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各種感染症の検査について

     
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はじめに 

感染症とは
病原微生物(病原体)が様々な感染経路を通して宿主の組織、臓器に定着・侵入・増殖し、生体に何らかの反応が生じた状態を感染症といいます。
感染症のための検査は数多くありますが、ここでは、医療機関に行かなくても自宅や職場で出来る簡単なスクリーニング検査について記載致します。
スクリーニング検査とは、 感染性の可能性がある人を特定することを目的として実施され、それによって感染対策を講じることができるものです。


    

査種類

抗原定性検査

抗原定量検査

PCR検査

〇調べるもの

ウイルスを特徴づけるたんぱく質(抗原)

ウイルスを特徴づけるたんぱく質(抗原)

ウイルスを特徴づける遺伝子配列

〇精度

検出には、一定以上のウイルス量が必要

抗原定性検査より少ない量のウイルスを検出できる

抗原定性検査より少ない量のウイルスを検出できる

〇検査実施場所

検体採取場所で実施

検体を検査機関に搬送して実施

検体を検査機関に搬送して実施

〇判定時間

約15〜30

30分+検査機関への搬送時間

数時間+検査機関への搬送時間




検査について
1:PCR検査 (PCR:polymerase chain reaction)
 (1)PCR検査とは
     DNAポリメラーゼと呼ばれる酵素の働きを利用して、一連の温度変化のサイクルを経て任意の遺伝子領域や
     ゲノム領域のコピーを数百万〜数十億倍に増幅することで、少量のDNAサンプルからその詳細を研究するに
     十分な量にまで増幅させて検出する検査です。

     まず目的の遺伝子を抽出します。
     遺伝子は通常二重らせん構造していますが、遺伝子に熱を加えると2本鎖のDNAから1本鎖のDNAに分離すること
     ができます。

     この1本鎖になったDNAにDNA合成酵素(DNAポリメラーゼ)を使って片側のDNAを合成していき元の2本鎖の
     DNAを作っていきます。
     つまり、1つだった遺伝子が2つに増えた事になります。
     これを繰り返していけば、ネズミ講のように同じDNAが増えていくということです。
     増えたDNAに標識をつけておき視覚的にわかりやすくして検出します。

        


 (2)PCR検査の種類
   PCR検査は、リアルタイムPCR法や逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法、DNAシークエンシング法等があります。

   @通常のPCR法 (Conventional PCR)
      1組のプライマーで反応を25?35サイクル繰り返す通常のPCR検査

   AリアルタイムPCR (Real-Time PCR:Real-time polymerase chain reaction)
      核酸断片を発光させて専用の光学機器を使って検出することによってリアルタイムに増幅曲線を描く方法。
      定性ではなく定量が必要な時に用いる。

   B逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法 (RT-PCR:Reverse transcription polymerase chain reaction)
      逆転写酵素によりRNAをcDNAにしてからPCRを行う方法
      検査対象がRNAウイルスの時に使用する。

   CNested polymerase chain reaction(Nested PCR)
      PCRで増幅したPCR産物を改めて次の反応のテンプレートにして、別のプライマーペアを用いてもう一度PCRを
      繰り返す方法

   DマルチプレックスPCR (Multiplex PCR:Multiplex polymerase chain reaction)
      複数の標的核酸(DNA)のそれぞれのPCR反応を1本の反応チューブ内で同時に行う方法。

   EAmplified fragment length polymorphism(AFLP)
      標的核酸(DNA)を含むゲノムDNA等を制限酵素で切断し、その切断末端に短い2本鎖DNA(アダプター)を
      結合させ、その相補的なプライマーを用いてPCRを行う方法。

   FLoop-Mediated Isothermal Amplification(LAMP法)
      従来のPCRとはまったく異なる原理に基づく方法


 (3)調べる物
     ウイルスを特徴づける遺伝子配列を調べます。
     DNAまたはRNAが検査対象になります。
     RNAウイルスの場合には、逆転写(RNA→DNA)を行ってからPCR検査を行います。 

        


 (4)検査の特徴
   @長所
      少量のウイルス量で検出が可能です。
  
   A短所
   検体を検査機関に搬送して実施します。
     検査には数時間かかります。


 (5)検査の術式
     鼻咽頭のぬぐい液、または唾液を採取します。

          

     検査試薬を混ぜます
     専用装置でウイルスの遺伝子を増幅この方法を用いて、ウイルスが検出されれば「陽性」となります。
     精度は約70%位です。

         


2:抗原検査
 (1)抗原検査とは
     細菌やウイルスが持つ特有のタンパク質(抗原)を検出するものを抗原検査といいます。
     検査したい微生物の抗体を用いて微生物持つ特有のタンパク質(抗原)を検出する検査方法です。
     15分ほどの短時間で結果が出て、特別な検査機器を使わなくてもできることから、スクリーニング検査にも適して
     いると言われています。


