視覚障がい |
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1:視覚について
(1)視覚とは
眼球から入った色や形明るさの刺激を視神経から後頭葉に伝達します。
後頭葉での視性刺激の解析情報をもとに脳でつくりだされる感覚です。

(2)視覚に関与する視路と解析系
@伝達系
眼球・視神経・脳の一部は視路と呼ばれる視性刺激の伝達系です。
A解析系
後頭葉の視覚感覚野以降は情報を取り出す解析系となります。
(3)視覚の機能
@視力:形の識別能力です。
. 視力障害---近視、遠視などで視力の障害が発生します。
A視野:みえる範囲の事です。
視野障害---全体的にみえる範囲が狭まる視野狭窄と 、視野の半分が欠ける半盲などがあります。
B色覚:色のコントラスの判別.
色覚障害---色盲と言われ、色の識別が出来ない状態です。
C光覚:明るさや暗さへの対応を示します。
光覚障害---暗いところでみえにくい夜盲と、明るいところでみえにくい昼盲があります。
2:視覚障害の種類
(1)盲(blindness)
視覚をもたない・・・まったくみえないか明暗がわかる状態を指します。
矯正視力=矯正視力が0.04未満の人です。


(2)弱視(low vision)
残存視覚がある---何らかの保有視力はあるが、視覚障害のため生活に不便を感じる状態です。
矯正視力=0.02以上0.3未満。
@医学的弱視
正常な視覚の発達が停止あるいは遅延している状態です。
早期に適切な対応をすれば視機能の向上が望めます。
A社会的弱視
視覚障害はあるが、視覚による社会生活が可能である状態です。
適切な補助具などを取り入れることで視覚障害の負担を減らすことができる.

ロービジョン
両眼の矯正視力0.05以上0.3未満の社会的弱視です。
ロービジョンケアあるいはロービジョンリハビリテーション
患者の日常生活動作を考え、必要な視覚補助具を選定・訓練する事です。

(3)視野障害 (=視野狭窄)
正常の視野

@求心性視野狭窄---全体的に狭くなる

A中心暗点---真ん中が見えない

B半盲---視野の片側が見えない

(4)色覚障害--身体障害者とはなりません
いわゆる色盲とされる人です。
ある色とある色の組み合わせが判別できない状態です。

3:原因
(1)先天的な原因および周産期の原因
@先天性
奇形、色素性網膜変性症など。
A周産期性
未熟児網膜症、外傷など。
B先天性や周産期性の視覚障害の特徴
視覚の発達完成前に現れるため、解析系の能力が未発達です。
目から入るべき刺激がないため、知的機能や運動機能の遅れを伴いやすいとされています。
(2)後天的な原因
1位=緑内障
ついで糖尿病網膜症、網膜色素変性症、黄斑変性症、高度近視、白内障,脳卒中の順です。
トラコーマによる感染症は近年減少です。
ほかにも腫瘍、糖尿病外傷、ベーチェット(Behcet's)病などによって生じます。
@緑内障
何らかの原因で視野が欠けていく進行性の病気です。
日本では200万人以上の罹患者がいると推定されます。
中途失明原因の上位にある疾患です。
眼圧の上昇が原因と考えられていました。
しかし、眼圧が正常でも緑内障は起こることから、視神経の強度が疑われています。

A糖尿病性網膜症
糖尿病の合併症の一つです。
網膜の血管が障害を負うことで発症します。
自覚症状のないまま進行し,失明に至ることがあります。
かつては視覚障害の原因のトップであった.

B網膜色素変性症
網膜に異常をきたす遺伝性の進行性病変です。
明るさを感じとる細胞が障害を負う疾患です。
暗いところで物がみえにくく(夜盲)なり、視野が狭くなる難病の1つです。

C白内障
水晶体の白濁により、物がかすんだり、ぼやけたりする視覚障害です。
加齢によって起こることが多いが、先天性のもの、外傷眼の炎症などによるものもあります。
進行した白内障では、濁った水晶体を手術で取り除き人工レンズを埋め込む方法が行われます。

