お口大全 (お口の機能と病気と口腔ケア) All the Oral-functions and Care
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細菌感染症について

   

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細菌感染症 ()
  1:細菌について
 (1)細菌とは
     細菌は細胞を持ち、自己複製能力を持った微生物です。
     細胞内にDNAを包む核(細胞核)を持たない原核生物です。
     一つの細胞しか無いので単細胞生物です。
     大きさは、0.5〜5μm位で、光学顕微鏡で見ることができます。

         農林省HPから引用


 (2)細菌の大きさ
     大きさはおおむね0.5-5 μm程度であり、細胞より少し小さい位の大きさです。
     桿菌の中で長いものは15 μmほどになります。


2:細菌の分類
   細菌については以下の通り数種類の分類法があります。

 (1)染色性による分類
     細菌は特定の薬品(染色剤)で処理したときの色の違いによって分類されます。
     一般的に用いられる染色の方法に、グラム染色と呼ばれるものがあります。
     青色に染まる細菌は、グラム陽性細菌といいます。
     赤色に染まる細菌は、グラム陰性細菌といいます。

     
        青=G(+)菌   赤=G(−)菌


     グラム陽性細菌とグラム陰性細菌は、その細胞壁の違いから異なる色で染色されます。
     それらの菌の種類によって、生じる感染症の種類も異なり、また効果的な抗菌薬の種類も異なります。

      

     

        
  @グラム陽性菌      
     外膜を持たない。(グラム陰性菌は細胞膜と外膜の2つの脂質膜に包まれている)
     厚いペプチドグリカン層が存在します。(グラム陰性菌はペプチドグリカン層が薄い)

  Aグラム陰性菌
     ペプチドグリカン層の外側の外膜は、リポ多糖類(リピドA、グラム陽性菌にはない多糖類、O抗原より構成される)
     により覆われています。
     リポ多糖は内毒素として機能し、病原性を表します
     特定の分子のための微細孔のように働くポリンが外膜に存在する

     莢膜(きょうまく、capsule)
        一部の真正細菌が持つ、細胞壁の外側に位置する被膜状の構造物です。
        細菌が分泌したゲル状の粘質物が、細胞表面にほぼ均一な厚さで層を成したものです。
        白血球による食作用などの宿主の免疫機構によって排除されることを回避する役割を持ちます。
        病原菌病原性に関与しています。

     


 (2)形状による分類
     細菌は基本的な形状によっても分類されます。
     その形状として球形状(球菌)、棒状(桿菌;かんきん)、らせん状(スピロヘータ)の3種類があります。

  @球菌
     個々の細胞の形状が球形を示す原核生物(真正細菌および古細菌)のことです。
        例:黄色ブドウ球菌、ミュータンス菌(むしば菌)、肺炎球菌、など

           「Wikipedia 球菌」 から引用

         (a)レンサ球菌、(b)双球菌、(c)四連球菌、(d)八連球菌、(e)ブドウ球菌


  A桿菌
     個々の細胞の形状が細長い棒状または円筒状を示す細菌ないし古細菌のことです。
        例:乳酸桿菌、大腸菌、炭疽菌、ビフィズス菌、など

           「Wikipedia 桿菌」 から引用


  Bらせん菌
     らせん菌はその名のとおり細長い菌体がらせん形になったもので、回転運動をしながら素早く動きます。
        例:カンピロバクター・ジェジュニ、カンピロバクター・コリ、ヘリコバクター・ピロリ、など

        


 (3)酸素要求性
     細菌はさらに、その生育に酸素が必要かどうかでも分類されます。
     酸素を必要とする細菌は好気性細菌と呼ばれます。
     酸素の存在がその細菌の生存や生育にとって障害となるものは、嫌気性細菌と呼ばれます。
     通性嫌気性細菌と呼ばれる一部の細菌は、酸素があってもなくても生育することができます。


