血管腫 (Haemangioma) |
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1:血管腫とは
血管腫は、血管が異常増殖してできる腫瘍で、皮膚の中や体内の他の部分で発生します。
何らかの原因で血管が異常拡張したり、異常増殖することによって起こる血管の異常である。
皮膚表面付近にできた場合は赤色または紫色のかたまりに見え、母斑の1腫とされる場合もあります。
2:分類
腫瘍性増殖を伴う血管腫(hemangioma)と、伴わない血管奇形(Vascular malformation)に大別されます。
単純性血管腫(ポートワイン母斑)→毛細血管奇形
海綿状血管腫→静脈奇形
苺状血管腫(乳児血管腫)
先天性血管腫(NICH、RICH)
カサバッハ・メリット(Kasabach-Meritt)症候群
静脈湖(老人性血管腫の一種)
正中部母斑、Unna母斑(単純性血管腫の一種)
サーモンパッチ(単純性血管腫の一種)
老人性血管腫(さくらんぼ色血管腫)
補足:単純性血管腫、海綿状血管腫などはISSVA分類により、腫瘍ではなく血管奇形とされました。
つまり、腫瘍ではないという事になっています。
3:原因
明らかな原因は不明です。
先天的な場合と、後天的な場合があります。
4:症状
一般的に自覚症状はありませんが、痛みを伴うこともあります。
血管腫は、出血の危険性を考えておかなければなりません。
非圧縮性で、押さえると一時的に消退します。
(1)乳児血管腫(イチゴ状血管腫)
典型的には出産直後にはみられなかったのが生後間もなく赤い斑点ができ、盛り上がり始め数ヶ月で
大きくなり、多くはイチゴのように赤く盛り上がった形状です。
1才ころピークに達し、その後はゆっくり色が落ちていき、多くの場合小学校低学年くらいまでの間に赤みが
引いてきます。

(2)単純性血管腫 (毛細血管奇形、ポートワイン母斑)
うまれた時からある赤い平坦な「あざ」です。
生まれつきの毛細血管の異常なので、厳密には血管腫ではなく、奇形に分類されます。
毛細血管は動脈と静脈の間にあり、皮膚に広がる細くて薄い管ですが、それらが異常に増えて集まった状態です。
自然に消えることはなく、ゆっくり色が濃くなったり大きくなったりすることがあります。
大人になると盛り上がることがあります。

(3)くも状血管腫
直径は通常、約0.5センチメートル未満です。
この血管腫は無害で何の症状も引き起こしませんが、見た目が気になることがあります。
妊娠中、または経口避妊薬の使用中にできたくも状血管腫は、通常は出産後または経口避妊薬の使用中止後
6〜9カ月で自然に消失します。
通常、くも状血管腫の治療は不要です。
美容上の理由で治療が望ましい場合は、レーザー療法か電気メスで中心の血管を破壊します。

(4)老人性血管腫
チェリースポット」とも呼ばれ、数mmの大きさの平坦もしくはドーム状の赤いできものです。
毛細血管の増殖によって出来る良性の皮膚腫瘍です。
無症状ですが、消失することはなく、加齢に伴い、増えていきます。

(3)海綿状血管腫
海綿状血管腫は字面から腫瘍のような印象を受けますが血管奇形の一種です。
小さなものは症状のないものも多く、経過観察とされることの多い疾患です。
しかし血管の奇形ですので出血を繰り返すこともあり、大きくなることで周辺の脳を圧迫しさまざまな神経症状を
出すことがあります。
またてんかんの原因となることもあり、治療が必要となることもあります。
(4)動静脈奇形 (AVM:Aorta-Venus Malfomation)
動静脈奇形は、動脈→毛細血管→静脈という血管の構造をとらず、動脈から静脈に抜けてしまい、血流の早い
病変が形成されたものです。
動脈の血圧が、静脈にかかるので、多くの病変は進行性です。
皮膚の赤あざや拍動性の瘤からはじまり、大きくなると出血や痛みを伴うことがあり、血流が多くなると心臓に
負担がかかってくることがあります。
5:治療
切除(レーザー、電気メスなど) 梱包療法(結紮) 硬化療法(エタノール、ポリドカノール、オルダミンなど)
治療が望ましい場合は、レーザー療法か電気メスで周囲または中心の血管を破壊します。
梱包療法では、移入する周囲の血管を結紮します。
硬化療法は手術の傷跡は作りませんが、何度か行わなくてはならなかったり薬の副作用を生じることがあります。
補足:レーザー治療
レーザーとは、ある特定の色(波長)の強力な光線を作り出す装置です。
レーザー光は人体の組織に吸収されなければ影響を生じることはありません。
組織がレーザー光を吸収するかどうかは、組織の種類とレーザー光の色によって決まります。
例えば、血管は黄色、青色、緑色の光を最もよく吸収しますので、血管の腫瘍を対象とする治療では、
これらの色(波長)のレーザーが選択されます。
病態に応じて別の色も使われます。
レーザー光は、連続照射する場合と、ごく短時間ずつパルス照射する場合があります。
パルス照射の照射時間の長さにより、レーザー光の効果が決まります。
レーザー治療は、光線力学療法という、ある特定の光を吸収する化学物質を患者の皮膚表面に塗ったり
静脈内注射する手法と併用されることがあります。
この化学物質がレーザー光を受けると、そのエネルギーを吸収して腫瘍の破壊を促進します。
血管腫などの血管の増殖物(腫瘍)やポートワイン血管腫などの奇形に対してもレーザー療法が行われることが
あります。
7:血管腫を呈する症候群
スタージ・ウエーバー症候群
カサバッハ・メリット(Kasabach-Merritt) 症候群
症例
症例1:68歳女性

症例2:74歳男性

症例:62歳男性

症例:64歳女性

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