 以上とは対照的に,予後の改善は認められず,むしろ悪化させる可能性が示唆されています。
     ただし、継続使用中のステロイド薬を中止する必要はありません。


 (3)中等症U-呼吸不全あり
     呼吸不全のため、酸素投与が必要となります。
     呼吸不全の原因を推測するため、酸素投与前に動脈血液ガス検査(PaO2,PaCO2)を行います。
     また、必要に応じて人工呼吸器やECMO(エクモ)の医療体制の整う施設への転院を考慮します。

     肺の浸潤影が拡大進行するなど急速に増悪する場合があります。
     このような場合には、ステロイド薬を早期に使用すべきであり、さらにレムデシビルの使用も考慮します。
     また,バリシチニブやトシリズマブ( 適応外使用であることに留意)が用いられることもあります。

     中等症II 以上では、ステロイド薬の使用によって予後改善効果が認められるため、強く推奨されています。
     ステロイド薬としてはデキサメタゾン6 mg が最もエビデンスがあり、最長10 日間使用します。

     同じ力価の他の薬剤,プレドニゾロン40 mg,メチルプレドニゾロン32 mg も代替使用可能と考えられています。
     ただし,高用量ステロイド投与(ステロイドパルス療法)の有効性と安全性は明らかになっていません。

     通常の場合、O2 5 L/min までの経鼻カニュ-ラ、あるいはO2 5 L/min まで酸素マスクにより、SpO2 ≧ 93% を
     維持します。
        (経鼻カニュラ使用時は、エアロゾル発生抑制のため, サージカルマスクを着用させます)

     酸素マスクによるO2 投与でもSpO2 ≧ 93% を維持できなくなった場合, ステロイド薬やレムデシビルなどの効果を
     みつつ、人工呼吸への移行を考慮します。

     適切な気管挿管のタイミングを逸すると治療成績を悪化させる場合があることに十分留意します。

        


 (4)重症
   @気管内挿管
      必要に応じて気管内挿管が行われます。
     
   A人工呼吸器
      人工呼吸器の使用が併用されます。
     
   B体外式膜型人工肺(ECMO:Extra-Corporeal Membrane Oxygenation)
      人工肺とポンプを用いた体外循環回路による治療です。
      肺炎などで呼吸不全となった場合、酸素投与からはじまり、改善なければ陽圧人工呼吸器管理へと、
      肺を酷使する治療法が行われます。

      ECMOは肺が本来行うべき酸素化と二酸化炭素除去を代替し、肺が充分に休める状況を作り出します。
      それにより、陽圧人工呼吸や高濃度酸素による肺障害を回避しつつ、重症呼吸不全における治療時間を確保する
      ことができます。

         
        非侵襲的陽圧換気療法 (NPPV=Non invasive Positive Pressure Ventilation)


   C血液浄化療法
     多臓器不全が進行する前の初期段階において、急性血液浄化療法がおこなわれます。
     感染症患者に対する透析治療で、炎症性サイトカインなど各種メディエーターの吸着除去を行います。

   D血栓症対策
     重症感染症および呼吸不全は、深部静脈血栓症の中等度リスク因子です。
     さらに、COVID-19 患者においては,サイトカインストームや血管内皮障害などにより線溶亢進および線溶抑制が
     合併していると推定されます。
     肥満、不動、D ダイマーが正常上限の3〜4倍以上を超えるような場合には、ヘパリンなどによる抗凝固療法が
     推奨されています。
     この時、低用量のヘパリンの予防投与(10,000 単位 / 日程度)が用いられています。


7:治療-2:治療薬
  2022/1/1現在、治療承認薬は以下のものがあります。

  治療承認薬
     ベクルリー(レムデシビル)
     デカドロン(デキサメタゾン)
     ヘパリン
     ロナプリーブ(抗体カクテル) - カシリビマブ(遺伝子組換え)およびイムデビマブ(遺伝子組換え)
     ゼビュディ(ソトロビマブ---遺伝子組換え)

 (1)抗ウイルス薬等
   @レムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注液100mg 等)
      機序
        レムデシビルはRNAウイルスに対し広く活性を示すRNA依存性RNAポリメラーゼ 阻害薬で、
        元来はエボラウイルス感染症の治療薬として開発されたましたが、実験的にはCOVID19 に対し良好な活性
        を示します。


   Aファビピラビル(商品名アビガン錠)
      機序
        新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症(但 し,他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は
        効果不十分なものに限る)に限定し2014 年に厚生労働省の承認を受けている薬です。
        その作用機序は,生体内で変換された三リ ン酸化体 (T-705RTP) が、ウイルスのRNA ポリメラーゼを選択的に
        阻害するものであることから、インフルエンザウイルス以外のRNA ウイルスへも効果を示す可能性があると
        されています。


