オーラルフレイルと口腔機能低下症の対応・治療・管理法 |
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T:検査と評価 |
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1:口腔機能低下症とオーラルフレイルについて
オーラルフレイルはフレイル概念図の第2段階、口腔機能低下症は第3段階に位置するとされています。
第1段階 社会性・心のフレイル
第2段階 栄養面ののフレイル (オーラルフレイル)
第3段階 身体面のフレイル (口腔機能低下症)
第4段階 重度のフレイル期 (口腔機能障害---摂食・嚥下障害、構音障害など)
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2:口腔機能低下症の検査と評価
(1)オーラルフレイル、口腔機能低下症の検査
以下に示す7項目の検査を行い、
その内の、3つ以上の項目が基準値以下であれば「口腔機能低下症」と診断します。
その内の、1つ以上の項目が基準値以下であれば「オーラルフレイル」を疑います。
1:口腔衛生状態不良の検査
2:口腔乾燥の検査
3:咬合力低下の検査
4:舌口唇運動機能低下の検査
5:低舌圧の検査
6:咀嚼機能低下の検査
7:嚥下機能低下の検査
(2)オーラルフレイル、口腔機能低下症検査で基準値以下の項目があった場合の対応
基準値以下の項目に対する対応を行います。
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U:対応方法 |
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1:口腔衛生状態不良の場合
(1)検査方法
視診により Tongue Coating Index (TCI)を用いて,舌苔の付着程度を評価します。
舌表面を 9 分割し,それぞれのエリアに対して舌苔の付着程度を 3 段階(スコア :0,1 , 2)で評価します。
合計スコ アを算出します。
TCI が 50%以上(合計スコアが 9 点以上)ならば口腔衛生状態不良となります。

(2)対応方法
まず最初に舌苔とは何かを知る必要があります。
@舌苔とは
角化が亢進して伸びた糸状乳頭に、食物残渣や細菌およびその代謝産物が付着し舌苔が形成されます。
舌苔は全身状態と関連していて、舌粘膜を保護するためのある種の防御反応とも考えられています。
よって、舌苔が必ず悪いわけではありません。
異常に舌苔が付着している場合には問題となりますが、先ずその原因を明らかにすることが重要です。
また、舌苔に類似した舌の病気も多くあります。
必ずそれが舌苔なのか否か、舌苔ならばその増生した原因は何かを確かめることが必要です。
安易に舌ブラシでこするのは禁忌です。
それが前癌病変の白板症の事もあります。
白板症を擦って刺激すれば、癌化の促進してしまう危険性もあります。
A舌苔への対応
詳細は、「舌苔」へ
2:口腔乾燥症への対応
@口腔乾燥症とは
唾液の分泌低下や過剰な口腔粘膜水分の蒸散によって口腔内が過度に乾燥する状態を指します。
A口腔乾燥症への対応
詳細は、「口腔乾燥症」へ
3:咬合力低下の対応
(1)咬合力について
咬合力とは 物体を噛み締める顎の力を言います。
これには測定器を可能な限り強く噛む静的咬合力と、実際に食物を摂食して咀嚼する際の動的咬合力があります。
ヒトを対象にした調査では、一般に動的咬合力よりも静的咬合力の方が大きく、
また口の奥側の歯ほど強くなることが分っています。
@咬合力の比較 (Wikipedia 咬合力 より引用)
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ホモ・サピエンス |
84.2Kg |
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アウストラロピテクス |
171.5Kg |
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チンパンジ− |
196.7Kg |
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オランウータン |
304.0Kg |
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ゴリラ |
415.0Kg |
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ナイルワニ |
2268.0Kg |
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ティラノサウルス |
6000.0Kg |
A咬合力を左右する因子
咬合力は歯・骨という構造上の関係だけではなく、顎のまわりの筋肉によって決定されます。
よって、咬合力が低下しているのは、歯、顎骨、咀嚼筋に問題があると考えられます。
(2)咬合力低下への対応
歯----むし歯など歯の治療、歯の欠損や入れ歯がある人にはその治療が必要となります。
骨----歯周病による歯を支える骨の治療が必要です。
筋肉--食物の堅さなど考えた食生活の改善が必要です。
4:舌口唇運動機能低下の検査
5:低舌圧への対応
6:咀嚼機能低下への対応
7:嚥下機能低下の対応
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トレーニング用具 |
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舌圧トレーニング用具
「ペコぱんだR」 JMS社製

口唇トレーニング用具
「リットレメーター」 日本歯科商社
「とじろーくん M メディカル」
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参考資料 |
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「高齢期における口腔機能低下 ─学会見解論文 2016 年度版─」 老年歯学会雑誌 第31巻 第2号 P81-P99 2016
『診療室ではじめよう! 口腔機能管理と栄養指導』 上田貴之 , 大久保真衣他著 永末書店 2020-5
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