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1:ジフテリア感染症とは
(1)ジフテリア菌 (Corynebacterium diphtheriae)
グラム陽性桿菌で、放線菌に分類される細菌の一属です。
ヒトの咽頭部(まれに創傷部)に感染し、そこで産生されたジフテリア毒素が血行性に全身移行します。
その結果、心筋炎や神経麻痺などの症状を起こします。
G(+)桿菌
(2)ジフテリア感染症
飛沫感染により生じる上気道粘膜疾患です。
粘膜に生じる偽膜が特徴で、気管閉塞に至る可能性もあります
ワクチンの普及で、わが国での患者はほぼ居ません。
病原因子はジフテリア毒素で、偽膜形成や心筋炎、多発神経炎の原因となります。
二類感染症に指定されています。
2:感染様式
(1)感染経路
患者や無症候性保菌者の咳など飛沫を介して感染します。
菌が侵入した局所の偽膜性病変と菌が産生するジフテリア毒素による病変とに分類されます。
(2)潜伏期
2〜5日程度です。
3:疫学
(1)発症数
予防接種のおかげで、ジフテリアの発生は1999年(平成11年)以降有りません。
かつては年間8万人以上の患者が発生し、そのうち10%程度が亡くなっていた重要な病気です。
(2)好発
@好発年齢
2〜6歳の幼児が多く発症しました。
ジフテリアにかかった場合、一般に10%程度の方が亡くなってしまうといわれています。
特に5歳以下や40歳以上の年齢の場合は重くなりやすく、最大で20%の方が亡くなってしまうといわれています。
A流行地域
アフリカ、南アメリカ、アジア、南太平洋諸国、中東諸国、東欧、ハイチ、ドミニカ共和国など多くの国で発生が
みられます。
アウトブレイクとなることは稀ですが、未だ世界各地で起こっています。
先進国でも例外ではなく、ドイツやカナダなどのワクチン未接種者でも起こっています。
4:症状
(1)主症状
@発熱、咽頭痛、頸部リンパ節腫脹
A咽頭・扁桃の偽膜
B偽膜が気道へ移動すると、閉塞され、窒息
C毒素が全身に作用し、心筋炎や多発神経炎

5:診断
(1)確定診断
確定診断には、患者の喉の病変部位から原因菌を分離します。
治療開始の遅れは回復の遅れや重篤な状態への移行につながるため、臨床的に疑いがある場合、確定診断を
待たず早期に治療を開始する必要があります。
6:治療
(1)ジフテリア抗毒素
ジフテリア毒素に対するウマ由来の血清です。
ジフテリア菌の毒素を中和するために、筋肉や静脈に注射します。
ジフテリア抗毒素はウマ由来であるため,投与前に過敏症を除外するための皮膚(または結膜)テストを行います。
抗毒素の用量は筋注または静注で2万から10万単位と幅があり、以下の因子によって決まります。
症状のある部位および重症度
疾患の持続
合併症

(2)抗菌剤
ペニシリンまたはマクロライド(エリスロマイシン)
7:予防
(1)予防接種
三種混合ワクチン(DPT)の普及を推進しており、わが国でも1968年にはじまり、1981年より現行ワクチンによる
定期接種となっています。
定期接種より10年以上経過している場合、ジフテリアワクチンによる免疫は低下していると考えられます。
流行地に長期滞在する場合には、ジフテリアトキソイドを10年おきに追加接種することが推奨されます。
補足:三種混合ワクチン(DPT)
D---ジフテリア(D:Diphtheria)
P---百日せき(P:pertussis)
T---破傷風(T:Tetanus)
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