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風疹(三日はしか)ついて

     

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風疹 (Rubella)
1:風疹(三日はしか)とは
 (1)風疹ウイルス    
     ヒトのみを自然宿主とする直径50〜70nmの一本鎖RNAウイルスです。    
     伝染力は、水痘(水疱瘡)、麻疹(はしか)、ノロウイルスよりは弱いが、インフルエンザより強いとされています。
     TORCH病原体1つです。    

      


     TORCH症候群とは
       母体の症状は軽微であるのに対して、妊娠中の感染によって胎児に奇形、または重篤な母子感染症を引き
       起こす恐れのある疾患の総称です。  
       以下の英語の頭文字をとって名付けられています。   

       ToxoplasmosisToxoplasma gondii による先天性トキソプラズマ症.  
       Other:その他--B型肝炎ウイルス、パルボウイルスB19、コクサッキーウイルス、EBウイルス、
                  水痘・帯状疱疹ウイルス、梅毒など   
       Rubella:風疹ウイルスによる先天性風疹症候群   
       Cytomegalovirus:サイトメガロウイルスによる先天性サイトメガロウイルス感染症   
       Herpes simplex virus:単純ヘルペスウイルスによる先天性ヘルペスウイルス感染症  

       TORは経胎盤感染を、ORC感音性難聴を起こします。  
       感染者が見逃される事も多く、スクリーニングの体制が不充分であると指摘されています。


 (2)風疹について
     風疹ウイルスによる急性熱性発疹性感染症です
     一般に日本では、三日はしか、三日ばしかとしても知られています。


2:感染様式
 (1)感染経路
     感染者の咽頭から排出される体液に含まれ、飛沫感染または直接接触感染します。
     インフルエンザウイルスよりも小さく、手洗い・うがい・マスクの着用では、感染防止が出来ません。
     
 (2)潜伏期
     2 - 3週間程度です。
     伝染期間は発疹の発症前1週間から発疹出現後4日間です。


3:疫学
 (1)風疹の流行
     日本では、かつて5 - 9年ごと(1976、1982、1987、1992年)に大流行がありました。
     男女幼児が定期接種の対象となって以降は、大きな流行は発生していなかった。

     2012年-2013年、2018年〜にかけて、成人男性のワクチン未接種者を中心に、風疹の大流行が発生しました。

      


 (3)再発・再燃
     罹患歴があると再罹患しないとされます。
     しかし、経年により抗体価が低下している場合や、がん治療などで免疫力が低下した場合など、
     まれに再発することがあります。


4:症状
 (1)風疹の症状と経過

      
      『病気がみえる vol.6 免疫・膠原病・感染症』 から引用


  @潜伏期間  
     2 - 3週間程度です。

  A初期症状:発疹の1 - 5日前
     微熱、頭痛、倦怠感、鼻水、せき、痛みのないバラ色の口蓋斑点が出現します。

     

     典型的な3症状である、紅色斑丘疹、発熱、頸部リンパ節腫脹が現れない場合には、
     溶血性レンサ球菌による発疹、
     伝染性紅斑などとの鑑別を行う必要があります。
     成人発症者では、90%以上にリンパ節腫脹が起こります。


  B中期症状  
     顔、耳後部から、赤く癒合性のない点状の紅斑(発疹)が全身に広がります。  
     多くは3 - 5日程度で消えます(20 - 25%は発疹が出現しません)。  

       

     小児発症者の約25 - 50%に、38 - 39℃前後の発熱が3日間程度続きます。  
     成人発症者では、5日間程度の発熱と耳介後部、後頭部、頚部のリンパ節の腫れがあります。


  C後期症状  
     発疹出現5 - 10日前から数週間にわたりみられます。  
     眼球結膜の軽度充血や、肝機能障害が見られる場合があります。  
     小児では咽頭炎のみがみられたり、無症候性感染(不顕感染)であることも多く見られます。  


5:風疹の合併症
 (1)先天性風疹症候群(CRS:Congenital rubella syndrome)
  @先天性風疹症候群
     妊娠中の女性が風疹に罹患した時に、胎内にいる胎児に感染する疾患の一群を指します。
     風疹ウイルスが胎児の細胞分裂を抑制し破壊する作用を有するために生じると考えられています。