 (2)抗原検査の種類
   @抗原定性検査
      採取した検体を専用の試薬に混ぜて、検査キットに滴下して判断する検査です。
      この検査では陽性か陰性かの判別だけをします。
      検査キットに含まれる抗体が検体に含まれる抗原を認識してキット上に線として現れると陽性と判断します。

      単に抗原検査と呼ぶときはこちらをさしていることがほとんどです。
      市販されているコロナウイルスの抗原検査キットはこの抗原定性検査を実施しています。
      また、医療機関で実施しているインフルエンザの検査もほとんどが抗原定性検査です。

      特別な機械は必要なく、15〜30分程度で検査が可能です。
      検体に含まれる抗原量が少ない(ウイルスが少ない)と見逃してしまう恐れがあるというリスクもあります。

        


   A定量抗原検査
      専用の機械によって抗原が検体にどれくらい含まれているかの検査です。
      基準値を超えれば陽性、超えなければ陰性です。

      陽性基準値が20だとすると、50なら陽性と判断します。
      25だと反応が弱いが多分陽性だろう、
      15だと陰性だが再検査が必要となります。
      5だと明らかに陰性と判断されます。
      この様に数値による具体的な判断ができるため、診断の精度が高くなります。

      こちらも30分程度で検査が可能です。
      上記の理由からPCR検査と同程度の正確性があるとされています。

         (株)富士レビオ社 「ルミパルス G1200」


 (3)調べる物
     ウイルスのタンパク質(抗原)を調べます。
     ウイルスに寄ってじゃ抗原がいくつか存在します。
     例えば、B型肝炎ウイルスには、HBe抗原、HBs抗原、HBc抗原が知られています。

        


 (4)抗原検査の特徴
   @長所
      15-30分位の短時間で検査できます。
      定性検査なら、自宅や職場での検査が可能です。

   A短所
      ウイルス量が多くないと検査出来ません。
      そのため感染初期では検査の信頼性が低くなります。
      新型コロナウイルスの場合は、発症2−3日前位からウイルス量が上がり、抗原検査で判定できる様になります。

 (5)抗原検査の方法
     検出には一定以上のウイルス量が必要で、感染初期では検査が出来ません。
     鼻咽頭から綿棒を入れ擦過によって検体を採取します。
     綿棒は、下鼻道から、鼻聴導腺に平行に挿入します。
     または唾液を採取します。
     検体を試薬と混和し、検査プレートに滴下します。

      


2:抗体検査
 (1)抗体検査とは
     ウイルスに感染した際に、体内で作られる抗体を検出します。
     抗体は感染後1〜2週間で検出されるので、過去に感染していたかを調べる検査です。
     ただし、抗体自体は2ヵ月程度で消えてしまうとも言われています。

     検出されたから今後感染しないという保証にはなりません。
     寿命の短い抗体も存在します。
     また、C型肝炎のように、中和抗体でない抗体では感染防御には利用されません


 (2)抗体とは
     白血球のサブタイプの一つであるリンパ球の一種であるB細胞の産生する糖タンパク分子です。
     免疫グロブリン(Ig)ともいい、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEが有ります。

     獲得免疫系の液性免疫(特定のタンパク質などの分子(抗原)を認識して、排除する働き)を担います。
     抗体は、特定の異物にある抗原(目印)に特異的に結合して、その異物を生体内から除去する分子です。

     B細が形質細胞(プラズマ細胞)に変化して、これが抗体を産生します。

        


 (3)調べる物
      IgM、IgGなどの抗体を調べます。

        


 (4)抗体検査の特徴
   @長所
      抗体検査が陽性だと、以前にその病気にかかったことが証明されます。
      その抗体が中和抗体の場合には、抗体が排除してくれて感染しないとされてます。

   A短所
      体内に抗体ができるまでには時間がかかり、現在そのウイルスに感染していないことの検査に用いることは
      難しいとされています。


 (5)抗体検査の方法
     指を穿刺して血液を採取します。
     検査試薬と混和します。
     検査プレートに滴下します。

     IgM抗体が先に出現します。

     IgM抗体(−)、IgG抗体(−)の場合→未感染もしくは感染のごく早期です。   
     IgM抗体(+)、IgG抗体(−)の場合→ ウイルスも存在する可能性が高い事を示します。
     IgM抗体(−)、IgG抗体(+)の場合→治癒後の可能性が高いといえます。


          



各種の検査について
1:インフルエンザの検査

    詳細は、「インフルエンザの検査」 へ


2:新型コロナウイルス感染症の検査

    詳細は、「新型コロナウイルス感染症の検査」 へ


3:性行為感染症の検査

    詳細は、「性行為感染症の検査」 へ


4:その他の検査

    B型・C型肝炎検査なら 【銀座血液検査ラボ】



参考資料

  『薬剤師が知っておきたいチーム医療実践のための感染症検査』


  『休み時間の免疫学 第3版 (休み時間シリーズ)』


  『こわいほどよくわかる 新型コロナとワクチンのひみつ』



  新型コロナ 7つの謎 最新免疫学からわかった病原体の正体 (ブルーバックス)






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