 (2)抗体
   @ソトロビマブ(Sotrovimab)
      SARS-CoV-2と呼ばれる重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2に対する活性を有する、
      二重作用中和ヒトモノクローナル抗体医薬品です。
      ソトロビマブは、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合するように設計されています。
      日本では2021年9月に特例承認されました。

   Aロナプリーブ(抗体カクテル 商品名:REGEN-COV)
      カシリビマブ(REGN10933)とイムデビマブ(REGN10987)の2つのモノクローナル抗体で構成され、
      混合して使用する必要があります。
      2つの抗体を組み合わせることで、逃避変異を防ぐことを目的としています。
      また合剤としても販売されています。


 (3)その他の薬
   @デキサメタゾン(商品名デカドロン)
     デキサメタゾンを新型コロナウイルス感染症の複数の患者に投与した結果、気管挿管や気管切開を伴う人工呼吸器
     をつけた患者でおよそ35%、マスクをつけて酸素を供給した患者でおよそ20%、死亡率が下がった。
     この結果を受け、イギリス政府はデキサメタゾンを同感染症の治療薬として緊急承認しました。
     日本でも2020年7月に、レムデシビルに続く2つ目の、効果が検証され国内で使用が認められた治療薬となりました。


   Bイベルメクチン(駆虫薬)
      イベルメクチンにはSARSコロナウイルス2を含む複数の一本鎖プラス鎖RNAウイルスに対して抗ウィルス効果が
      存在する事が分かっています。


8:予後
  COVID-19患者の10〜20%が1か月以上続く後遺症(Long COVID)を経験することがあります。
  罹患による重度の炎症反応、血栓性微小血管症、静脈血栓塞栓症、それらに伴う酸素欠乏よる後遺症として、
  肺や心臓、脳、腎臓、血管系など多くの臓器や器官系に長期的な損傷が引き起こされる場合があると考えられて
  います。


9:予防
  ハーバード大学医学部は、COVID-19の感染歴の有無にかかわらず、2回のワクチン接種と、少なくとも6ヵ月後の3回目の
  ブースターショット、そして室内でのマスク着用が最も重要な予防策だと指摘しています。

 (1)日常生活上の注意
   @マスク
      病原体の侵入を防ぐほか、喉の保湿に有益で、また保菌者が他者に感染させる可能性を減らします。
      食事中などはしゃべらない(人と向かい合わせにならない)、

   A個人様防護具
      保護衣(ガウンエプロン)、マスクN95マスクサージカルマスク)、ゴーグルフェイスシールド、
      フェイスマスク、帽子(キャップ)、シューカバー、無菌手袋などです。

   B手洗い
      自宅でも外出時でも、他の人が触れたものに触れた場合は、手を石鹸で洗い、水で30秒以上すすぎます。
      また、手で自分の目や鼻や口に触れないようにします。


   C室内の環境管理:換気
      感染源となりうる飛沫やエアロゾルが屋内に滞留することを防ぐため、換気の徹底を推奨されています。
      ICU患者においては、可能であればエアロゾルが発生する手技は陰圧室にて行うことが推奨されています。

      ヒトが集まると呼気の中からCO2が排出され、環境中のCO2濃度が高くなります。
      建築基準法では、二酸化炭素濃度(CO2濃度)を1000ppm以下に抑えるよう定められています。
      この基準を守るためには、1人あたり1時間で30立方メートルの換気量が必要となります。
      
        

      大気中のCO2濃度
         空気中の二酸化炭素濃度は通常410ppmとされています。

      1000ppm以下---------空気がクリーンな状態。このCO2濃度を基準に保つようにする。

      1000〜1500ppm-------許容範囲の数値。時々、室内の一部の窓を開けて換気する程度で大丈夫です。

      1500ppm〜2500ppm---悪い数値。眠気や倦怠感を感じる可能性も有ります。
                      30分に数分ほど窓を全開にして換気する必要が有ります。
                      CO2濃度が下がるまでは部屋の使用を控えます。

      2500ppm以上---------非常に悪い数値。
                      濃度の数値が下がるまで、常時窓を全開にして換気を行い、部屋の使用を控えます。

      健康被害が起こるCO2濃度
         3000ppmを超えると頭痛・めまい・吐き気などの症状が見られるようになります。
         6000ppmを超えると意識を失ってしまう可能性もあります。


   D社会的距離
      3つの密(密閉・密集・密接)を避けるための、距離を置くことです。
      3密が行われた場合の指標として、二酸化炭素(CO2)濃度が上がります。
      

  E栄養補給と休息
      免疫力の低下は感染しやすい状態を作るため、偏らない十分な栄養や睡眠休息を十分とることが大事です。
      これは風邪やほかのウイルス感染に関しても非常に効果が高い。