2:細菌の構造
 (1)一般的な構造
  細胞壁と細胞膜をもち、 その内側に核酸とリボゾームが存在してお り、細菌そのものが一つの細胞と考えられ ます。
  細胞構造は外部から、べん毛線毛莢膜細胞壁ペリプラズム細胞膜細胞質などから構成されています。
   (べん毛、線毛、莢膜は持たないものもいる)。

  細胞質には、細胞膜に付着する形でゲノムDNA(核様態という形に凝集)、プラスミド、一部のタンパク質が存在し、
  リボソームやその他のタンパク質は細胞内部に混ざっています。

  また、種によっては内部構造としてチラコイドや気泡、顆粒、DNAを包む核膜様構造(プラクトミケス門の一部のみ)が
  見られることもあります。

          「Wikipedia 細菌の構造」 から引用


 (2)芽胞形成菌
  @芽胞とは
     一部の細菌が形づくる、極めて耐久性の高い細胞構造です。
     胞子膜、皮層、芯部からなり、胞子膜の外側に外皮を持つものもあります。
     芯部には、DNAリボソーム酵素、低分子化合物などが含まれており、半結晶状態になっています。

     芽胞を作る能力を持った細菌が、栄養や温度などの環境が悪い状態に置かれたり、その細菌に対して毒性を示す
     化合物と接触したりすると、細菌細胞内部に芽胞が形成されます。
     このとき、細菌の遺伝子が複製されてその片方は芽胞の中に分配されます。

      


  A芽胞を作る細菌
    1)バシラス(バチルス)属(好気性または通性嫌気性の有芽胞グラム陽性桿菌)
       炭疽菌---炭疽の病原菌
       セレウス菌---食中毒起因菌の一つ
       枯草菌---枯れ草などにつく非病原性細菌。遺伝子研究の材料に用いられる
       納豆菌---枯草菌の変種とされることもある。納豆の製造に用いられる
       卒倒病菌---カイコなどのチョウ目の昆虫の幼虫の消化管内でBT毒素を産生し、卒倒病を起こします。

    2)クロストリジウム属(偏性嫌気性の有芽胞グラム陽性桿菌)
       破傷風菌---破傷風の病原菌
       ボツリヌス菌---食中毒起因菌の一つ。食品中でボツリヌス毒素を産生し、毒素型食中毒を起こします
       ウェルシュ菌---ヒト腸内に常在する菌の一種。食中毒やガス壊疽の原因になることがあります。


3:体内の細菌
  体内には数百種類の細菌が存在していますが、その総数は数兆に及びます。
  これらの細菌のほとんどは以下の場所で生息しています。

    皮膚や歯の表面
    歯と歯ぐきの間
    のど、腸、腟の内側を覆う粘膜

  それぞれの多様な環境に応じて、部位毎に異なる種が存在します。
  ほとんどの細菌は嫌気性細菌で、酸素を必要としません。

  通常、そのような嫌気性細菌は病気を引き起こしません
  腸で食べものの消化を助けるなどの、有用な働きをする菌も数多くいます。

  しかし、粘膜が損傷を受けた場合には、嫌気性細菌が病気の原因となることがあります。
  その場合、通常は細菌が存在せず防御機構が備わっていない組織へと細菌が侵入します。
  細菌は付近の組織(副鼻腔、中耳、肺、脳、腹部、骨盤、皮膚など)に感染したり、血流に入って拡散します。


4:細菌感染症とは
  生体は常在菌も含めて常に細菌と接しています。
  しかし全てのら細菌が生体に悪影響を及ぼすこと訳ではありません。
  共生して生存している細菌もあれば、一時的に生体入っても多くは免疫系に駆除されます。
  細菌の力が強いか、生体の抵抗力が弱っているような場合に細菌感染症が成立し、病気となります。
  
  細菌感染症は、細菌の分類を行うための様々な方法に基づいて分類されます。
  例えば、グラム陰性細菌による感染やグラム陽性細菌による感染などに分類されますが、この区別を行うことは重要です。
  なぜなら、この2種類の感染症を治療するためには異なるタイプの抗菌薬が必要になる可能性があるためです。