補足:ベーチェット病
4大主症状を特徴とする炎症性疾患です。
4大主症状
口腔粘膜のアフタ性潰瘍(口内炎)
外陰部の潰瘍
眼症状=ぶどう膜炎
皮膚症状=結節性紅斑など
副症状
関節炎、副睾丸炎、血管病変、消化器病変、中枢神経病変
原因
自然免疫系の異常、自己免疫機序の双方が病態に関与すると想定されています。
ベーチェット病の遺伝的素因を持った方に、これらの微生物が侵入します。
異常な免疫反応が炎症を引き起こします。
結果としてベーチェット病の発症に至るという考えが有力です。
4:疫学
(1)視覚障がい
@視覚障がい
身体障害者福祉法では,視力と視野に障害があるものを視覚障害と定めています。
A視覚障がい者
身体障害者手帳所持者:315,500人
身体障害者中の視覚障害者の割合:8.2%
B視覚障がい者の障害程度
1〜6級で認定されれます。
そのうち両眼の視力の和が0.01以下である1級保持者は約10万人です。
5:臨床分類
6:臨床症状
(1)ブラインデイズム(blindism)
先天性視覚障害児によく見られます。
視覚障害のある小児で起こる行動です。
指で眼球や眼の周囲を圧迫する事を指眼現象と言います。
身体のリズミカルな揺さぶりや旋回をするマンネリズムがみられます。
(2)ブラインディズムが起こる原因
外界を積極的に探索する機会が得られにくい状況の中で同じような行動を継続することにより、自分自身に刺激
を与えているのではないかということが考えられています。
7:視覚障がい者の支援機器や設備
(1)情報入手の支援
@聴覚情報を活用した方法
ラジオ、テレビの音声から聴覚を利用して情報の入手を行います。
文字を音声に変換するパソコンの読み上げ機能で情報の入手を行います。
A残存視力を活用した方法
拡大文字や矯正眼鏡の使用によって情報の入手を行います。
タブレット端末やスマートフォンを利用した視覚障害のある人向けの各種アプリによって情報の入手を行います。
B特異的な情報提供
触覚を用いた触図や点字などがあります。
点字文書作成には、点字変換ソフトやラベルライターに点字刻印機能を備えたものを使用します。
日本の点字修得者は視覚障害のある人の約1割で、中途障害のある人では使用率は減少します。
6点式点字
(2)移動の支援
@白杖
視覚障害のある人自身が歩行中の障害物を探知するアンテナの機能を持った杖です。
視覚障害であることを相手に知らせるシンボルでもあります。
白杖を垂直に頭上50cmに掲げるポーズは、白杖SOSシグナルでサポートを求める意思表示手段です。
白杖SOSシグナル
A誘導の手法
誘導は患者の斜め前方(白杖の逆側)に立って行います。
視覚障害者に、自分の肘や肩に手をかけてもらい,半歩前を歩く様にします。
狭いところや段差のあるところなどは、声かけを行います。
白杖は,診療いす動作時に破損しないよう,安全な場所で預かるようにします。

B補助犬(盲導犬など)
身体障害者補助犬法に基づきます。
人が立ち入ることのできる場所では、受け入れるよう義務づけられています。
病院や歯科診療所などのすべての医療機関も同様です。
待合室や診療室などの一般清潔域であれば受け入れは可能と思われます。
ただし、準・高度清潔域など補助犬を受け入れられない区域は、その旨をていねいに説明する必要があります。

C点字ブロック(視覚障害者誘導ブロック)
道路や駅ホームなどで,進む方向や危険を知らせるものです。
点状ブロック、線状ブロック、ホーム縁端警告ブロックの3種類があります。
雨天時に滑りやすいなど、歩行障害のある人には注意が必要です。

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視覚障がいを有する人の口腔機能と口腔ケア |
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視覚障がいがある人の口腔の特徴
(1)一般的な特徴
視覚障害のある人に特異的な口腔の特徴はありません。
しかし口腔内のプラーク付着状況の確認や、ブラッシングによる十分な歯面清掃が困難であるといえます。
そのために齪蝕や歯周疾患が多発する傾向があります。
特に知的能力障害を合併した場合は重篤な歯科疾患を起こしやすくなります。
そのほかに,移動時の転倒や打撲が原因で、口腔・顔面部の外傷や歯の損傷を受けやすいとも言えます。
(2)視覚障がいに口腔症状が併発する疾患
@Behcet病
口腔内のアフタ性潰瘍
A先天性風疹症候群、CHARGE症候群
唇顎口蓋裂
(3)特徴的な口腔内所見を示す疾患
脳性麻輝やDown症候群では、斜視、眼振などの視覚障害を認めます。
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視覚障がいを支援する器材 |
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拡大鏡
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参考資料 |
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『1日5分の眼の運動 [日めくり]子どもの「ビジョントレーニング」』
『コミックQ&A 色弱の子どもがわかる本』
『小・中学校における視力の弱い子どもの学習支援―通常の学級を担当される先生方のために 』
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