歯性感染症について (Specific Inframation) |
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1:歯性感染症とは
歯から起因した感染症のことを歯性感染症といいます。
これらには、う蝕歯から歯髄死を誘発 した根尖性歯周炎、歯冠周囲炎、歯周炎などの辺縁性感染に由来するものが
多く認められます。
起炎菌は口腔常在菌であり、好気性菌および嫌気性菌の複数菌感染症です。
歯性感染症の多くは歯槽部に炎症が限局していますが、蜂巣炎、縦隔炎、壊死性筋膜炎など、極めて重篤な感染症に
発展することもあります。
原因歯牙の適切な処置を怠ると、炎症症状軽快の遅延化、炎症症状の再燃化および、慢性炎症(内歯瘻、外歯瘻および
骨髄炎)への移行が発症します。

これを防ぐためには、原因歯牙の適切な処置が必要となります。
2:歯性感染症の拡大波及
むし歯だと安易に考えていると、場合に寄っては重症化して入院を余儀なくされることもあります。
歯性感染症が重症化すると以下の様に、4群に分類されます。
1群:歯周組織炎
歯周組織炎は、歯牙の感染歯髄から起こる根尖性歯周炎と、歯周病に起因する辺縁性歯周炎に分類されます。
これらがさらに進むと歯肉膿瘍、歯槽膿瘍を形成することがあります。
2群:歯冠周囲炎
歯冠周囲炎は、主に埋伏智歯が原因となる智歯周囲炎を指します。
智歯の歯冠周囲にポケッ トを形成 し、歯冠周囲歯肉の発赤、腫脹、排膿が認められます。
歯冠周囲に炎症が限局 していることが多く、膿瘍が形成されることは多くありません。
炎症が周囲に波及するとともに開口障害、嚥下痛が生じる様になります。
3群:顎 炎
1群の歯周組織炎、2群の歯冠周囲炎から波及する炎症です。
顎骨内の炎症が皮質骨を穿孔し骨膜に沿って拡大します。
骨膜下に膿瘍を形成することが多いといわれています。
骨髄炎
顎炎と臨床症状が異なりますが、3群に分類されます。
下顎骨に多く発症します。
症状
1)深在性の激痛
2) オ トガイ神経支配領域の知覚異常、麻痺(Vincent 症候)
3)患側歯牙の打診痛(弓倉の症状) など。
X線所見
特徴的な所見は、散在性骨破壊,、骨髄腔の拡大など虫食い状の吸収です。
しかし、初 期ではX線的変化を伴いません。
テクネシウムシンチグラム、MRI検査が有用です。
4群:顎 骨周囲の蜂巣炎(蜂窩織炎)
2群および3群から波及します。
下顎歯牙の感染が舌下隙へ波及 し、顎下隙、オ トガイ下隙に炎症が及びます。
さらには翼突下顎隙、側咽頭、咽頭隙、縦隔への炎症の波及、翼突下顎隙から側頭隙への炎症の波及がみられます。

3:歯性感染症が悪化しやすい人
健康な人が重篤な感染症にかかるには、色々のことが重なり合わないとその様にはなりません。
体調が悪くて、身体が弱っているか、病原菌の方が強い場合です。
以下の場合には要注意と考えてください。
(1)感染症になり易い基礎疾患
糖尿病、免疫不全症、肝硬変、腎不全、低栄養、悪性腫瘍、無ガンマグロブリン血症、など。
(2)感染症になり易い状態
重症外傷、広範囲熱傷患者、
ステロイド・抗癌剤・免疫抑制剤の投与を受けている人、
放射線治療を受けた人、など
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参考資料 |
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「歯性感染症」 金子明寛 耳鼻咽喉科展望 47:1;60〜65,2004
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