      


  A発症時期
     主に妊娠3ヶ月頃までの妊娠初期の女性の罹患が多い。
     発症する確率は妊娠1ヶ月で50%以上、2ヶ月で35%、3ヶ月で18%、4ヶ月で8%程度とされています。

     妊娠20週以降の感染で発生することはまれとされています。
     妊娠21週以降の感染であればCRSのリスクは低く、通常は妊娠が継続されます。

  B症状
     心疾患難聴、白内障網膜症、肝脾腫、血小板の減少、糖尿病、発育や精神発達の遅れ、小眼球症など。

     中でも心奇形難聴、白内障の3つが三大症状と見なされている。
     なお、難聴については妊娠6ヶ月頃までの感染でも発症します。

        


6:検査・診断
 (1)検査
  @血液検査
     白血球減少、血小板減少が認められます。

  A抗体検査
     血液中に風疹IgM抗体が検出されます。


 (2)診断
     臨床診断は不正確なこともあります。
     発疹出現から28日以内の血液中風疹IgM特異抗体検出が確定診断になります。
     ペア血清を用いて、CF、HI試験、ELISA法などで4倍以上の上昇で診断します。
     PCR法、ウイルス培養は一般的ではありません。

     急性期の咽頭ぬぐい液、血液、尿からRT-PCR法、リアルタイムRT-PCR法などの方法で病原体の遺伝子を検出
     します。
     早期診断に有用ですが、実施可能な機関は多くありません。


 (3)鑑別診断
     麻疹(はしか)、デング熱突発性発疹、コクサッキーウイルス感染、エコーウイルス感染、アデノウイルス感染
     伝染性紅斑猩紅熱等の鑑別が必要です。


7:治療
 (1)対症療法
     特異的な治療法はなく、症状を緩和させる対症療法のみです。
     発熱・関節炎に対しては、解熱鎮痛剤が用いられます。


8:予防
 (1)ワクチン接種
     風疹は、ワクチンで予防可能な感染症で、予防接種が唯一の予防法です。
     幼小児期に予防接種が行われていますが、MMRワクチンに含まれた形で2回接種を行われています。

     MMRワクチン=麻疹measles)、流行性耳下腺炎(おたふく風邪、mumps)、風疹rubella)の三種の
               弱毒化ウイルスが混合された3価生ワクチン。


 (2)日本ワクチン接種状況
     MR(麻疹・風疹)混合ワクチンの定期接種は生涯で2回のワクチン接種が必要です。
     年代によってワクチン接種が為された年代とそうでない年代があります。
     
     1962以前:風しんワクチンの接種歴がない年代.   
     1962-1979:女性のみ風しんワクチンの集団接種が施行された年代.  
     1979年41日以前に生まれた男性にはワクチン接種が行われていない人が多い.   
     2000:定期接種として2回接種を受けている年代.

 (3)ワクチン接種の禁忌
     風疹の予防接種は生ワクチンなので、妊娠中に麻疹・風疹混合ワクチン新三種混合ワクチンの予防接種を
     受けることは先天性風疹症候群の原因となるため禁忌となっています。
     女性はワクチン接種後2ヶ月間は避妊することが望ましい。



風疹と口腔ケア
痛みのないバラ色の口蓋斑点
初期症状(発疹出現の1 - 5日前)として、微熱、頭痛、倦怠感、鼻水、せき、痛みのないバラ色の口蓋斑点が出現します。
しかし、特別な処置を必要ではありません。
やがて自然消退します。

  


参考資料

  『病気がみえる vol.6 免疫・膠原病・感染症』


  ママ&パパにつたえたい 子どもの病気ホームケアガイド 第5版


  ワクチンのすべて


  聴こえない世界に生きて―沖縄風疹児55年間の軌跡



 『生命科学のためのウイルス学―感染と宿主応答のしくみ,医療への応用


 『医科ウイルス学


 『新しいウイルス入門 (ブルーバックス)






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