 (2)ワクチン
     米国疾病予防管理センターとハーバード大学医学部は、2回目のワクチン接種から少なくとも6か月後に3回目の
     ブースターショットを行うことを強く推奨しています。
     COVID-19ワクチンがオミクロン変異体からどの程度保護できるかを調べたデータによると、3回目の
     ブースターショットを受けた人の場合、重篤な症状、入院、死亡の可能性が大幅に減少することを示す証拠も
     得られています。

        

     詳細は、「ワクチン」へ


 (3)うがいの否定と再考
     予防としてうがいが有効であると言われてきましたが、最近ではその効果に疑問も述べられています。
     インフルエンザウイルスは、口や喉の粘膜に付着してから、胞内に侵入するまで20分位しかかかリません
     20分毎にうがいを続けること自体が、無理かつ非現実的であるとされています。
     ウイルスは鼻の奥で増殖するので、喉のうがいは全く意味が無いとも言われています。

     反証1
     一方で、イソジンなどの、ポピドンヨードによるうがいにより、有病率、欠席率から予防効果が認められたとする
     報告もあります。
     これは、清浄化による防御機能の維持と考えられます。
     風邪などにかかってなかったら水うがいでも効果があるとも言われています

     反証2
     新型コロナウイルス(SARS-CoV2)の多くはまず口の中に入ります
     そして、次に小唾液腺に感染し、そこの細胞で増殖します
     そこで口腔細菌が出す毒素が、これを手助けしているという報告があります。
     うがいは、この口腔細菌の悪影響を遮る効果があります。
     すなわち、うがいはウイルスそのものに作用するのと、感染の幇助をしている口腔細菌を押さえる作用があります。
     よって、うがいはやはりウイルス感染の防御に寄与していると考えられます。

     参照:「COVID-19と唾液腺 : 重症感染を防ぐための新たな口腔ケア」  大阪大学 阪井丘芳 TBSニュース

     参照:「新型コロナウイルス SARS-CoV-2 と口腔」  槻木恵一 神奈川歯学 55-2,141 〜 148,2020



新型コロナ感染症の予防と口腔ケア
1:自分自身の口腔ケア及び予防

(1)感染防御
マスクの装着を行い、飛沫感染を防ぎます。

石鹸による手洗い、、ドアノブやスイッチやハンドルなどの人の触る所の消毒などを行って接触感染を防ぎます。
洗っていない手で、目や鼻や口などの粘膜に触らないようにする必要があります。

手指の消毒は、消毒用エタノールイソプロパノール推奨されています。

器具の消毒には次亜塩素酸ナトリウムが推奨されています。


(2)うがいと口腔ケア
新型コロナウイルス(SARS-CoV2)の多くはまず口の中に入ります
そして、次に小唾液腺に感染し、そこの細胞で増殖します
そこで口腔細菌が出す毒素がこれを手助けしているという報告があります。
咽頭部の感染にも口腔細菌の幇助が考えられています。

うがいは、この口腔細菌の悪影響を遮る効果があります。
当然歯磨き等の口腔ケアも口腔細菌の悪影響を押さえる効果があるわけです。

すなわち、うがいなどの口腔ケアはウイルスそのものに作用するのと、感染の幇助をしている口腔細菌を押さえる作用があります。

よって、口腔ケアはやはりウイルス感染の防御に寄与していると考えられます。


2:他者への口腔ケア
入院中の患者さんや、寝たきりの要介護者に口腔ケアをする事は重要です。
その場合、自分の感染防護を間然してからケアを行う事が必要となります。

        



新型コロナ感染症と感染予防機材
感染防護器材
  マスク  手袋  フェイスシールド  防護衣  消毒用薬剤  

  オゾン発生器  次亜塩素酸水生成器  加湿器



検査キット
  PCR検査  抗原検査  抗体検査



検査機器
  体温計  CO2測定器  パルスオキシメーター



参考資料

   『病気がみえる vol.6 免疫・膠原病・感染症』  医療情報科学研究所  



   『新型コロナウイルス「オミクロン株」完全対策BOOK』



   『イベルメクチン 新型コロナ治療の救世主になり得るのか』  (河出新書)



   『専門医が教える 新型コロナ・感染症の本当の話』  (幻冬舎新書)



   『永寿総合病院看護部が書いた 新型コロナウイルス感染症アウトブレイクの記録』



「新型コロナウイルス SARS-CoV-2 と口腔」  槻木恵一 神奈川歯学 55-2,141 〜 148,2020


「新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)」  厚労省 

「新型コロナウイルス感染症の感染症法の運用の見直しについて」 厚労省 2020/9/24

「新型コロナウイルス感染症 各種統計」 Googleニュース

「新型コロナウイルス検査試薬と東京都における検査対応」  貞升 健志 東京都 2020年

「新型コロナウイルス感染症 COVID-19 診療の手引き 2021 第5版」  厚生労働省 2021/5/17 

「COVID-19に対する薬物治療の考え方 第4版」 一般社団法人 日本感染症学  2020/5/28  

「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」  厚生労働省・経済産業省・消費者庁特設ページ






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