ミクリッツ病 (Mikulicz disease) |
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1:ミクリッツ病とは
IgG4関連疾患と呼ばれる疾患のなかで、特に涙腺や唾液腺に病変がみられるものを指します。
ミクリッツ病では、涙や唾液の分泌が低下するといった症状が現れます。
同じように涙腺や唾液腺に病変を認める疾患として、シェーグレン症候群と呼ばれるものが知られています。
ミクリッツ病とシェーグレン症候群の病変部位が類似することから、歴史的にミクリッツ病はシェーグレン症候群の一種
であると考えられた時期もあります。
しかし、IgG4関連疾患の概念が確立して以降、両者は別の疾患であると認知されるようになってきています。

Johann von Mikulicz―Radecki が報告したミクリッツ病症例
A.顔貌.両側上眼瞼,耳下部,顎下部の腫脹を認める.
B.剖検で摘出された唾液腺標本.導管周囲に著明な炎症細胞浸潤を認める.
「 Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod」 2005 ;100
: 334―339 より一部改変)
2:原因
ミクリッツ病ではIgG4の値が著明に増加しています。
同じくIgG4が増加する病気としてIgG4関連疾患が知られていますが、ミクリッツ病はIgG4関連疾患に含まれるひとつの
疾患概念です。
3:症状
唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)、涙腺の無痛性、対称性の腫脹を来す。
乾燥症状を呈さないのが、シェーグレン症候群との鑑別になります。
両側性の腫脹が、慢性硬化性耳下腺炎との鑑別になります。
4:診断
IgG4関連臓器別診断基準
@涙腺・唾液腺----腫大
A血中IgG4------- >135mg/dL
B組織生検------- IgG4/IgG陽性細胞比 ≧50%
@+ (Aand/or B) でミクリッツ病と診断します。
5:治療
第一選択薬としてステロイド(プレドニンR)が使用されることになります。
プレドニゾロンに対する初期反応は良好なことが多く、症状の緩和を図り4週間同量のプレドニゾロンを持続します。
その後、徐々にプレドニゾロンの量を減量しながら可能であれば休薬に向けた減量を行うことになります。

経過としては、完全にプレドニゾロンを中止できることは難しく、ほとんどの方で一定量のプレドニゾロンを内服継続すること
になります。
長期間のステロイド使用には副作用も懸念されることから、可能な限りステロイドからの離脱を図るような治療も検討
されています。
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