 (1)グラム陽性細菌による感染症
     ブドウ球菌感染症  レンサ球菌感染症  腸球菌感染症  肺炎球菌感染症
     炭疽(たんそ) ジフテリア  エリジペロスリックス症
     リステリア症  ノカルジア症  など


 (2)グラム陰性細菌による感染症
     ブルセラ症 カンピロバクター感染症  ネコひっかき病  コレラ  大腸菌感染症  淋菌感染症
     クレブシエラ属、エンテロバクター属、セラチア属細菌による感染症
     レジオネラ感染症  髄膜炎菌感染症  百日ぜき  ペスト  シュードモナス(緑膿菌)感染症
     サルモネラ感染症  細菌性赤痢  腸チフス  野兎病  など


 (3)嫌気性細菌による感染症
     放線菌症  バクテロイデス  ボツリヌス症  クロストリジウム感染症  破傷風  など


5:治療
  感染症の治療は、原則抗菌薬を使った内科的治療が主体となります。
  この場合、その感染症に適した薬を使用することが必要です。
  そのため、原因菌に対する抗菌薬の感受性試験を行ってから内服あるいは点滴を行う事もあります。

       

  しかし、症状がひどい場合には、切開排膿処置、ドレナージ療法などの外科的治療を併用する必要もあります。
  また、冷罨法・温罨法、高圧酸素療法などの理学療法が併用される事もあります。


6:予防
 (1)感染予防対策
     詳細は、「感染対策」へ


 (2)ワクチン接種
     詳細は、「感染症とワクチン」へ



お口の中の細菌感染症
  1:お口の中の細菌
  口の中には500種から800種の常在細菌がいると言われています。
  これら全てが身体にとって悪い物ではなく、何らかの共生をしているとも考えられています。

  また、お口は外界との玄関の様な部位で、常に外部から細菌が侵入する危険性もあります。
  細菌の力が強まった時や、身体の抵抗力が弱まったときに感染が成立して病気になります。


2:お口の中の代表的な感染症
  常に無数の細菌群と接している口という部位ですが、上に示した条件が重なると病気となります。
  お口の中の感染症で最も代表的なものが、むし歯歯周病です。

  そのほかにも数多くのお口の中の感染症があります。

     歯性感染症智歯周囲炎歯性上顎洞炎顎骨骨髄炎

     単純疱疹帯状疱疹手足口病ヘルパンギーナ

     カンジダ症顎放線菌症口腔梅毒口腔結核、など


  また、お口を経由して細菌が侵入し、身体の多くの部位にも感染症が広がる場合もあります。

     かぜ症候群インフルエンザ感染性腸炎 (ノロウイルス ロタウイルス)麻疹風疹  

     流行性耳下腺炎ヘルペスウイルス (HSV1,2 VZV HZV) 、伝染性紅斑  など 

     アデノウイルス感染


  これらの感染症は、お口の手入れを行う事で損多くを予防することが出来ます。

     詳細は、「口腔ケア」「歯磨きの基礎知識」「フッ素」 へ



参考資料 
 
 『病気がみえる Vol.6  免疫・膠原病・感染症 第6版』  2020 メディックメディア


 『感染症 ウイルス・細菌との闘い』  別冊日経サイエンス 238


 『戸田新細菌学 第34版』 南山堂 2013


『標準微生物学 第14版』 医学書院 2021

『ウイルス・細菌の図鑑』 北里英郎 技術評論社 2015


『デンタルプラーク 細菌の世界』 奥田 克爾 1996 医歯薬出版


『現代小児歯科学 基礎と臨床』 黒須 一夫 1997  医歯薬出版


『歯界展望 MOOK PMTC』 内山 茂 1996 医歯薬出版
『歯界展望 別冊 歯周病のメインテナンス治療』 2000 医歯薬出版





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